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【最強能力】未来を削れる俺は、世界を救わないことにした ―星が減るたび、未来が消える―  作者: 天城ユウ


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第18話 意図された補正

 それは、昼間に起きた。


 晴天。


 市場は賑わい、遠均は安定していた。


 そのとき。


 帝国と連合の境界線で、同時多発的に小規模衝突が発生した。


 三か所。


 ほぼ同時。


 偶然ではない。


 ハルトが駆け込む。


 「レイ殿!」


 「知ってる」


 空が震えている。


 これは。


 歪みを“作っている”。


 意図的に。


 《剪定者》


 声。


 《均衡が動く》


 「わざとだろ」


 遠く。


 丘の上。


 カリオスが立っている。


 遠均を見下ろしながら。


 動いていない。


 ただ、観察している。


 あいつだ。


 戦争そのものを起こしていない。


 だが、均衡の“重み”を動かした。


 利害を刺激し、兵を動かし、圧力を集中させた。


 補正を誘発する。


 空が裂ける。


 黒ではない。


 透明な圧力。


 都市消滅と同じ兆候。


 だが今回は。


 遠均の真上。


 市場の上空。


 子どもが走っている。


 リーネもいる。


 最短の誘惑が爆発する。


 削れば止まる。


 一瞬で。


 星が減る。


 でも止まる。


 《剪定者》


 声が低くなる。


 《削れ》


 「うるさい」


 エリシアが叫ぶ。


 「レイ!」


 ハルトが剣を抜く。


 意味はない。


 空の亀裂が広がる。


 市場の人々がざわめく。


 逃げ場はない。


 削るか?


 削れば一瞬。


 でも削らない。


 俺は目を閉じる。


 補正は“歪みの集中”だ。


 なら。


 集中を崩せばいい。


 削らずに。


 俺は手を上げる。


 「歪み、分散」


 空間が震える。


 削るんじゃない。


 切らない。


 押し広げる。


 亀裂が拡散する。


 一点に落ちようとしていた圧力が。


 広がる。


 空全体に薄く伸びる。


 《……》


 世界意志が沈黙する。


 市場の上空で、圧力が霧のように広がる。


 落ちない。


 消えない。


 分散する。


 《削っていない》


 「削らない」


 汗が流れる。


 集中を崩すだけ。


 可能性を消していない。


 ただ再配置。


 遠均の周囲。


 三か所の衝突地点へ。


 薄く、均等に。


 補正が“薄まる”。


 市場は無傷。


 遠くの衝突地点では。


 武器が砕ける。


 兵が吹き飛ばされる。


 だが都市消滅ほどではない。


 衝突が強制停止する。


 死者は出る。


 だが消滅はない。


 空の亀裂が閉じる。


 星は減っていない。


 俺は膝をつく。


 削っていない。


 《……再配置》


 世界意志の声が低い。


 《剪定ではない》


 「そうだ」


 息が荒い。


 「分けただけ」


 遠くの丘。


 カリオスが、わずかに目を細める。


 初めて。


 驚いた顔をする。


 エリシアが俺を支える。


 「いまのは……」


 「削ってない」


 ハルトが空を見る。


 「星は」


 「減ってない」


 市場の人々がざわめく。


 リーネが走ってくる。


 「止まった」


 俺は頷く。


 「止めた」


 削らずに。


 遠くの丘。


 カリオスがゆっくりと拍手する。


 音は届かない。


 でも見える。


 思想の戦争。


 第一ラウンド。


 遠回りが、一つ進化した。


 《剪定者》


 声が静かに言う。


 《お前は循環を理解し始めた》


 「削らなくても、いじれる」


 《均衡を操作する気か》


 「違う」


 俺は立ち上がる。


 「壊れないように、散らすだけ」


 空は静かだ。


 星は減っていない。


 カリオスは遠くで、静かに一礼する。


 宣戦布告ではない。


 認識。


 敵ではない。


 だが対等。


 リーネが言う。


 「止めたね」


 俺は言う。


 「削らずにな」


 小さな一歩。


 だが決定的。


 遠回りは、ただの我慢じゃない。


 技術になる。


 思想になる。


 武器になる。


 削らない戦い方が、初めて成立した。


 だが。


 俺は知っている。


 これは序章。


 カリオスは、もっと大きく動かす。


 次は。


 もっと深い。


 幹に近い。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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