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ギフテッド ハイスクール ~優等生の私のギフトはバニーガール、、、落ちこぼれから始まる少女の最強への成長譚~  作者: Studio CoMind


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魔境

バスを降りた瞬間、肌にまとわりつくような湿気を感じた。

第7演習場。通称《魔境》の浅瀬。

ここは魔力の澱みが滞留し、異形の魔物が自然発生する場所だ。

「うわー! 魔境だー! なんか空気重いけど、燃えてきたー!」

クラスメイトのカミムラ・ジュンが、無邪気にはしゃいでいる。

彼女の指先からは、すでに赤い火花が散っていた。

意識して出しているのではない。

楽しい、興奮する、そう思った瞬間に**「息をするように」**ギフトが溢れ出ているのだ。

一方、私は。

「……装備チェック、完了」

渡された『汎用魔導ライフル』を強く握りしめた。

これは、ギフトを使わない者のための補助武器。

冷たい金属の感触だけが、今の私の拠り所だった。

(絶対に、使うわけにはいかない)

私のギフト――バニーガール化。

あんな恥ずかしい姿、もしこの衆人環視の中で晒したら?

「優等生の東雲さん」のイメージは崩壊する。

「いやらしい」「ふざけてる」と指さされ、笑い者になる。

そんなことになったら、私は二度と顔を上げて歩けない。

『社会貢献』『高潔な精神』

私が掲げる理想と、私の現実のギフトは、あまりにも乖離しすぎている。

だから私は、自分自身を封印するしかなかった。

実習が始まった。

低級の魔物が現れるたび、生徒たちの派手な魔法が飛び交う。

「ターゲット確認。距離40。風速微弱……」

私は感情を殺し、ライフルの照準を合わせる。

引き金を引く。

パンッ!

氷の弾丸が、正確に魔物の急所を貫いた。

「よし」

完璧だ。無駄がない。

教科書通りの処理。誰にも文句は言わせない。

それなのに――私の胸の中は、鉛を飲み込んだように重苦しい。

周りのみんなが「自分自身の翼」で空を飛んでいるのに、私だけが「作り物の飛行機」にしがみついているような劣等感。

本当は、私の中にだって「飛べる力」があるのに。

それを自分自身で否定し続けている苦しさ。

「……随分と、丁寧な『作業』だな」

不意に、横から声をかけられた。

心臓が跳ねる。

いつの間にか、担任のタイラ レン先生が立っていた。

ポケットに手を突っ込み、どこか遠くを見るような、力みのない立ち姿。

「命中率は100%です。何か問題が?」

私は反射的に防御の姿勢を取った。

完璧な成績を見せれば、何も言われないはずだ。

けれど、先生は私のライフルには目もくれず、静かに私自身を見ていた。

「東雲。お前、今、楽しいか?」

ドキリとした。

技術の指導ではない。心の在り方を問う質問。

「……実習は遊びではありません。結果を出すことが全てです」

「そうだな。じゃあ質問を変えよう」

先生は一歩、私のパーソナルスペースに踏み込んだ。

威圧感はない。ただ、静かな水面のような目が、私の心の奥底にある「澱み」を映し出した。

「お前は、何が怖い?」

「っ……!」

図星を突かれ、言葉に詰まる。

私の視線が泳いだ。

クラスメイトたちの笑い声。ジュンの輝くような炎。

それらと比較して、惨めな自分の姿を想像してしまう。

「……笑われるのが、怖いんです」

私は、蚊の鳴くような声で絞り出した。

一度口に出すと、堰を切ったように言葉が溢れた。

「私のギフトは……みんなみたいにカッコよくない。高尚でもない。

こんなふざけた力が私の才能だなんて、認めたくないんです。

だから、これ(ライフル)で結果を出せば、それでいいじゃないですか」

私は俯いた。

先生はきっと、「そんなこと言うな」「どんな能力も素晴らしい」なんていう、ありきたりな説教をするだろう。

そう思っていた。

けれど、先生の言葉は違った。

「なるほどな。自分のギフトが嫌いか」

先生は、あっさりと私の感情を肯定した。

「よくあることだ。自分の理想と、生まれ持った才能が食い違うなんてことはな」

「え……?」

「親が音楽家でも、子供の才能が格闘技にあるかもしれない。本人は平和を愛しているのに、破壊のギフトを持って生まれる奴もいる」

先生は視線を巡らせ、破壊の跡だらけの演習場を見た。

「自分の一部を『こんなものいらない』と切り捨てていれば、そりゃあ苦しいし、うまく回らんよ。

車の片輪を自分でパンクさせて走ってるようなもんだ」

先生の言葉が、私の凝り固まった思考に染み込んでいく。

否定もせず、無理な励ましもせず。

ただ事実として、私の現状を整理してくれる。

「でも……どうすればいいんですか? 嫌いなものは嫌いなんです」

「好きになれとは言わん。ただ、**『認める』**だけでいい」

「認める?」

「ああ。『今の自分には、このどうしようもないギフトがある』。

まずはそこをスタート地点にするんだ」

先生は私の目を見て、諭すように言った。

「東雲。お前は賢い。理想の自分になろうとして、背伸びをしすぎている。

ギフトは無意識の領域だ。お前がそれを『恥ずかしい』と拒絶している限り、そいつはお前に牙を剥くし、制御もできない」

先生の手が、私の肩にポンと置かれた。

重くもなく、軽くもなく。

ただ「そこにいていい」と許可されたような温かさ。

「笑われるのが怖いなら、隠しながらでもいい。

ただ、自分の中だけでは、そいつと仲直りしてみろ。

『まあ、これも私か』とな。

そうすれば、呼吸ができるようになる」

呼吸。

言われて初めて、自分が実習中、ずっと息を詰めていたことに気づいた。

ライフルを握る手が、白くなるほど力んでいたことにも。

「……これも、私」

心の中で、リフレインしてみる。

あの恥ずかしいバニー姿。

運任せで、理屈が通じない、ふざけた能力。

でも、それが私の中に確実にある「何か」なのだ。

「少し、考えてみます」

私が顔を上げると、先生はもう興味を失ったように、あくびをしながら歩き出していた。

「ま、怪我だけはすんなよ。あと、そのライフル、肩に力が入りすぎだ。もっとリラックスしろ」

背中越しに投げられた言葉。

私は、先ほどまでとは少し違う感覚で、大きく息を吐き出した。

魔境の空気は相変わらず澱んでいたけれど、私の胸のつかえは、ほんの少しだけ軽くなった気がした。

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