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第3年生編 第25話:画面越しの鼓動(・メモリーズ)

[21:00 ― サンの部屋]

静まり返った室内。デスクライトの光が、サンの手元で転がる試作ギヤを照らしていた。作業帽を脱いだ彼の素顔は、かつてのメガネ姿からは想像もつかないほど精悍だ。彼はスマートフォンをじっと見つめている。

アルバムを開く……。2年生の決勝で優勝した日の写真。顔を赤くして自分を抱きしめるフェース。公園で二人でアイスを食べた時のこと。サンは無意識に微笑んでいた。

「あれから、もう一年か……」

[チャット画面:Sun & Face]

Sun: 「フェース先輩、ドイツは今午後3時ですよね? ちゃんと休憩してご飯食べてくださいね」

(既読)

Face: 「わあ、サン部長。自分から送ってくるなんて珍しいじゃない! ちょうど講義が終わったところよ」

Face: (猫がハートを送るスタンプ)

Sun: 「今日、部室の掃除をしたんです。先輩がいつも座って僕に指示を出していた椅子を見たら、少し寂しくなりました」

Face: 「寂しい? 私がいなくなったら学校を支配するんじゃなかったの? 今や1年生の女の子たちに囲まれて、帰り道も忘れてるんじゃない?」

Sun: 「そんなわけないでしょう……。僕は先輩から託された『課題』以外、興味ありませんから」

サンは削り出したばかりの Universal Gearユニバーサル・ギヤ の写真を送った。

Face: 「へえ……研磨の腕、また上げたわね。すごいわ、サンくん! でも忘れないで。このエンジンが完璧に回らなきゃ、航空券の予約は絶対に許さないから!」

Sun: 「はい、分かっています」

[翌朝 ― 技術専門学校]

サンは整った作業着姿で校門をくぐった。女子生徒たちが色めき立ち、興奮気味に囁き合うが、彼の視線はただ一点、部室だけを見据えている。

「おはようございます、サン部長!」1年生の後輩が駆け寄る。

「ああ。午前の在庫チェック、頼んだぞ」

サンは低く落ち着いた声で答えた。その威厳ある姿に、通りすがりの女子たちはさらに頬を染める。

ゴンがサンの背中を叩いた。「よう、サン! 今日も2年生の女子からラブレター預かってるぜ。どうする?」

サンは振り返ることもなく歩き続ける。「返してきてくれ。今年の部長の心は、ドイツでの『約束』ですでに予約済みだってな」

ゴンは呆気にとられた。「おいおい……イケメン部長は言うことが違うねぇ!」

[10:00 ― 機械部・実習室]

サンは旋盤の前に座り、金属と向き合っていた。ダイヤモンドバイトが鉄を削る「キィィィィィン」という音が響く。火花を見つめる鋭い眼光。

「部長! 面会希望の方が来ています」

サンは静かに旋盤を止め、油のついた手を拭う。「誰だ?」

「私です! サン先輩」

自信に満ちた甘い声。ポニーテールの少女、1年生の 『ラダー』 が入ってきた。電子科の期待の新星であり、「第二のフェース」と噂される才女だ。

「ラダー……。機械部に何の用だ?」

「この『電子制御ギヤシステム』のプランを見ていただきたくて。伝達系を理解させたら先輩の右に出る人はいないって聞いたので」

彼女はサンに近づき、かすかな香水の香りが漂う。サンはプランを一瞥した。

「1年生には複雑すぎるな。どこでこれを?」

「フェース先輩のようになりたいんです……。そして、先輩のユニバーサル・ギヤを『支える』存在になりたい」

ラダーは挑戦的な目でサンを見つめる。だがサンの瞳は冷ややかだった。

「……気持ちだけ受け取っておく。だが、このシステムにはすでに構想がある。そして僕を支えられるのは、ドイツにいるあの人だけだ」

サンはプランを丁重に、だが突き放すように返した。「用がないなら、練習の邪魔をしないでくれ」

[16:00 ― 放課後]

サンがロッカーを開けると、ピンク色の封筒が10通近く雪崩れ落ちてきた。彼はため息をつく。

「有名人ってのは、面倒なもんだな……」

スマートフォンの通知が鳴る。

[Line Alert: Face]

Face: 「ちょっと! 学校の掲示板に写真が出てたわよ。サンくんモテすぎじゃない!? あのポニーテールの子は誰? 随分と近いじゃない!」

Sun: 「ただの後輩です。すぐに追い返しましたよ」

Face: 「ふん! 本当かしら? 私が帰ったらお仕置きだからね! 覚えてなさいよ」

Sun: 「早く帰ってきてください。お仕置き、待ってますから」

返信を打つサンの口角がわずかに上がった。

[校舎裏の暗がり]

ラダーは拳を握りしめ、去っていくサンを睨みつけていた。「フェース先輩……。伝説かもしれないけど、今はここにいない」

彼女は誰かに電話をかけた。

「……計画を始めて。彼が愛してやまないエンジンに問題が起きた時、あの冷静な顔がどこまで持つか、見ものね!」

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