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ギフテッド ハイスクール ~優等生の私のギフトはバニーガール、、、落ちこぼれから始まる少女の最強への成長譚~  作者: Studio CoMind


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選抜試験

6月。

梅雨の湿気が肌にまとわりつく季節。

ホームルーム終了間際、担任のタイラ先生ではなく、副担任が興奮気味に一枚のプリントを黒板に貼り出した。

「えー、知っての通り、来月は『全国高校対抗魔法戦』の校内選抜試験を行う!」

教室がドッと沸いた。

それは、国内のギフト育成校が競い合う、年に一度のビッグイベント。

企業のスカウトマンや政府関係者も注目する、エリートへの登竜門だ。

「選抜枠は各学年5名! 我こそはと思う者はエントリーするように!」

クラスメイトたちが色めき立つ。

「スミとカミムラは確定だろ」「あと3枠か……激戦だな」

私は、配られたエントリーシートを机の上に置いたまま、動けなかった。

視界の端で、カミムラ・ジュンが不敵な笑みを浮かべていた。

「へえ、全国対抗戦……。いいね、やっと本気出せる場所が来たって感じ」

彼女は拳を鳴らし、静かに、けれど熱のこもった瞳で黒板を見つめていた。

それは単にはしゃいでいるのではない。

自分の「炎」を思う存分解放できる戦場を、心の底から待ち望んでいる強者の顔だった。

一方、スミ・リョウガは相変わらず無関心そうに窓の外を見ているが、彼の実力なら推薦で勝手に選ばれるだろう。

(……私には、関係ない)

私はプリントをクリアファイルに仕舞い込んだ。

あれは、彼らのような「光の当たる場所」にいる人間のための祭りだ。

バニーガールに変身して、運任せで逃げ回るだけの私が立っていい舞台じゃない。

全国中継で恥を晒すなんて、考えただけでも吐き気がする。

放課後。

いつもの道場。

雨の音が、屋根を叩いている。

私はジャージを肩から羽織っただけの姿で、黙々と雑巾掛けをしていた。

上着の袖を通さないスタイルにも、だいぶ慣れてきた。

肌に触れる湿った空気が、私のギフトである『強運』のアンテナを微かに刺激しているのが分かる。

「……で、出ないのか?」

道場の隅で、あぐらをかいて茶を啜っていたタイラ先生が、唐突に口を開いた。

私の鞄から少しはみ出ていた、選抜試験のエントリーシートが見えたらしい。

「出ませんよ。私なんて場違いです」

私は手を止めずに答えた。

「私のギフトは戦闘向きじゃありません。

それに……もし運が悪くて変身が解けたりしたら、社会的に死にます」

「ふうん」

先生は興味なさそうに天井を仰いだ。

「もったいないな」

「もったいない?」

「道場で俺相手にチャンバラごっこをするのもいいがな。

『運』ってのは、混沌カオスの中でこそ一番輝くもんだ」

先生が茶碗を置く。

「お前、最近動きが良くなってきた。

『思考を捨てる』感覚も、少しずつ掴んできている。

だが、所詮は俺という『安全な壁』に向かって打っているだけだ」

図星だった。

私は心のどこかで、先生に甘えている。

先生は私を傷つけない。私の秘密を笑わない。

この道場は、私にとって居心地の良いぬるま湯だ。

「対抗戦の選抜は、何が起こるか分からん。

ルール無用、実力行使のサバイバルだ。

お前のその臆病なウサギの勘が、本番でどこまで通用するか……試してみたくはないか?」

「……試す」

「おう。ダメなら負ければいい。

誰も期待してないんだ、気楽なもんだろ」

先生はニヤリと笑った。

「誰も期待していない」。

その言葉は残酷だけど、不思議と私の肩の荷を下ろしてくれた。

私は雑巾をバケツに放り込み、立ち上がった。

肩にかけたジャージが揺れる。

「……もし、私が選抜に通ったら、何かいいことありますか?」

「そうだな。もし通ったら、焼肉でも奢ってやるよ」

「安いですね。……でも、悪くないです」

私は鞄から、くしゃくしゃになりかけたエントリーシートを取り出した。

ペンを走らせる。

『東雲 葵』。

安全圏からの脱出。

それは、私が「ただの優等生」から「何者か」になるための、最初の一歩だった。

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