命形が咲くとき
命形。それは、精霊にとっての命。
そして、50年経ち魔力が十分に集まれば精霊へと成長させる。
魔力は自然から少しずつ、集まり命形の成長に使われる。
その日、家に帰ると母が立っていた。
「何をしているの!!家を出るなとあれほど言ったでしょう!?」
元から厳しかった母は、クリスタが死亡した時からますます厳しくなり、外に出ることさえも禁止されるようになった。
それでもスミレは、クリスタの墓参りに行っていた。
母には怒られてしまうが、行かないというのは嫌だったのだ。
スミレはただただ、母の怒りが収まるのを待った。
「母様、今日は姉さまと兄さまの誕生日ですよ?
今日くらいは、あまり怒らないでください」
少しびくびくしたような妹の声に母は黙り、ご飯の準備を始めた。
「姉上、大丈夫ですか?」
心配そうに尋ねる弟。
「えぇ、大丈夫よ」
「この時間まで何をしていたのですか?いつもなら母上が帰ってくる前に戻ってきていたのに」
スミレは、今日出会ったルイのことは話さないと決めていた。
直感的に、話したらダメ。そう思ったからだ。
「少しね、考えていたの。
そしたら、こんな時間になってしまったの」
そういうとスミレは、荷物を置きに部屋に行った。
数週間後
スミレたちは数日おきに会っていた。
家族に見つからないように、母が仕事に行っている時間と妹と弟が訓練に行っている間にこっそりと会っていた。
今では、一緒に散歩するほど仲が良くなっている。
「昨日ね、妹がまた転んでしまったのよ。
何もないのに、どうしてあの子は転ぶのかしら?」
「ははっ、君の家族の話はいつ聞いても面白いな」
笑い声が二人を包み込む。
その時、背後から微かに泣く声が聞こえた。
「誰かが泣いてる?」
二人は、声のする方へと向かう。そこは、甘く優しい匂いが漂っており、花畑ということが分かった。
とても小さい魔力の、微精霊が一つの花の上で泣いている。
「どうしたの?微精霊さん」
スミレに声をかけられてようやく、二人がいることに気づいた。
少し驚きながらも、震える声で話し出す。
「あのね......私の命形が育たないの」
微精霊の下には、成長する様子のない蕾があった。
「もうね、100年経ってるのに成長しないの」
スミレは優しく微笑み、魔力の輪郭に指を重ね、
微精霊の魔力をよく見てみる。
微精霊には、ほとんどの魔力がなかった。
それだけではなく、森全体の魔力が、どこかへ吸われたみたいにほとんどなかった。
「大丈夫。あなたの魔力が足りないだけ。私がすぐに助けてあげるわ」
深く息を吸いスミレは歌い始める。
『霧の森 眠る水面
星のしずくが 波にほどける』
歌い始めると魔力が命形へと集まっていく。
スミレは息を深く吸い、声の勢いを上げる。
『星よ 輪をひらけ
祈りは 風に乗り
心は ほどけ
光へ 還る
名もなき歌は 宙へと昇る』
歌が終わると、蕾だった花はシャンッという音と共に開いた。
微精霊はもやもやした形から、小さな少女の姿へと変わる。
「水色のきれいな花のドレスだ......」
ルイがそう呟いてくれた。
「ありがとう。私の命形を育ててくれて。
あなたに世界樹の加護がありますように」
花の精霊は、森の中に静かに消えていった。
その代わりに、一人の女性がスミレの前に立っていた。
その女性の魔力は膨大で、ルイとスミレに冷や汗が流れた。




