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ギフテッド ハイスクール ~優等生の私のギフトはバニーガール、、、落ちこぼれから始まる少女の成長譚~  作者: アキラ


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5/13

ライフスタイル

休日の朝。

都会の真ん中にある、ギフト保持者専用のトレーニングジム。

最新鋭のマシンが並ぶフロアで、私は自分の心拍数と睨めっこをしていた。

(心拍数145、維持。乳酸値の上昇率、想定内。あと3セットで目標負荷に到達)

私はランニングマシンで走りながら、脳内で完璧な身体管理を行っていた。

私のギフト――あの恥ずかしい「バニーガール化」の能力は、単なる**『強運』**だ。

変身しても、筋力が上がるわけでも、足が速くなるわけでもない。

ただ「ラッキーなことが起きる」だけ。

だからこそ、私は走る。

もし戦場で「運」が尽きたら? 魔法が使えない状況になったら?

その時、私に残るのはこの貧弱な体だけだ。

運なんて不確定なものに命を預けたくない。私が信じられるのは、積み上げた数字と筋肉だけ。

「素」の自分自身のスペックを上げること。それが、私が私であるための唯一の防波堤だ。

息を整え、汗を拭う。

ふと横を見ると、隣のエリアで轟音が響いていた。

「んんっ、しょーッ!!」

ガシャン!!

ウェイトスタックが悲鳴を上げている。

カミムラ ジュンだ。

彼女はベンチプレスで、私の倍以上の重量を軽々と持ち上げていた。

「ぷはーっ! いい汗かいたー!」

彼女が起き上がると、黄金色のポニーテールがバサリと揺れた。

スポーツブラにレギンスというラフな格好だが、その肢体は健康的で、溢れんばかりの生命力に満ちている。

私の体が「計算して維持している張りぼて」だとしたら、彼女の体は「生まれつきの強靭なエンジンの器」だ。

「アオイ! もう終わり? 私、あと30分走ってくる!」

「……元気ね、ジュン。オーバーワークには気をつけて」

「平気平気! 動かないと、魔力が余って体が熱くなっちゃうんだもん」

彼女は笑って、マシンへと駆けていく。

その眩しい笑顔に、ジムにいた男性客たちの視線が一斉に吸い寄せられていた。

「おい、あれ『炎の魔女』のカミムラじゃないか?」

「すげえスタイル……隣の子も、モデルみたいに綺麗だな」

「特進科の二人組か。高嶺の花だな」

囁き声が聞こえる。

私は少し居心地が悪くて、タオルで顔を隠した。

目立つのは嫌いだ。評価されるなら、容姿ではなく成果で評価されたい。

けれど、ジュンはそんな視線など空気のように気にせず、ただ純粋に体を動かすことを楽しんでいる。

(……この違いは、なんなんだろう)

タイラ先生の言葉が蘇る。

『自分を認めろ』『ギフトは呼吸だ』。

ジュンを見ていると、その意味が痛いほどわかる。

彼女にとって、運動も、魔力も、生きることそのものと直結しているのだ。

一方の私は、自分のギフト(運)を信じられず、必死に「物理的な努力」で埋め合わせようとしている。

その差が、このジムでの過ごし方にもはっきりと出ていた。

「いただきまーす!!」

ジムの後のランチタイム。

私たちは人気のイタリアンカフェに来ていた。

テラス席。春の風が気持ちいいが、テーブルの上は戦場だ。

「海老とトマトのクリームパスタ大盛り! ピザ一枚! あとシーザーサラダと、デザートにパンケーキ!」

ジュンの前には、パーティかと思うほどの料理が並んでいる。

彼女のギフト『炎熱支配』は、膨大なカロリーを消費する。だから、食べても食べても太らないらしい。

一方、私は。

「……ミネストローネと、蒸し鶏のサラダ。バゲット一切れ」

栄養バランスとカロリー計算に基づいた、完璧な食事。

ジュンの豪快な食べっぷりを眺めながら、私はサラダを口に運んだ。

「ん~っ! 美味しい~! アオイも一口食べる? ピザあげるよ!」

「ありがとう。……ねえ、ジュン」

私はフォークを置いて、ずっと気になっていたことを聞いた。

「ジュンはさ……自分のギフトのこと、どう思ってる?」

「え? どうって?」

ジュンは口の周りにトマトソースをつけたままで、キョトンとしている。

「その……強力すぎる力とか、周りからの期待とか。プレッシャーになったり、自分が自分でなくなるような怖さとか、ないのかなって」

これは、私自身の悩みだ。

自分のギフトを受け入れられない葛藤。

それを、天才である彼女はどう処理しているのか知りたかった。

ジュンは「うーん」と少し考えてから、ピザをぱくりと齧った。

「あんまり考えたことないなぁ」

「考えないの?」

「うん。だってさ、私が『お腹空いた!』って思うのと、『火を出したい!』って思うの、同じ感じなんだもん」

彼女はニカッと笑った。

「アオイはさ、息を吸う時に『よし、今から酸素を取り込むぞ』って悩まないでしょ?

私にとってギフトはそんな感じ。

私が私でいるために、必要なもの。

だから、怖いとか嫌いとかじゃなくて……なんていうか、『セット』?」

「セット……」

「そ! カミムラ・ジュンというセット商品に、たまたま『炎』がついてただけ!

返品不可だし、使い倒した方がお得じゃん?」

あまりにもあっけらかんとした答え。

けれど、そのシンプルさが、私の胸にストンと落ちた。

私は今まで、自分とギフトを切り離して考えていた。

「東雲葵」という高尚な精神と、「バニーガール」という低俗な能力は別物だと。

でも、彼女は違う。すべてひっくるめて「自分」なのだ。

(返品不可、か……)

ふと、自分の内側にある「あの力」を意識してみる。

私の意志とは関係なく、そこにある奇妙な胎動。

それを「敵」だと思っていたけれど、もしかしたら、ただの「機能」なのかもしれない。

私が私であるための、ちょっと変わったパーツ。

「アオイ? どしたの? サラダ食べないなら貰っちゃうよ?」

「……ふふっ」

私は思わず吹き出した。

彼女の前では、悩んでいるのが馬鹿らしくなる。

「いいえ、食べるわ。……今日はチートデイにして、デザートも頼もうかしら」

「お! いいねいいね! パンケーキ半分こしよ!」

日差しの下、私たちは笑い合った。

ジム帰りの二人の美少女。

片方は底なしの胃袋を持つ天才。

もう片方は、少しだけ肩の力が抜けた優等生。

タイラ先生の言っていた「認める」という感覚が、ほんの少しだけ、わかった気がした休日だった。

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