隣に立てた日、彼女は血を隠す
命石が割れば、灰となる。
転生する希望すら失うことになる。
命石は、傷つけば何をやったとしても治ることはない。
5ヶ月後
ルイとスミレが出会った森の奥。
4人の秘密の訓練場にて、薄い風の刃が一本の堅い木をスパッと切り倒す。
森に轟音が響き渡る。
「......」
ルイはしばらく自分の手のひらを見ていた。
震えもなく、息も乱れていない。
切り倒したその木は、とても硬く、太かった。
「......やった」
ようやく口にした言葉は短いが、喜びにあふれている。
「よかったね。ルイ」
ルイが振り返れば、後ろで見ていたスミレがそう声をかける。
「あぁ!」
ルイの表情は、どこか安心したようで、誇らしげだ。
この5ヶ月で、スミレの目は完全に見えるようになり、歩くこともできるようになっていた。
「君はもう、弱い存在じゃない」
その言葉に、ルイの目に涙が浮かぶ。
「これで俺も、君の隣に立てるかな?」
「とっくに立ってるよ」
そう言ってスミレは小さく笑う。
「他にいい練習場所がないか見てくるね!」
スミレが森さらに奥へ行こうとすると、シュンが声をかける。
「僕も行きます」
だがスミレは、それを断る。
「大丈夫よ、すぐ戻ってくるから」
そう言って、スミレは一人で奥へと消えていく。
「…...」
ルイとシュンの間に気まずい空気が流れる。
そこへ、ようやく朝の訓練が終わったリリナがやってくる。
「ようやく訓練終わりました!ってあれ?
姉さまは?」
「姉上は、新しい木を探しに行った」
シュンはリリナに言った後、ルイの顔を見る。
「ルイ。この5ヶ月、一緒にいて分かった。
お前は、ちゃんと姉上を思っている。」
少しの間を開けた。
「お前を認めてやる。
これからは、一緒に姉上を支えよう。
......ただし、姉上を泣かせら許さない」
シュンはルイに手を差し出す。
ルイは、少し驚いた顔をした後にその手を握り返した。
「あぁ」
二人が握手を交わしたその頃、森の奥では、スミレが一本の木に手をつき、血を吐く。
「げほっ」
その背中をイレイナが擦る。
「スミレ、そろそろ言った方が......」
「ダメ!」
スミレは、息を切らしながらも強い眼差しでイレイナの目を見る。
「あの子たちには、心配をかけたくないの」
「......わかったわ」
その時、ドオンッと村から地響きのような音がした。
「なに!?」
振り返ると、村からは黒煙が上がっている。
スミレは口元を拭い、急いで村にもどる。
「これは......」
村の西側は、何かが削り取ったようなクレーターができており、黒ずんだ血がクレーターの周りに散らばっていた。
そこは血生臭く、熱気が漂っていた。
「一体何が?」
リリナがつぶやくと同時に、近くの家の瓦礫から呻き声が聞こえた。
「助けないと!」
スミレたちは、急いで村の人々を助けた。
西側には、家の影はなかった。ただ、巨大な穴だけが口を開いていた。
多くの者が怪我を負っていた。
命石に傷がついており、灰となって消えた者もいた。
「くそっ!
一体何があったと言うんだ!!」
シュンが叫ぶ。
「それよりも、みんなの怪我を治さないと......」
スミレは胸に手を当て、歌い始める。
『手を伸ばして
その手は 私がつかむから』
スミレが歌い始めると、その場は優しい魔力に包まれる。
『光が 消えたその瞳に
ぬくもりを 渡すように
そっと そっと
寄り添うよ』
癒しの魔力が傷ついた者たちを優しく包む。
ゆっくりとその傷は癒えていく。
『傷ついた その魂を
包み込むように
抱きしめる』
歌が終わると、命石以外の傷は治っていた。
誰もがその歌声に息を呑み、何も言えずにいた。
スミレは少し顔を歪めるが、それは一瞬のことで誰も気が付かなかった。
すると、小さな女の子がスミレの裾を掴み言った。
「ありがとう。お姉ちゃん」
その言葉にスミレは、微笑む。
その様子を見ていた者が声を発した。
「ほぅ。
この村には、強き者はいないと思っていたのだがな......」




