第2年生編 第18話:嵐の予感と、新たな挑戦状
[翌朝 ― 学校にて]
キャンパスの雰囲気はいつもより明るいはずだったが、掲示板の前には人だかりができ、不穏な空気が漂っていた。
「サン!これを見ろよ!」コンが血相を変えて駆け寄ってきた。隣にはフェースがサンの手を(照れながらも)握っている。
掲示板には、全国イノベーション大会のポスターの上に、小さな黒い旗が突き刺されていた。そこにはスプレーで叩きつけるような赤い文字が。
『中部テクニカルだと? ただの屑鉄の集まりか……。北工の龍に噛み砕かれるのを待っていろ。 ― アキラ』
「北の龍……北工機械科のアキラか!」周囲からどよめきが起こる。
フェースはサンの手を強く握りしめた。「あの人の名前、聞いたことがあるわ。情け容赦ない技術で相手を完膚なきまでに叩き潰す、『心なき機械』と呼ばれている天才よ」
サンは掲示板を冷徹に見つめた。「屑鉄、か……。その屑鉄が、奴の傲慢さを粉砕する歯車になることも知らずに」
[放課後 ― 第3実習棟]
サンは試作型ハイブリッドエンジンの構造をゼロから見直していた。滴る汗が頬を伝う。コンとマインドが深刻な表情でデータをチェックしている。
「サン、北工のAIシステムに対抗するには、メインギアの回転数をあと15%上げなきゃダメだ。そうしなきゃ、奴の演算速度には勝てない」
「分かっている……。だが、それだけの負荷にアルミ合金じゃ耐えられない」サンは眉をひそめた。「フェース先輩の父親が言っていた『特殊合金』が必要だ……」
その時、重厚な足音が実習棟の入り口に響いた。黒いツナギに身を包み、銀髪をなびかせた長身の男が、不敵な笑みを浮かべて入ってきた。
「ふん……惨めな努力だな」
アキラ本人だった。
「アキラ……ここで何をしているの?」フェースがサンを守るように一歩前に出る。
アキラは冷ややかな目でフェースを一蹴した。「全国1位を獲ると豪語した奴のツラを拝みに来たのさ。……サンくん、だっけ? 君のエンジンはもう時代遅れだ。世界を動かすのはアルゴリズムであって、オイルまみれの古臭い歯車じゃない」
サンは静かにレンチを置き、アキラの瞳を正面から見据えた。「時代遅れ、か。なら証明してやるよ。3日後のプレ大会、1分間の回転数で勝負だ」
「俺が勝ったら?」アキラが嘲笑う。
「僕が勝負に負けたら、全国大会を辞退し、このエンジンを自らの手で破壊してやる!」サンの宣言に、仲間たちが息を呑む。
「サン!何を言ってるのよ!」フェースが叫ぶ。
アキラは大声で笑った。「面白い! なら、俺が負けたら君の歯車を屑鉄ではないと認めてやろう。精々準備しておくんだな……龍の顎から逃げられた獲物は、一人もいないんだからな!」
アキラが去った後、重苦しい沈黙が流れる。サンは不安げなフェースの頭を優しく撫でた。
「フェース先輩……僕を信じてください。僕たちの『鼓動』が、世界中のどんなAIよりも熱いってことを教えてやりますから」




