住処
数日後
スミレは立つ練習をしていた。
「っ、くっ!」
足に、痺れるような痛みが走る。
ドタンッ!という音を立て、スミレは倒れた。
二本足で立っていても、グラグラとして10秒も立っていられなかった。
「大丈夫?スミレ」
ルイが手を差し伸べてくれる。
スミレはルイの手を借りて立つ。
それを何回も続けていた。
「スミレ、今日はもう休んだ方がいいんじゃない?」
大精霊のイレイナは少し離れた木陰にいたはずなのに、気がつけば隣にいた。
「ううん。まだ、大丈夫」
スミレは、ルイに支えられながらももう一度立ち、バランスをとる。
「スミレ、いったん休憩にしよう」
ルイが声をかけるが、スミレは「もう少し」といい続ける。
スミレは、焦っていた。
ーもう、誰も失わないためには強くならなきゃ。
今のままじゃ、まだ......ー
何度も何度も立っては転び、立っては転びを繰り返していた。
そして、数時間後。
ようやくコツをつかみ始めて、立てるようになってきた。
「ルイ!見て、立てるようになってきてるよ!!」
スミレは嬉しそうにルイに話しかける。
が、うれしさのあまり動いてしまい......
「うわっ!」
「スミレ!」
スミレは体を強張らせ、衝撃に備えたがいつまで経っても痛みはやってこなかった。
「大丈夫か?」
耳元から、ルイの声が聞こえた。
ルイは、庇うように下敷きになっていた。
「ご、ごめんなさい!
大丈夫?」
スミレは慌てて体を起こす。
「あ、あぁ」
二人は目が合う。
スミレの目は、まだぼんやりだが、目の前の輪郭くらいは見えるようになった。
ルイは白いふわふわとした髪に、緑の優しい瞳をしていた。
二人には、沈黙が流れる。
そこには気まずさはなく、ただ見つめ合っていた。
二つの足音に気づいたのは、冷気が頬を撫でた後だった。
シュンは、氷刃を地面に突き刺した。
「っ!?」
ルイの喉が鳴った。額には冷汗が滲む。
シュンは氷のナイフを手に持っている。
「......離れろ。姉上に触るな」
「違うよ!?ルイはただ、転びそうになった私を助けてくれただけで......」
「俺はまだ、信用していません」
シュンは目をルイから離さずに言う。その時、ふふっという声が聞こえた。
声のした方を振り向くと、リリナだった。
「なんで笑ってるの?」
イレイナが不思議そうにリリナに訊ねる。
「だって、こんなにも生き生きとした姉さまと兄さまを見るのは、久しぶりなんですもん」
そう、クリスタが死んでからは三人はどこか、距離を置いていた。
リリナとシュンは、訓練へ。
スミレは、お墓へと行っていた。
そのせいもあり、一緒にいることも減っていた。
だが、新しい出会いのおかげで、また三人で話すようになった。
「出会ってくれて、ありがとう」
スミレの声は小さかったが、ルイにはしっかり聞こえていた。
「あぁ」
もうすぐ日が沈む時間帯になってきた。
シュンたちは、家に帰ろうとしたが途中でスミレが止まり、ルイを見る。
「ねぇ、ルイ。
やっぱり、うちに来ない?」
その言葉にルイは驚きつつも答える。
「いや、俺は魔人族だから村に行けば殺される」
スミレはシュンを見る。
「シュン。お願いしてもいい?」
「......姉上が言うのなら、いいですよ」
シュンはルイの前に立ち手をかざす。
「スキル。透明化」
そう言うと、ルイの黒かった魔力はすっと途切れる。
「これは?」
ルイは驚いた顔をしてシュンを見る。
「透明化......
まさか、魔力まで隠せるなんて......
でも、使えるのは一人までのようね」
そうイレイナがつぶやくと、シュンは静かに頷いた。
魔力が隠れたルイは、家についていくことにした。
母は、ちらっとルイを見る。
「......村で問題を起こそうものなら、すぐに追い出す。」
そうしてルイには、寝泊まりする場所ができた。




