真実と衝突
5年前のクリスタ死亡の事件は、シュンやリリナにとっても大きなきっかけとなった。
二人は、弱い自分を見つめ直し、日々魔法能力を上げる訓練をしていた。
シュンは、詠唱をできるだけ短くすることに成功した。
ルイは、スミレが車いすに座るのを手伝ってくれた。
「いられない?どういうこと?」
スミレは、焦りが混じった声で尋ねる。
「俺は、ずっと君をだましていた。
君の目が見えるようになるのなら、もう黙ってはいられない」
ルイの声は震えており、地面にぽたぽたとしずくが落ちる音がする。
「俺は、魔神族だ」
ふり絞るように言ったその言葉にスミレは、ルイの手を握る。
「知ってるよ」
沈黙が流れる。
「え?」
「君の魔力は、黒かった。だからすぐに、君が魔神族だってことはわかったの。」
ルイはその言葉を聞き、戸惑う。
「なんでだ?魔神族は、女神族の君にとって敵だろう?」
その声には、戸惑いしかなかった。
「前にも話したと思うけど、私は親友を魔神族に殺されたわ。
その時の匂いと、うめき声が君と重なったの。
たとえ、敵だとしても治してあげたいと思った。」
そう言ったスミレの手はかすかに震えている。
その言葉は、ルイにとっての救いとなった。
そして、スミレが口を開こうとしたその時
左側から、聞きなれた二つの足音が聞こえた。
「姉上から離れろ!
氷刃」
たったそれだけの詠唱で、冷気が裂けルイに迫る。
魔法の気配を感じたスミレは車いすから身を乗り出し、両腕でルイの胸を押しのけた。
「姉さま、なぜ庇うのですか!?その者は、魔神族なのですよ!?」
妹と弟がスミレの前に立ち、守ろうとする。
「スミレには命の恩人なんだ。
俺は......手を出さない。出すはずがない!」
「そんな言葉が信じられると思ったのか!?」
スミレが妹と弟の裾をつかむ。
「シュン!リリナ!
大丈夫よ。ルイとは半月近く一緒にいるけど、なにもされてないわ。」
「半月!?どうして今まで......」
「あなたたちが訓練をしている時間と母さんが仕事に行っている時間がかぶっている日に、こっそり会っていたのよ」
スミレは、二人を抱きしめる。
「守ろうとしてくれてありがとう。
でも、もう大丈夫よ。私は、もうすぐ目も見えるようになるし、歩けるようになるわ」
その言葉を聞いた二人は固まる。
「え......どういうことですか?」
リリナが先に口を開き尋ねる。
「私ね、大精霊っていうすごい人と契約したのよ」
そう言ってスミレはイレイナを紹介する。
「この人はイレイナ。歌と氷の大精霊よ」
二人の視線が、ようやくスミレの背へ向いた。
「だ、大精霊?精霊とは違うのですか?」
二人は状況が良く飲み込めずにいた。
「初めまして。たった今、スミレと契約したイレイナよ。」




