終焉の前兆
とうとう最終話開始です。
ここからは、長短混合のエピソードが連なることかと思います。
全登場人物が錯綜します。どうか最後までおつきあいください。
エコーレ山上空にて――
赤い夕闇が迫る中、強風にものともせず、宙に佇む影があった。
二十一公主と呼ばれし者たちは――幾名かを欠いていたが――円陣を組んだ。互いに背中合わせの輪となり、腕を身体の横におろした楽な姿勢で、やや顎を引いて視線を下に、息を細く整えた。
「はじめるわ。用意はいい?」
訊いたのはオルディハで、
「おう」
「もっていかれるな」
「寒いヨ」
「つべこべ言わないで」
一斉に眼を閉じる。
“力”を解放、意識体は光の球となって“星脈”へと降下した。
到達したエコーレ山の地下深き底には、赤黒い溶岩がぶくぶくと沸騰し、時折勢いよく跳ねていた。
九千年前に施した封印は破られる寸前で、もはや手のつけようもない。
同じく封じた星脈も、星の気が限界にまで達していた。
破裂は時間の問題。
ほんの少しの衝撃で、大陸プレートも移動を開始するだろう。
更に海底火山の噴火も誘発、上空に熱が溜まれば、環境は劇的な変化を余儀なくされる。
なにか できることは ないのか
私の 僕の 俺の 我らの
力で――
星よ
星よ――
皆が力の制御を失いかけたそのときだった。
ある方角から、プレッシャーがかかった。
その反動を食らい、全員我に返るなり、引き戻された。
「……っはあっ」
「……は、は、は、は、っはあ」
「……くそっ、死ぬかと思ったぜ」
凄まじい疲労感に見舞われる。
浮いているのもやっとという状態だった。
しかし、それでも生還できたことは幸運だった。
あのまま、あと少しでも潜っていれば星脈に呑みこまれていただろう。
ただひとり、すっくと立ったまま、長い金色の髪を靡かせていたリアリが呟いた。
「皆、無事?」
オルディハがぐるりをみまわす。
「ええ、なんとか」
「危なかったわね」
「助かったわ。ありがとう、リュカオーン」
リアリはかぶりを振って、オルディハに手を差し伸べた。
「……もう、星の鼓動をとめることは、できない」
「そうね。私たちになにができるか、考えましょ」
二人は手を繋いで立ち、太陽が沈むのを見た。
残照が西の果てを華やかに彩り、滲み、消える。
それは儚くも美しい光。
最終話プロローグということで、短いです。
書き手の私自身、息がつまりそうです。緊張で死にそう。果たして、結末を無事に書ききれるのかどうか。これは自分との戦いかもしれません。
引き続きよろしくお願いいたします。
安芸でした。




