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第2年生編 第1話:繰り返される輪廻と「アイビー」の微笑み

ポワチョー技術専門学校に、新学期の始まりを告げるチャイムが例年よりも力強く響き渡った。僕——「サン」——にとって、2年生として校門をくぐる気分は、1年前とはまるで違っていた。かつてあんなに硬かった制服はすっかり体に馴染み、新しく支給された実習着(作業着)の匂いと白いシャツが、僕を一歩大人に近づけてくれたような気がした。

「おい、サン! こっちだ!」

黄色い髪をトレードマークにした親友の**「コン(ก้อง)」**が、第3実習棟の前から僕を呼んでいた。相変わらず元気な奴だが、新入生を迎えるために気合を入れたのか、少しおしゃれを意識した新しい髪型に変わっている。

「今年から俺らも先輩だな! どうだ、『サン先輩』として女子たちにチヤホヤされる準備はできてるか?」

コンは僕の肩を力強く叩きながら、意味深にウィンクした。

僕は苦笑いしながら、ある一人の顔を思い浮かべていた……。今は3年生になった**「フェース先輩」**だ。今頃、また僕を「甘やかす」ための作戦でも練っているんだろうか。あの観覧車でのデート以来、二人の距離は確実に縮まり、思い出すたびに今でも心臓が跳ね上がる。

【既視感……けれど、違う誰か】

不安げな新入生たちが集まる朝礼広場を通り過ぎようとしたその時、ふわりと風が吹き抜け、甘い香りが僕の足を止めた。それはフェース先輩の石鹸の匂いではなく、もっとフレッシュな、花の香りのような匂いだった。

「あら……先輩。シャツのボタン、外れてませんか? ちょっとこっちに来てください、私が見てあげますから」

頭の中のテープが再生されたのかと思うほど、聞き覚えのある台詞が耳に飛び込んできた。僕は思わず振り返った。そこには、小柄な1年生の女の子が立っていた。彼女は、無邪気でありながらどこか鋭い光を宿した瞳で満面の笑みを浮かべている。ゆるく巻かれた短い髪が揺れ、胸元の名札にははっきりと**『アイビー』**と刻まれていた。

アイビーは言葉だけでなく、かつてのフェース先輩がしたように、ぐいぐいと僕の間近まで踏み込んできた。彼女が顔を近づけると、瞳の中に僕の困り顔が映る。華奢な指が、遠慮なく僕の襟元に触れた。

「……あ、あの、後輩さん。自分でできるから大丈夫だよ」

僕は驚いて後ずさりした。

「もう……サン先輩、わがまま言わないでください。アイビーはただ、放っておけない雰囲気の先輩を『お世話しに』来ただけなんですから」

言葉遣い、ウィンク、そして「サン先輩」という呼び方の甘い響き。それはまるで、フェース先輩をそのままコピーしたかのようだった。

【女王 vs 小悪魔な後輩】

「お嬢ちゃん……その台詞、私の『サン君』に使うための専用ライセンスがあるんだけど、知ってるかしら?」

背後から、甘いけれど毒を含んだ冷ややかな声が聞こえた。振り返るまでもない、フェース先輩だ。3年生になり、どこか落ち着いた雰囲気を纏った彼女は、迷うことなく僕の右腕を抱きしめた。アイビーを射抜くようなその視線には、いつもの甘さは微塵もない。自分の得意技を真似され、目の前で「サン君」を誘惑された女王の怒りそのものだった。

「あら……。こんにちは、フェース先輩」アイビーは動じることなく微笑み返した。「甘えるライセンスなんて……早い者勝ちじゃないんですか?」

隣にいたコンが息を呑むのがわかった。「サン……お前の2年生生活、去年より100倍インパクト強そうだな……」

僕は二人の間に挟まれ、冷や汗が止まらなかった。慣れ親しんだ3年生の攻め担当と、彼女に瓜二つの性格をした1年生の後輩。ポワチョーでの騒がしい輪廻がまた始まろうとしている。どうやら今回ばかりは、逃げ道はなさそうだ。

【2年生の最初の試練】

フェース先輩がアイビーに向ける視線に、冗談の欠片もなかった。右腕を抱きしめる力が強まり、彼女の体がわずかに震えているのが伝わってくる。恐怖ではなく、自分の「弟分」を目の前で奪われそうになった怒りの震えだ。

「早いか遅いかなんて関係ないわ……」フェース先輩は冷たい笑みを浮かべ、後輩の目をじっと見据えた。「けれど、世の中には『資格』がある人だけに許される特権があるの。今日入ったばかりの外様が、いきなり飛び級しようなんて思わないことね」

アイビーは少し眉を上げ、殺気など気付かないふりをして見せた。指先で自分の髪をくるくると弄ぶその仕草は、2年生の頃のフェース先輩にそっくりで、僕は思わず生唾を飲み込んだ。

「資格、ですか? 私はただの後輩としての親切ですよ。それに……サン先輩だって嫌がってないみたいですし。ね、サン先輩?」アイビーは僕に甘い笑みを向け、空いている左腕にすがりつこうと距離を詰めてきた。

「え、えっと……それは……」僕は言葉に詰まり、背中に冷や汗が流れた。

「授業に行きますよ、サン君!」フェース先輩は僕に喋る隙を与えず、そのまま強引に僕を引っ張っていった。「教室まで私が送るわ。今の彼に余計なサービスは必要ないの!」

僕はフェース先輩に半ば引きずられるようにして、人混みを抜けていった。コンが遠巻きに「メインイベントを見守る観客」のような顔をしてついてくる。道中、先輩は一言も発さなかったが、腕を掴む力の強さが彼女の「独占欲」を如実に物語っていた。

第3実習棟の製図室の前で立ち止まると、彼女はようやく腕を離したが、代わりに僕を壁際に追い詰めた。自信満々だった彼女の瞳が、一瞬だけ揺れる。

「サン君……」彼女の声が低くなり、不安混じりの甘い声に戻った。「あの子に鼻の下を伸ばしちゃダメだよ。あの子、わざと私を怒らせてるんだから」

「わかってますよ、先輩……。僕も、先輩と同じことを言われて驚いただけですから」僕は照れ隠しに頭を掻いた。

「それが怖いのよ! あの子はサン君がどんなタイプに弱いか分かってる……」フェース先輩は背伸びをして、顔が触れ合うほどの距離まで近づいてきた。懐かしい清潔な香りが鼻をくすぐる。「忘れないでね……ポワチョーの甘えん坊な先輩は、『フェース』一人だけで十分なの。もし他の子に目を向けたら、前より100倍拗ねちゃうから!」

言い終えると、彼女はコンの悲鳴じみた驚きをよそに、僕の頬にそっとキスをして、3年生の校舎へと駆け去っていった。頬に残る感触に、僕は顔が火照るのを感じた。

「サン……お前、初日からとんでもねえな」コンが歩み寄り、肩を叩いた。「でも俺、見てたぞ。お前たちが去る時、あのアイビーって子、全然凹んでなかった。むしろ、前より楽しそうに笑ってたんだ」

誰もいなくなった廊下を見つめながら、僕は予感していた。僕の2年生の生活は、フェース先輩の甘さだけでは終わらない。僕を「獲物」とした、新しい戦いの幕が上がったのだ。

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