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不埒者

 放課後。

 淫靡な特訓は続く。


「んんっ……はぁはぁ……や、やんっ……くふぅっっ!」

「もっと喘いで! そんなんじゃ、興奮しないよっ」


 俺は女優にスマホを向けつつ、エロ監督みたいな指示を飛ばしていた。

 ねっとりと角度を変えては録画していく。別に俺が個人的趣味に走っているわけではなく、これは杜若さんの羞恥心を引き出し、より一層特訓のパフォーマンスを向上させたりさせなかったり。

 うんうん、美人は絵になるじゃなぁ~い。


「でゅふ。良いですぞ、良いですぞ。拙僧、滾りますな」


 拙者、ローアングラー隆と申しまする。三度の飯より、女子校生の痴態がご馳走でございまして。カメラの連射機能も駆使してつかまつる候。


「きも」

「殺気っ!」


 なかなかどうして、短い言葉で人を切り捨てた。

 むろん、辻斬りの藤原なり。


「ふ、藤原がこんな時間まで残ってるなんて珍しいじゃないのかね?」

「忘れ物」


 藤原は、俺とソーシャルディスタンスを保ちながら机へ向かった。しれっとマスクを装備する。ぼく、病原菌じゃないよ?


「……っ!」


 杜若さんが、カッと目を見開いた。金剛力士像の眼力がフラッシュバックする。


「な、なに?」


 プレッシャーに押され、藤原がビクッと後ずさる。

 ……藤原、気持ちは分かるってばよ。でもアレ、沈痛な面持ちみたいよ?

 ――藤原さんに絶対おかしな奴と思われました。ショックです……


 ほらね? せやろ?

 藤原は何かを察したように、深いため息を吐いた。


「どうせ、大原が諸悪の根源でしょ。早く、謝りなさい」

「え?」

「杜若さん。こいつに嫌がらせを受けたのね」

「……っ!」


 杜若さんのリアクションを、藤原はイエスと受け取ったようで。


「詳しくは聞かない。きっと、人に知られたくないことでしょ。弱みに付け込むヘンタイは、あたしが始末しとくから」

「ちょ、待てよ! 俺が、人の弱みに付け込むような人間に」

「見える」


 レスポンス速いっす。5Gかしら?


「隣の席のよしみで出頭するの付き添ってあげる。感謝しなさい」

「いててっ、耳取れちゃう! 引っ張っちゃダメぇ~」

「……っ!」


 杜若さんが手を伸ばすものの、時すでに遅し。


「やぁ~~めてぇ~~~~」


 藤原に連行され、俺は教室を退出させられる。

 ――大原くんに無理やりやらされていません。自主的なトレーニングです!

 杜若さん。フォロー、ありがとう。

 でもそれ、俺にメッセージ送っても意味ないんじゃよ


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