半月物語、夢のあと
風がつよい街路樹の緑、まだ、夏のような陽射しに緑が少し疲れたようにしなっている
外套に照らされ揺れる木々の影はマントのように
奇妙に揺れる
半月が木々の間に座礁した舟のように浮ぶ
今宵、平家の夢物語から現れた侍が剣を光らせていた
一線に斬りつけられ割れ落ちた半月の
分身は何処へか
途方に暮れるような半月の舟に身を隠して
今宵は眠ろう
あの二国の水面下の
争いに挟まれる悲劇
それだけは嫌だと血を吐くほど嫌なんだと
途方に暮れるよりウンザリとした気持ちを
彼岸花の赤に灯しながら、
大真面目に、この赤をみつめた
一線を切るように離れてしまったが
雲間から現れた半月は池に映る揺れる半身を
みつけた
怪しくゆれる木々の葉は残緑
今宵半月に引かれた一線のように
斬りつけられた残月は地に落ち何処へか
あの池に映るは分身か
あの二国の、争いから逃れるように
残月刺さる胸に咲かせてみたい彼岸花
ひと息に、一線に、直線に、
今宵の半月、途方に暮れて、
切り落とした半身を、
さがして、、さがして、血を流す




