第2年生編 第8話:逆転の策と、取り戻した信頼
第3実習棟のロビーで、僕はアイビーが残した「忘れ物」を確認した。それは、僕が今週末にフェースへ贈るつもりで保存していた写真と同じ**「ペアのキーホルダー」**だった。
「アイビーのやつ、僕が保存してた画像を見て、先回りして同じ物を買ったんだ……」
僕は怒りで震えながら、アイビーが購入した店のレシート履歴(コンの協力で調べたもの)を証拠として掴んだ。
コンとマインドちゃんの協力で、僕はフェースの部屋に入ることができた。
「フェース、これを見てくれ!」僕はキーホルダーと証拠の画像を彼女に突き出した。
「アイビーは僕たちが仲違いするように仕組んだんだ。助手の話も、僕の両親はまだ承諾していない。僕は絶対に断るよ」
フェースは僕の腕の中で泣き崩れた。
「怖かった……サンがいなくなっちゃうんじゃないかって……」
コンとマインドちゃんはドアの陰でガッツポーズを作った。「作戦成功だな!」
フェースの涙は、僕のシャツをじわりと濡らした。彼女の細い肩が震えるたびに、アイビーへの憤りよりも、彼女をここまで不安にさせてしまった自分への不甲斐なさが胸を刺す。僕は彼女の背中に回した腕に、さらに力を込めた。
「ごめんね、フェース。僕の不注意だった。でも、これだけは信じて。僕が隣にいたいのは、世界中で君だけなんだ」
フェースは僕の胸に顔を埋めたまま、小さく頷いた。しばらくして顔を上げると、その瞳はまだ潤んでいたけれど、いつもの凛とした光を取り戻していた。彼女は僕の手に握られたペアのキーホルダーを見つめ、ふっと弱々しく笑った。
「……これ、本当はサンが私にくれるはずだったの?」
「うん。今度の土曜日に渡そうと思って、ずっと探してたんだ。アイビーに先を越されちゃったけど……」
「いいよ。これが本物かどうかなんて関係ない。サンが私のことを考えてくれてた、その気持ちが一番嬉しいんだもん」
彼女は僕の手からキーホルダーを受け取ると、愛おしそうに胸に抱いた。
その時、ドアの隙間から「よしっ!」というコンの小声と、それをたしなめるマインドちゃんの「しーっ!」という声が聞こえてきた。僕たちが視線を向けると、二人はバツが悪そうに顔を出し、照れくさそうに笑った。
「悪いな、サン、フェース先輩。雰囲気をぶち壊すつもりはなかったんだが、あまりにいいシーンだったからさ」コンが頭をかきながら言った。
「フェース先輩、元気出してくださいね。私たちがついているから、あんな嫌がらせになんて負けちゃダメです!」マインドちゃんも力強く励ましてくれた。
フェースは涙を拭い、最高の笑顔を二人に見せた。「ありがとう、コン君、マインドちゃん。二人のおかげで、大切なことに気づけた気がするわ」
その後、僕たちは四人でこれからの対策を話し合った。アイビーが父親のコネを使って僕を助手に指名した件は、まだ火種として残っている。でも、今の僕には信頼できるパートナーと、かけがえのない親友たちがいる。
帰り際、コンは僕の肩を叩いて囁いた。
「サン、これで貸し借りなしだな。次は俺がマインドちゃんをデートに誘う番だ。その時はまた、アドバイス頼むぜ」
僕は親友と拳を合わせた。
夜空を見上げると、街の明かりに負けないほど強い星が光っていた。アイビーが次にどんな罠を仕掛けてこようと、僕たちの絆はもう、簡単には壊れない。




