第21話 恐怖は削れない
噂は、静かに広がった。
「遠均が均衡を壊している」
「都市が消えたのは遠均のせいだ」
「星が減れば世界が終わる」
事実と、誇張と、嘘が混ざる。
削れないもの。
恐怖。
市場の人々の目が変わる。
遠均は安全地帯だった。
だが今は。
“世界を揺らす場所”。
ユリアンが言う。
「星は減っていません」
「でも噂は増えてる」
エリシアが静かに言う。
兵崩れの一人が叫ぶ。
「また都市が消えたらどうする!」
誰も答えられない。
リーネが遠くから見ている。
俺は空を見る。
星は動いている。
減っていない。
でも。
収束し始めている。
恐怖は選択肢を減らす。
未来を二択にする。
削らなくても、固定は起こる。
《剪定者》
声。
《恐怖は自己剪定》
「便利な言葉だな」
《恐れた者は、自ら未来を狭める》
それが幹への圧力。
カリオスは、人を動かした。
戦争より強い。
エリシアが言う。
「声明を出します」
「弱い」
「ならどうします」
俺は市場の中央に立つ。
人々が距離を取る。
敵を見る目。
当然だ。
俺は言う。
「都市は俺のせいじゃない」
ざわめき。
「でも止められたかもしれない」
静まる。
エリシアが息を呑む。
ハルトが固まる。
俺は続ける。
「削れば止められた」
恐怖が膨らむ。
「でも削らなかった」
ざわめきが怒号に変わる。
「なぜだ!」
「子どもが死んだんだぞ!」
リーネが立っている。
俺は言う。
「削ると、もっとでかいのが来る」
「証拠は!」
ユリアンが前に出る。
「星の総量には限界があります」
数字を示す。
人々は理解しない。
数字は恐怖に勝てない。
俺は息を吐く。
正論では勝てない。
カリオスはここを狙った。
遠く。
丘の上。
あいつがいる。
動かない。
ただ見ている。
俺は言う。
「怖いなら離れろ」
ざわめき。
「遠均は強制しない」
エリシアが目を見開く。
「レイ」
俺は続ける。
「残るのは、自分で選べ」
沈黙。
恐怖は削れない。
なら。
選ばせる。
強制しない。
未来を押し付けない。
数人が荷をまとめる。
去る。
止めない。
星が、わずかに動く。
収束が止まる。
《……》
世界意志が沈黙する。
恐怖は選択を狭める。
だが。
強制しないことで。
選択肢は残る。
リーネが前に出る。
「私は残る」
静かだが、はっきり。
数人が立ち止まる。
兵崩れの男が言う。
「俺もだ」
商人が言う。
「……様子を見る」
半分が残る。
半分が去る。
遠均は小さくなる。
だが。
星は減らない。
収束は止まる。
俺は空を見る。
《剪定者》
声が低く言う。
《強制しないか》
「削らない」
《恐怖は消えぬ》
「いい」
消さない。
削らない。
恐怖ごと抱える。
遠くの丘。
カリオスがわずかに頷く。
負けではない。
勝ちでもない。
確認。
遠回りは、恐怖にも耐える。
だが。
遠均は縮小した。
次は。
もっと深い。
カリオスはきっと。
主人公個人を狙う。
恐怖の次は。
“正義”だ。
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