第2年生編 第6話:星空の下の約束と、僕たちの新しい一歩
実家の庭は、今はもう静まり返っていた。聞こえるのは秋の虫の声と、時折そよぐ風の音だけだ。リンとコンの助けのおかげで、家族やビジネスを巡るあの張り詰めた緊張感は、ようやく嘘のように解けていった。僕は門の向こうへと消えていく二人の背中を見送りながら、深く、長い安堵のため息をついた。
「サン……。あ、ううん。『サン君』じゃなくて、もう『サン』、だね」
背後から聞こえたフェースの甘い声に、僕はハッとして我に返った。
振り返ると、そこには星空の下で頬を赤らめた彼女が立っていた。そこには、以前のように僕をからかったり、強引に迫ったりする「3年生の先輩」としての姿はなかった。ただ一人の女性として、僕の隣に「恋人」として誇らしげに立っている、等身大のフェースがいた。
「ありがとう、サン……。私のためにお父様に立ち向かってくれて。本当に、本当に怖かったんだから。無理やり引き裂かれちゃうんじゃないかって」
フェースが僕の手をギュッと握りしめた。僕はその手をさらに力強く握り返した。
「約束したじゃないですか。誰にも僕たちを引き裂かせたりしないって。たとえフェースのお父様でも、来年の留学の話でも、僕は絶対に諦めません」
フェースは顔を上げ、星明かりを反射してキラキラと輝く瞳で僕を見つめた。
「そうだね……。距離は遠くなっちゃうかもしれないけど、心が変わらなければ、きっと大丈夫だよね?」
「はい。僕がフェースをちゃんと支えられる男だって、お父様に証明してみせます。そして、君が帰ってくるのをずっと待っています」
僕は真っ直ぐな声でそう告げた。
フェースは、僕が見た中で一番眩しい笑顔を見せた。そして、「もう!」と叫びながら僕に飛びついてきた。「私のサンは……世界一かっこいいよ! 大好き、このバカ!」
僕たちは、庭の真ん中で長い間抱き合っていた。窓の隙間からは、僕の両親が温かい微笑みを浮かべてこちらを覗いていることにも気づかずに。
ポワチョー技術専門学校での2年生としての生活は、まだ始まったばかりだ。これからも困難や障壁はたくさん待ち受けているだろう。でも、今夜の僕は確信している。
僕は今、世界で一番幸せな男だということを。




