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第5.75話 男達のお泊まり会

 風呂から上がり寝間着に着替えた俺は、明と悟が来るまでお泊まり会の準備を進める。


 準備と言っても、リビングで雑魚寝するのがいつもの流れだから、押し入れから何枚か毛布を取り出す程度だ。


 「よし、これでいいかな」

 ピンポーン


 毛布を出し終わると、タイミング良くチャイムが鳴った。


 確認するとモニターには、明と悟の姿が映っているのが見えたので、俺は通話をONにする。


 「2人共開けるから入ってきていいぞ」

 俺はそう言いながら、通話ボタンの横に付いている施錠解錠ボタンを押す。


 「りょうかーい」と、明が返事と同時にガチャっと玄関の扉を開ける。


 このマンションにはモニターから、玄関の施錠と解錠が出来るという機能が付いていて、わざわざ玄関に行かなくて済むのが便利だ。


 「あれ、直央にいは?」

 「兄貴なら風呂入ってる」


 「なら3人で先にやってるか」

 「だな、何からやる?」


 俺達のお泊まり会は、毎度寝落ちするまでゲームをやるというもので、今日みたいなゲーム大会自体が物足りない日は特に盛り上がる。


 「明と悟は何がやりたい?」

 「とりあえず、ふよふよで」


 「それは明が勝ちたいだけじゃねぇか! 詩央が居ないからボコボコ確定だし」

 「ハッハッハ! ならば練習して俺に勝ってみせるんだな!」

 明が腰に手を置いて誇らしげにこちらを煽ってくる。


 「じゃあ、ふよふよやった後でやられた分、格ゲーでやり返せばいいか」

 悟がボソッと怖いことを言う。


 「そうなると俺は……レースゲーだな」


 各人がそれぞれ得意なジャンルで優越感に浸ろうと提案する中、リビングに兄貴が入ってきた。


 「なんだ、もう集まってたのか速いな。夜はまだまだ長いって言うのに」

 「どうせゲームやるんだから、早い方がいいだろう」


 「ゲームはやるがその前に、お前らと恋バナがしたいんだが、いいか?」

 「はぁ? 兄貴が恋バナ!?」

 兄貴から聞き慣れない言葉が出てきて声を荒らげる。


 「そんな驚くなよ、俺だって興味無い訳じゃない。まぁとにかく全員座ってくれ」

 そう言い兄貴はテーブルを指さす。




 全員がテーブルに着くと、早速兄貴が口を開いた。

 「とりあえずお前らに聞きたいのは、最近どうなんだ?って話だ」

 「最近って言ってもなぁ」

 悟が腕を組んで天井を見上げた。


 特に誰も話そうとしないので、兄貴が明の方を向く。

 「明は詩央とどうなんだ?」

 「俺から!? というかなんで俺が詩央ちゃんの事好きだとっ」


 「いやいや、むしろなんでバレてないと?」

 俺は思わず手を振った。


 「くっ、そりゃあバレるか……それに、実は詩央ちゃんが俺の事を好きだって事も気付いてるよ」

 「詩央も明らさまだからな、気付かない訳がないか。じゃあなんで告白しないんだ?」


 「それは、ホントに俺なんかでいいのかなって思って……詩央ちゃんめちゃくちゃ可愛いし……友達思いで優しくて……こんな俺とも仲良くしてくれる良い子なんだ。だからこそ俺よりもっと相応しいやつが居るんじゃないかって思って、自信が持てないんだ」


 「せっかく両想いなんだから、告白して付き合えばいいのに」

 悟が椅子の背もたれに倒れながら言う。


 「両想いなのはわかってる、告白すれば100%成功するのは目に見えてるんだけど……」

 「何が引っかかってるんだ?」


 明はしばらく黙ったあと意を決して口を開いた。

 「だって俺が得意なことってゲームだけだろ? それに比べて詩央ちゃんは家事全般できるし、頭も良い。運動神経もいい。めちゃくちゃ可愛い」

 「コイツ可愛いって何回言う気だ?」

 悟がツッコんだ。


 「もし俺が詩央ちゃんの彼氏として隣を歩いてみろ! 周りから釣り合ってないとか思われたら、俺も嫌だし詩央ちゃんも嫌だろ?」

 「……つまり詩央のことが好きだから、詩央が不快に思う事を避けたいと」


 明は静かに頷いた。


 「明って頭いいくせにバカだよな」

 「そうだな、馬鹿だわ」


 「2人共バカって言ってやるなよ……」

 「いや、兄貴だって馬鹿だなって思っただろ」


 「……否定はしない」

 「皆して好き放題言いやがって」

 明が握り拳を作って怒りを抑えている。


 「なら、馬鹿って言ったお詫びに1つ明にアドバイス」

 「……なんだよ」


 「夜中2人でゲームできるんだし、そろそろゲーセンデートにでも行ったら?」

 「ゲーセン……デート……だと」

 俺の提案を聞いた明が、恐ろしい表情でこちらを睨んできた。


 ゲームセンターなら幼馴染十字会で、何度も遊びに行ったことがある。


 ここから自転車でも電車でも行くことができるが、今回はサイクリングデートも兼ねているため、自転車で行ってくれたら目論見通りだ。


 「そんな怖い顔するな、デートとは言ったけど目的は詩央が明と”2人きりでも楽しんでる”事を知るのが目的だ」

 「……なんで」


 「なんでって、デートして楽しんでる詩央を見れば、自分が彼氏でもいいんだ! って自信がつくだろ」

 悟が答えた。


 明は目を瞑って腕を組むと、「うーん」と唸りながら後ろに反ったり、前屈みになったり繰り返す。


 しばらく揺れたあと、決心が着いたのか明はただ静かに「わかった」と答えた。


 「じゃあ、決行は日曜日な」

 「だな、明日は瞳が詩央と遊びに行くって言ってたから、予定ズラさせるのも嫌だし」


 「久しぶりに聞いたわ、悟のシスコン発言」

 「はあ? シスコンじゃねぇ」

 悟は顔を赤くさせながら勢い行く立ち上がる。


 「でも、瞳ちゃんなら言えば嬉しそうに協力してくれそうだけどね」

 「「「あぁ、たしかに」」」

 兄貴の発言に3人とも頷いてしまった。


 「まぁとりあえず後で、瞳に連絡しておくわ」


 「とりあえず、明はこれで良いとして。次はどっちの話を聞こうかな」

 兄貴がニヤニヤと俺と悟を交互に見てくるので思わず「悟で」と言った。


 「ちょっ、真央てめぇ!」

 「まぁまぁ、後で真央にも聞くんだから」

 そう言い、兄貴は俺の肩に手を置いた。


 「ならいいけどさ……。俺の方か、俺の方は正直どうすればいいのか分からないんだよなぁ。陽姉は今でも直央にいのことが好きっぽいしさ」


 「そうなのか?」

 兄貴が不思議そうな表情を浮かべる。


 「兄貴はそう思わないのか?」

 「あぁ、むしろ俺じゃなくて悟に好意が向き始めてると思う」


 「「は?」」

 悟とハモった。


 「いやいやそれはないって! 去年フラれてんだぞ!?」

 「なら、その時の断り文は?」


 悟はストンッと椅子に座り、足と手を組んで去年の告白イベントを思い返す。


 「えっと確か、『今の悟くんとは付き合えないかなぁ』だったけな」

 「”今の”……ねぇ」

 兄貴が顎に指を添えてニヤニヤしだす。


 「そういえばフラれたショックで気にした事なかったな。今のってどういう意味だったんだ?」

 「陽姉に聞いてみたら?」


 「陽歌さん教えてくれるかな?」

 明の一言に全員が黙ってしまった。


 「仕方ない、悟ために俺が陽歌に聞いてやるよ」

 兄貴をテーブルに腕を置き、前のめりになる。


 「兄貴にも教えてくれなかったら?」

 「その時は自分で考えるしかないだろ」


 「自分で考えると言ってもな、陽姉っていつも何考えてるわかんねぇからな」

 「俺にも分からない時があるからな、その気持ちはわかる。さて、最後は真央だけど」


 「俺か、俺の方は――あ、そういえば。明と悟は桜庭雪穂って覚えてる?」

 「桜庭って優花いつも一緒に居たヤツだろ」


 「俺も覚えてるよ、優花と桜庭のコンビは強いって詩央ちゃんが褒めてたよ」

 「そうそう、その桜庭。

 今日入学式終わったあと優花と雪と3人で帰ったんだけど――」


 俺は現状困ってる事もなかったから、なんとなく今日の入学式から帰る時にあった出来事を話した。


 「――って事が帰りにあったわ」


 話した直後、俺を除く3人からそれぞれ負のオーラを感じる。


 「真央、お前と言うやつは……」

 兄貴は呆れていた。


 「さすが鈍感王、無意識にそこまでやるのか……」

 悟は俺を罵っているような気がして。


 「さすが鈍感兄妹のトップは格が違うな、無自覚で愛称呼びまでやってるとは」

 明はどこか楽しげだ。


 一方俺は、3人が何の事を言ってるのかわからず、ただ首を傾げるしかなかった。


 特に雪と別れた後、優花が不機嫌だった理由は今考えても分からない。


 今日のろじ裏


 今日はゲーム大会の後、優花さんの提案で詩央ちゃんと陽歌ちゃんも合わせて4人で温泉に行った。

 優花さんが私達に相談があるからだ。


 でもその相談内容があまりにも衝撃的すぎた。

 それは私”右川瞳”と同じ理由で大きくした胸の本当のサイズと、いつかそれを真央先輩達に明かす時に、手伝って欲しいというものだ。


 詩央ちゃんは羨ましいそうに触っていたし、陽歌ちゃんも興味津々だった。


 でも私はどちらかと言うと危機を感じている。


 真央先輩は大きいのが好きだと思ってたから、温泉に浸かるとその大きさが嫌でもわかってしまう。


 真央先輩の好みは誤解だったけどね。


 それから優花さんは、どうしてそこまで大きくなったか教えてくれたけど、そこは多分体質の問題だろう。

 なんせ私のお母さんは、覚えてる限りそこまで大きくなかった気がするから。


 でも危機を感じたくせに内心嬉しくもあった。

 それは優花さんも真央先輩のことが好きだから大きくした、という理由だ。


 私も振り向かせたくて大きくしたから、恋敵として意識してたのにちょっと仲間意識が芽生えた。


 それでも恋敵である事に変わりはない。




 温泉を出たあとは、優花さんの家でお泊まりだ。

 これはゲーム大会の後の恒例行事なので、後は寝るだけなのだが――。


 「眠れない……」

 横を向くと詩央ちゃんがスヤスヤと眠っている。


 手を伸ばして指先で頬をツンツンした。

 「ふふ、相変わらず柔らかーい」


 すると、テーブルに置いておいた私のスマホがピコンと鳴る。


 眠れないから起き上がりスマホを手にして確認すると、通知はお兄ちゃんからだった。


 『日曜日に明と詩央をゲーセンデートさせるから手伝え』


 「え、うそうそ。明先輩と詩央ちゃんを!? いいねいいね」

 思わず興奮してテーブルをバシバシ叩きたくなったが、ここは優花さんの家だし、皆寝てるから何とか制止する。


 『わかった、明日誘うのかな? 詩央ちゃんと出掛けるし早めに帰った方がいいかな?』

 『いや、そこまではしなくていい。ただ詩央が相談してきたら押してやってくれ』


 『はーい』


 ふふふ、明日は詩央ちゃんとお出かけだけど、日曜日は尾行しないとねぇ。


 はあ、私も真央先輩とデートしたいなぁ、デートと言わずお出かけのお誘いでもしてみようかな。

 あ、そうだ!


 『真央先輩、日曜日に明先輩と詩央ちゃんのデートを、一緒に尾行しませんか?』

 「送信、と…………ふふふ、先輩なんだかんだ詩央ちゃんの事を大事に思ってるから乗ってくれると思うけどね」


 この時間はゲームで盛り上がってる頃だと思って、スマホを置いて布団に戻るとピコンッとスマホがなる。


 私はガバッと起き上がりスマホを確認すると、通知は真央先輩からだった。


 「やった真央先輩からすぐに返事来た。ゲームの休憩中なのかな?」


 『尾行するのはいいけど、2人の邪魔にならないようにね』

 『わかってますよ♡』


 「へへ、日曜日が楽しみだなぁ。先輩と尾行デートなんて♡」

 その後真央先輩から連絡は来なかった。

 でも私は優花さんの件でモヤモヤして眠れなかったのに、先輩とデートできると思ったらドキドキより嬉しさが勝って、嘘みたいにスっと眠ることができた。


 「おやすみなさい、真央先輩♡」

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