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ギフテッド ハイスクール ~優等生の私のギフトはバニーガール、、、落ちこぼれから始まる少女の成長譚~  作者: アキラ


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7/13

修行

放課後の道場。

板張りの床に、キュッ、キュッ、と奇妙な音が響く。

それは、私の履いている網タイツと、床板が擦れる音だ。

「……先生、やっぱりこれ、変じゃないですか」

私は涙目で訴えた。

今の私の格好は、客観的に見て狂気の沙汰だ。

頭にはウサギの耳。足には網タイツとハイヒール(これはバランスが悪いので裸足になった)。

そして胴体には――学校指定のジャージの上着を羽織っている。

前はジッパーで首元までガッチリ閉めている。

下はレオタードのハイレグが丸出しだが、上半身だけでも隠せれば、羞恥心は3割ほど軽減される。……はずだった。

「変だな」

タイラ先生は竹刀をブラブラさせながら、あっさりと認めた。

「変態と不審者のハイブリッドだ」

「先生がやれって言ったんじゃないですか!」

「俺は『ギフト状態で来い』とは言ったが、『ミノムシになれ』とは言っとらん」

先生は呆れたように私を見る。

「東雲。お前のそのジャージ、邪魔だぞ」

「嫌です! 絶対に脱ぎません! これがないと私は精神的に死にます!」

これは私の最後の防衛線だ。

バニーガール姿になること自体は、ギフト発動の条件だから仕方ない。

だが、露出面積までは指定されていないはずだ。

だから私は、上着を着ることで「優等生としての尊厳」を保とうとしている。

「ふむ。……まあいい。とりあえず打ってみろ」

修行が始まった。

といっても、私が一方的に先生に打ちかかり、それを先生がいなすだけの稽古だ。

「はっ! やぁっ!」

私は木刀を振るう。

だが、当たらない。

それどころか、私が踏み込んだ瞬間に、足元の畳のヘリに躓いたり、天井から落ちてきた埃が目に入ったりして、勝手に体勢を崩してしまう。

「ぐっ……!」

「遅いし、運がないな」

先生は避けてすらいない。私が勝手に自滅しているだけだ。

「おかしい……」

私は肩で息をする。

バニー化している時は『強運』が発動するはずだ。

躓くどころか、適当に振った剣が偶然当たるくらいの現象が起きてもいいはずなのに。

「おい、東雲。ラジオのアンテナをアルミホイルで巻いたらどうなると思う?」

先生が唐突に聞いた。

「……電波が遮断されて、ノイズが入ります」

「そうだ。お前のそのジャージが、それだ」

先生は竹刀の先で、私のジャージのジッパーをツンと突いた。

「お前のギフトは、世界(外気)との接触面積に比例するらしいな。

隠せば隠すほど、感度は落ちる。

お前が羞恥心で身体を覆っている限り、お前の『運』は窒息状態だ」

「な……ッ」

嘘だと言いたかった。

けれど、実感として分かる。

ジャージの下、肌と布が密着している部分だけ、魔力の循環が滞っている感覚があるのだ。

このギフトは、肌で直接、世界を感じ取ることで発動する類のものらしい。

「嫌ならそのままでいいぞ。

ただし、そのミノムシスタイルのままじゃ、一生『ただのコスプレ好きの不審者』止まりだ」

先生の挑発的な言葉。

私は唇を噛んだ。

不審者なんて嫌だ。私は、誰よりも結果を出したいのに。

「……くっ!」

私は震える手で、ジャージのジッパーを下ろした。

ジジジッ……という音が、静かな道場に響く。

鎖骨が見え、胸元が見え、お腹が見える。

最後に、意を決して上着を脱ぎ捨てた。

冷たい空気が、露わになった肌を撫でる。

レオタード一枚の、完全なバニーガール姿。

顔から火が出るほど恥ずかしい。

けれど――

ドクン。

世界が変わった。

肌の表面がピリピリと粟立つ。

風の流れ、床の軋み、先生の呼吸。それら全てが、私の肌を通して情報として流れ込んでくる。

「……行きます!」

私は床を蹴った。

思考するよりも早く、体が動く。

先生が竹刀を上げる。

その瞬間、開け放たれた窓から突風が吹き込み、道場のカレンダーがバサッと落ちて、先生の視界を一瞬だけ遮った。

(今!)

偶然が生んだ隙。

私の木刀が、先生の胴を捉える――!

パパンッ!

「痛っ!」

乾いた音がして、私の手から木刀が弾き飛ばされた。

先生はカレンダーが落ちてくるのを予知していたかのように身をかわし、私の手首を軽く叩いていた。

「ま、さっきよりはマシだな」

先生はニヤリと笑った。

「肌感覚ってのは大事だ。

恥ずかしがって縮こまってる奴には、幸運の女神も微笑まないってことだ」

私は床に座り込み、真っ赤な顔で自分の肩を抱いた。

悔しい。

でも、確かにさっきの一瞬、世界が私に味方した感覚があった。

「……休憩! 休憩です!」

私は慌ててジャージを拾い上げ、再び体に巻き付けた。

今の私には、数秒間の「全開放」が精神的な限界だった。

「やれやれ。手のかかる弟子だ」

タイラ先生は呆れつつも、その目には少しだけ楽しげな色が宿っていた。

ジャージを羽織ったり、脱いだり。

私の奇妙な修行の日々は、前途多難なまま続いていく。

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