悲劇
これは、10年前のお話。
ある日、突然魔神族が村を襲撃してきた。
「クリスタ!!急いで!!」
そう叫びながら、クリスタの手を引くのは母と父。
戦う力のない、ペルージュ家は魔神族から逃げることしかできなかった。
必死に逃げる一家。
しかし、まだ七歳という幼い子供を連れて逃げるのは簡単なことではなかった。
「あっ!」
クリスタは、大人の歩く速さについていけず、転んでしまった。
「クリスタ!!」
両親は慌ててクリスタに駆け寄り、起き上がらせる。
「俺が背負う。お前は先に行っていろ!!」
クリスタの父が母に叫ぶ。
「置いてなんていけません!!いつでも一緒です!」
その瞬間、三人のいる場所に影が落ちる。
「ははっ、いいおもちゃ発見!」
上からの声に一家は背筋が凍りつく。
「どうやって殺そうかな?
焼く?潰す?それとも......」
言葉を止めると、クリスタに目を向けにたぁっと笑う。
「親の前で、子供を殺すぅ?」
その言葉を聞いた、母と父は立ち上がり、クリスタを守るように立ちふさがる。
「そんなこと、させてたまるか!!」
父が魔神族に向かい走っていく。
それと同時に、母はクリスタを抱え、振り向かずに逃げる。
「がァッ」
一瞬、叫びが聞こえた。
抱えられているクリスタの目に、それは映ってしまった。
黒い炎が、父の胸に大きな穴を作ったところを。
「見ちゃだめよ!!クリスタ!」
母の声は震えていた。
クリスタの頬に温かい水滴が落ちる。
母の涙だった。
必死に逃げる中、ふと前方に人影が見えた。
村で最強と言われる女性が魔神族と戦っている。
「やった......これで!」
安堵の声が母から漏れた。
その時、おぞましい声が届く。
「これでぇ?なぁに?」
走る母の前に、にたにた顔の魔神族が現れる。
「ひっ!」
母は腰を抜かしてしまった。
それでも、どうにか我が子だけは守ろうと抱きしめる力が強くなる。
「そうそう!それだよ、それ。
俺はなぁ、希望を持った後の絶望の顔が一番好きなんだよぉ!!」
そう叫んだと思ったら、右手を伸ばした。
「ダークファイアァ」
クリスタを抱きしめていた腕に力がなくなる。
クリスタが恐る恐る母の顔を見れば、そこには何もなかった。
焦げたにおいと、血の匂いが同時に鼻に刺さる。
「か、さん......」
声が震えた。
「い、いやぁぁぁぁ!!」
その叫びで、頭を失った体は倒れ、クリスタは地面に叩きつけられる。
「ぎゃはははは!!」
魔神族は腹を抱えて笑う。
「最高だぁ!いい悲鳴を上げてくれるじゃねえか」
クリスタは、必死に地面を張って逃げる。
「十分楽しませてもらったぜぇ。ありがとよ」
そう言って、魔神族が再び魔法を放とうとしたその時。
「アァァァーーー!!」
とてつもなく大きく、甲高い声が聞こえた。
空気が震える。
それと同時に、クリスタの意識は闇に沈んだ。




