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新 光と闇の継承者~初代最高神が生まれる時~  作者: 加藤 すみれ


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大精霊との契約

スミレの魔力は、体をうまく巡れていない。

それが原因で、目が見えず、足も使えないのだ。

膨大な魔力に充てられ、スミレとルイは今にも倒れそうになっていた。

「あぁ、ごめんなさい。人と話すのは久しぶりだったからつい、魔力を制御するのを忘れていたわ」

そう言うと女性の漏れ出していた魔力は抑え込まれ、ようやく息が通った。

「何者だ?」

ルイがスミレの前に立ち、警戒する。

だが女性は、ルイに一切の興味を持たずスミレに近づいてくる。

「......なぜ、あの精霊を助けたの?」

その言葉に温度はなく、空虚な冷たさが漂う。


「助けるのに、理由はいりますか?

理由が要るなら、私はいつまでも失い続ける」

スミレは、震えながらも声を強く保った。

「今まで精霊に近づくものは、何かしらの理由を持っていた。

よこしまな願いを叶えるというね」

その声からは、拭いきれない憎悪が滲む。

「あなたには、そんな考えがないというの?」

その言葉にスミレは一切の迷いなく答えた。

「言えます。

私は、困っている人を見捨てたくない。

もう二度と失わないために」

女性の呼吸がわずかに揺れたのをスミレは感じた。


「助けるのに理由がないのは、そんなにおかしいですか?」

女性はその問いに答えなかった。

「どうしてあなたは......」

言葉の途中で女性は言うのをやめた。

「あなたは、あなたなら......もしかしたら......

ねぇ、あなたは精霊と契約するなら何をくれる?」

女性は心の中で何かを決めたように訊ねた。

「何を渡すものはありません。

だって私には、使えない足と目しかないのですから。」

「そう......」

女性はどこか悲しそうに言うと、去ろうと歩き出す。

「でも」

スミレの声に足を止める。

「でも、家族になることはできます」

「え......」

スミレは、言葉を続ける。

「精霊が生まれるのは、魔力が多い地。

生まれたとしても、一つの場所に一人です。

一人なんて、悲しいでしょう?だから、家族になります。

ずっとそばにいてあげることしか、私にはできません」

その声は、優しくも強い言葉だった。

長い沈黙のあと、女性がつぶやく。

「家族......」

初めていわれたのだろう。女性は混乱していた。

「そう......あなたは、本当に他の人とは違うのね......」

女性の声は今までと違い、氷の奥に熱が灯った。

「ねぇ、私と契約しない?」

迷いを殺すようなその言葉にスミレとルイは戸惑う。

「契約?

契約をできるのは、精霊や聖獣だけだろう?」

ルイが女性に訊ねると、空気が凍り、静けさがやってくる。

「そういえばまだ、名乗ってなかったわね。

私は、イレイナ。世界樹から最初に生まれた大精霊よ」

二人は、戸惑う。

大精霊という存在は一度も聞いたことがないからだ。

「大精霊?最初に生まれた?

一体どういうことだ?」

イレイナは静かに、語った。

「この世のどこかに、世界樹があるのは知っているでしょ?

私は、その世界樹から生み出された存在なの」

この話を聞いた二人は言葉が出なかった。

あまりに突然なことに二人は驚きを隠せない。

「なぜ、そんなすごい方が......」

イレイナは、スミレの手を握る。

イレイナの手は、とても冷えていた。

「私たちと家族になるなんて言った人、初めてだから。

確かに私は孤独だった。他の大精霊とは仲良くできなかったし...

お願い。どうか私と契約して」

その言葉にスミレは迷う。

「私は、こんな体です。こんな体では、力を持っていたとしても......」

「大丈夫。私と契約すれば、あなたの暴れている魔力を私が抑え込んであげられる。

目と足も使えるようになるわ」

スミレは、体が震えた。

「本当に?私、目が見えるようになるの?歩けるようになるの?」

期待と不安が混ざる。

「本当に、見えるようになるのか?」

ルイは信じられないというように問いかける。

「えぇ、約束するわ。

この子の魔力は、うまく巡れていないの。私が制御して、彼女の流れを作るわ」

スミレは、開けていても何も見えない目を開いた。

そこからは、大粒の涙が零れ落ちる。

「おねがい、します」

握られた手を、強く握り返した。

「ありがとう。私の後に続いて」

二人は両手を取り合い、契約の言葉を口にする。

「我は、氷と歌を司る大精霊イレイナ。汝との契約を望む。

我は汝の荒れ狂う魔力を鎮めよう」

「我は、スミレ。我も汝との契約を願う。我は汝と家族になり、命尽きるその日まで共にいることを誓おう。」

「「ここに我ら契約を交わす」」


契約後から、少しずつ魔力が全身に巡っていくのが分かる。

そしてスミレの瞳が、ゆっくりと景色を映す。

最初は、ただの光だった。

時間が経つにつれ、白から夕陽の赤に変わった。

まだ、しっかりとは見えない。

「あ、あぁ。見える、これが......

これが色なんだね。教えてもらったはずなんだけどな......」

初めて目で見る色に、頬を伝う涙が増える。

スミレは、車いすから足を下ろした。

「うわッ」

初めて自分の足で立とうとしたが、失敗した。

立ったことのない足の使い方が分からないのだ。

しばらくは、立つ練習をしなければならないだろう。

倒れそうになるスミレを、ルイが支える。

「大丈夫か?」

その言葉は優しいが、震えが混じっていた。

「えぇ......」

ルイは口を開き言った。

「もう、君とはいられないな」

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