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千夜千夜叙事  作者: 安芸
第七話 前世
50/130

二者択一

 記念すべき50回掲載が、重い展開ですみません。

 あと、少しで前世編終了です。


 “方舟”では、千余名の“能力者”たちが全員失神していた。

 突如乱れた星脈の気流の煽りをまともに食らったのだ。

 中には精神を持っていかれてそのまま目覚めないものも多々いた。

 “力”の強弱に関係なく“力”の制御に長けているものがまず復活し、ふらふらしながらも、団結し、懸命に仲間たちを呼び返した。

 大衝突の瞬間、“方舟”はちょうど防御システムの試験中だった。

 “方舟”はもはや完成間近だった。

 あとは防御システム、遠隔制御装置、転移装置、機関動力部を稼働させ、問題がなければ、燃料タンクに星脈より抽出した星力を充填し、近々試験運用される予定だった。

 “方舟”は物理的衝撃にはびくともしなかった。

 耐震装置がはたらき、完璧に持ちこたえた。

 風雨にも雷にも耐えた。

 だが、星脈の気流が及ぼす波動を防ぐことはできなかった。

 

 逸早く正気に返ったのは千余名の“能力者”のうち、僅か二十二名の“超越者”たちだった。


「どうして!」


 操縦室の全方位スクリーン前で衛星から届く中継を“超越者”二十二名は見ていた。

 外の惨状は想像以上にひどく、一番先に眼を逸らしたマジュリットがゾルベットローに掴みかかった。


「予知見のおまえが知らないわけがあるまい! ナインツェール、貴様もだ。なぜ黙っていた。なぜ、なぜだ!」

「私が指示したのよ」

 

 応えたのはオルディハで、“方舟”の事実上の指揮官だった。


「ゾルベットローとナインツェールからは報告を受けていたわ。それにルキトロスとクアドラーンからもね」

「……過去見の二人になんの関係がある」

「今回の規模の災害がはじめてではなかったから。まだ大陸がひとつだった頃にはこのくらいの天災はごく当たり前だったのよ。ただ、人類という種がまだいなかっただけで」

「でもいまはいるでしょう。ごらんなさいよ、あの屍の山を。子供もお年寄りもいる――どこを見ても死体だらけじゃないの」

 

 静かに非難したのはミュルスリッテで、ジルフェイがあとを引き取った。


「はじめから、見殺しにするつもりだったのか?」

「私たちに、なにができたというの?」

 

 オルディハは自嘲気味に嗤った。

 そのやり場のない悲しみにみちた眼を見てマジュリットもミュルスリッテも、他のものたちも押し黙った。


「災厄はとめられなかった。警告は確かにできたでしょうけど、どこにも安全な地がないのではより深刻な混乱を招くだけよ。それよりも、このあとが大事だわ。ベルナンロッサ、お願い」

 

 オルディハの指名で、ベルナンロッサが艇内の施設掲示板を呼び出した。


「いま現在の状況を簡単に説明すると、この“方舟”にはおよそ一万人が五年食べていけるだけの貯蔵がある。備品も水も一応当面は賄える。ただ、燃料がない」

「“方舟”を動かさなければいい。どのみち機関動力部はまだ試運転すらしていないだろ」


 と横から口出ししたのはカッシュバウアーで、ゼレバーンスが相槌を打った。


「最悪、俺たちが“力”で転移させればいい」

「それはできない」


 かぶりを振ったのはゾルベットローで、オルディハは彼を抑えるしぐさをした。

 そこへローダルソンが新たに口をきった。


「なぁ、待てよ。さっきから聞いていればさ、ひとをここに収容するのが前提みたいだけど、おかしいだろ。あいつらがいままで俺たちになにをしてきたっていうんだ。ろくな目に遭ってないじゃないか」

「そうだヨ。別に、放っておけばいいヨ。僕たち関係ないネ」


 スレイノーンがあさっての方角を向く。


「一理あるな」と、サテュロス。

「博士は?」


 普段滅多に口をひらかないエドゥアルドが一同を眺めて呟いた。


「博士は別だろう。博士には恩がある。そういえば博士は?」


 急に泡をくってサテュロスが辺りを見回す。


「別室におられる。家族の方々もご一緒だ」

 

 ナディザードが答えると皆の顔が安堵に綻んだ。

 オルディハは浅く手を差し上げて皆の注意を集めた。


「そういう意見も出ることはわかっていたわ。だから皆に訊きたいの。私たちは血の繋がらない家族よ。だから、全員で話し合って決めて、決めたことには多少の不満があってもまとまりましょう。いま、端的に言って私たちの選択は二つ。このまま見放すか、助けるか」


 南極で大量の隕石が発見されたそうです。数千年から十万年前ぐらいのものときいて、物語とシンクロしちゃいました。

 引き続きよろしくお願いいたします。

 安芸でした。

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