白の翼、黒の翼
「大精霊は世界樹から生まれた存在よ。
世界を作った側、と言えばいいかしら?」
イレイナは最初の時とは違い、とても優しい声をしていた。
「そんなすごい方が、なぜ......」
「スミレはね、私に家族になると言ってくれたの。
なにも渡すものはないけど、家族になることはできるって」
リリナとシュンは落ち着き、話を聞いた。
「そうですか......
ですが、その男は本当に信用できるのですか?」
シュンはしつこく何度も尋ねる。
リリナもまだ、完全に信じているわけではないようだ。
「えぇ。大丈夫よ」
「なぜ言い切れるのですか!!魔人族は、クリスタを殺したのですよ!?」
シュンは声を荒げる。
「......ルイじゃない。恨むべきは、命令した者よ」
「っ......」
シュンは何か言い返そうとするが言葉が出てこなかった。
「それを言うなら。
私達こそ、疎まれる存在でしょう?」
その言葉にシュンとリリナは言葉を詰まらせる。
「どういうことだ?
なんで、スミレたちが疎まれる存在なんだ?」
少しの沈黙が流れた後。
「......隠し事はいつしかばれるものよね」
スミレは何かを決心すると、ルイがいる方に頭を下げる。
「ごめんなさい。私も、ずっとあなたに隠し事をしていたの」
「隠し事?」
「姉さま!まさか、話すおつもりですか!?」
リリナの声に焦りが混じる。
「えぇ、いつまでも隠せるものではないからね」
リリナが止める前にスミレは翼を広げる。
「姉さま!!」
真っ白なその翼は、根元から黒へと染まっていく。
「これは!!」
ルイの息を呑む音がする。
「君たちは......」
黒く染まった翼は、驚くほど冷えていた。
スミレの指先は震えている。
スミレは、俯き翼を白に戻していく。
「えぇ。私たちは、光でも闇でもない混血」
シュンとリリナからはこぶしを握り締める音がした。
「そうか、君が......
あいつが言っていたのは、君だったのか」
独り言のように言ったルイの言葉は、スミレの耳に届いてしまった。
「あいつ?」
ルイは少し慌てた。
スミレの命石が軽く疼く。
「い、いやなんでもない。
それよりも、俺だって気にしないさ。
俺は、混血とも一緒にいたんだ。
今はまだ、話せないがいつかは話す」
他にも混血がいる。その言葉に三人は言葉を失った。
「だから俺は、特に気にしない。
それに、スミレは命の恩人だしな」
少しの間が置かれ、シュンが話し始める。
「......俺は、まだその男を信用できない。
だから監視する。何かしようものならその時は、容赦しない」
「いいさ。大事な家族なんだ、守って当然さ」
張りつめていた空気が、ようやく落ちた。
気がつけば、日が暮れ始めていた。
「まずい!早く帰らないと、母上が......」
その言葉に皆焦り始め、急いで帰ることになった。
「ごめんなさい、ルイ。
また明日来るわ」
「あぁ、また明日」
シュンがスミレの車いすを押し、その場を後にする。
家に帰ればメイサが待っており、叱られてしまった。
だが、叱責の声は遠い。
混血がほかにもいる。それだけが頭に残っていた。
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