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千夜千夜叙事  作者: 安芸
第二話 君の名は
8/130

王と王弟と王子と書記官

 短め。

 すぐ次につなぎます。

 リウォードが王。

 リーハルトが王弟で宰相。 

 キースルイはリーハルトの書記官です。

 

 王子が王弟で宰相のリーハルト・ギルス・ディル・ラールシュティルダーの執務室をノックして入室したとき、そこにはリーハルトの書記官のキースルイ・ダーチェスターと、父王リウォードの三人が顔を揃えていた。


「なんだ、珍しい」

 

 と言ったのはリウォードで、王子は眼の端を吊り上げた。


「またさぼりですか」

「ちょっと休憩だ」

「父上」

「なんだ」

「仕事は山積み、父上以外のものは休日返上で働いているというのに、どうして父上だけ、そんなにのんびりと構えているんですか」

「皆が優秀だからなあ。私はそれほど必要あるまい」

「そんなわけがないでしょう」


 王子が父王を氷のまなざしで睥睨すると、リーハルトが助け船を出すように話を促した。


「なにかご用ですか、王子?」

 相変わらず、いつみても、薄気味悪いくらい卓越した美貌の宰相だ。

 王子は渋々糾弾を中断し、矛先を変えた。


「いや、リーハルト殿ではなく、キースルイ殿に頼みがあるのだ」

「――私に? はい……なんでしょう」

城下町カスバでひと捜しをしたいのだが、手伝ってはもらえないか? あ、いや、あなたに直接手伝ってもらわずともよいのだ、ただ、知恵か助言か人手を貸してほしい」

「……ひと捜し、ですか」

 

 王と宰相と書記官は黙って目配せを交わした。

 王子も黙っていた。

 ややあって、キースルイは簡易地図を描き、一言添えた紙を王子に手渡した。


「“アンビヴァレント”という店があります。受付に娘がおりますので、ご相談ください」

「すまぬ。恩にきる。ではな」

「お気をつけて」


 無愛想に頷いて、王子はさっさと退室した。

 が、すぐには扉を離れず、そっと聞き耳を立てた。


「……よろしいのですか?」

「よろしいもよろしくないも、親が成人した息子のなにに口を出すというのだ。ましてやひと捜しなどと、とぼけおってからに、しゃらくさい」

「会議が近くなって、黙っていられなくなったのだろうなあ。ほら、誰に似たのやら、あの子は我々と違い、真面目だから」

「むろん、私の息子なのだから、私に似たのだ。私が真面目だから、真面目なのだ。真面目でなにが悪い、この国では風化しかかっている美徳だろうが」

「は? 誰が真面目?」

「お二方、それ以上喧嘩腰にならないでくださいね。私、両成敗いたしますので。そうではなく、私が懸念申し上げているのは王子が“公主”を捜すことではない問題です」

「……ああ、それか」

「……ああ、それね……」


 王子は、「それ」がどれを指すのかわからなかった。

 そのまま会話は他にすり替わったので、すっきりしない気分のまま、やむなく王子はその場を離れた。

 それから支度をして、午後一番に、王子は“アンビヴァレント”の扉を叩いた。


 次話、王子とリアリが相まみえます。そこへラザの介入。

 ……黙。

 引き続きよろしくお願いいたします。

 安芸でした。

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