私だけが知らずに愛されて育てられていた。
「アルカ、カステッドと結婚をしないか?」
「えぇえっ?!カステッドって、カステッドのことですよね?」
「そうだ」
「弟とは結婚できないと思うのですけど・・・」
「今まで黙っていたが、アルカは私達の子供ではない」
「へっ?」
父の執務室に入り、座席の位置取りがおかしいと思っていた。
お父様とお母様とカステッドの三人が並んで座り、その正面に私一人だけが座っていることに、違和感を感じていた。
お父様はなんて言った?
私はお父様とお母様の子供じゃないって言った・・・。
「私は誰の子供なんですか?」
母がまるで、重罪でも打ち明けるような重々しい声で告白し始めた。
「わたくしの親友だったレウリータとジュンダンの子供なの」
私はコクリと吐息を一つ呑み込んで、母を見据える。
「だった・・・ってことは私の生みの親は死んでいるのですか?」
「ジュンダン、アルカの実の父親が視察に出かけた先で事故にあって、亡くなってしまったとき、レウリータ、アルカの生みの親のお腹にあなたがいたの。レウリータはあなたを生むと、そのまま帰らぬ人となってしまったの。残念なことに、ふたりとも早くに家族を亡くしていて、レウリータの遺言書に、私達夫婦にアルカの面倒を見て欲しいと書かれていたの」
「それで、私を引き取ってくれたということですか?」
「そうよ。私達は心からあなたを愛しているわ。手放したくないと思うほどに!!」
「ですが、今の今まで弟だと思っていたカステッドと結婚なんて・・・カステッドはどう思っているの?!」
「俺は・・・」
カステッドは俯いていた顔を私に合わせて、目を見つめてきた。
「アルカが嫌じゃないなら、結婚したいと思ってる」
信じられない言葉を聞いた気がした。
「もしかして兄弟じゃないって知っていたの?」
「ごめん・・・知ってた」
「ドンテックやシュレリーナは?」
お父様が答える。
「知っている」
「私だけが知らなかったの?」
「すまん・・・。そうだ。アルカは我が家に養子縁組されていない。あくまでも、ジュンダン・フォーガスタとレウリータの子供として預かっていただけなんだ」
「そんな・・・でも、私、アルカ・フルバートと名乗っていたわ」
「書類上では、アルカ・フォーガスタとなっている。学園も事情は知っている」
「うそ・・・」
他の兄弟と変わらずに愛されてきたと思っていたのは、違ったの?
「どうして私だけが知らないの?」
「アルカ以外は皆、学園の入学手続きを自分でしているから、戸籍謄本を見て、アルカが兄弟じゃないと知っている」
「それまでは本当の兄弟だと思っていた?」
カステッドは目を伏せ「ごめん」と謝った。
「他の兄弟と比べても似たところがなかったから、俺はもっと早くから知っていた」
そう、なのだ・・・。
私はお父様にもお母様にも似たところがどこもなかったのだ。
なんとなく隔世遺伝で、お祖父様やお祖母様に似ているのだと思っていた。
「私の両親のお墓はどこにあるの?」
「アルカの誕生日の後、いつも皆でお参りに行っていたお墓があるでしょう?そのお墓がアルカの実の両親のお墓よ」
毎年、私の誕生日が過ぎた頃にお参りに行っていた。お父様とお母様の友人のお墓だと言っていた・・・。
だから、私にも心込めてお参りするように言われてた・・・。
ヒントはそこら中にあったんだ。
ただ私が鈍感で気が付かなかっただけで・・・。
「私、ちょっと、混乱してて・・・部屋に行ってもいいですか?」
お母様が「ええ。いいわよ。でも忘れないで。私達はアルカを実の娘だと思って愛しているわ」
「あり、がと・・・」
私はノロノロと立ち上がり、部屋の扉を開けると、そこにはドンテックとシュレリーナが扉に耳を当てる姿勢で、居た。
慌てて立ち上がり「お姉様・・・」「姉上・・・」と言って、シュレリーナが抱きついてきた。
「お姉様は、私のお姉様よ!!」
私はシュレリーナの手をほどきながら「ありがとう」と言って、ふらふらと部屋へと向かった。
扉を締めて、タオルを用意して、ベッドに倒れ込み、枕で頭を押さえて、声を殺して泣いた。
なんで涙が出るのか解らなかったけど、次から次へと涙が溢れ出てきた。
夕食を誘うノックがされたけれど、食欲がなくて「いらない」と答えた。
暫く、部屋の前で立っている気配がしたけれど、私が反応を示さずにいると、立ち去った気配がした。
食事が終わった頃にまたノックされて「簡単に食べられるものを持ってきたわ」とお母様が部屋に入ってきた。
入らないでっ!と枕を投げつけようかと思ったけれど、この家は私の家ではないのだと、思い直した。
お母様が、母と父の馴れ初めや、結婚式の様子、私が出来たと知って、とても喜んでいたこと、父が死んで、母の落胆の酷かったこと、母は弱く、父が居ないと生きていけないタイプの人だったことなどを話してくれた。
お父様とお母様は結婚して一ヶ月も経たない内に私を預かることになって、本当に大変だったこと。
けれど、愛おしくて仕方なかったこと、勉強を頑張っていることを自慢に思っていること、とてもいい子に育ってくれて嬉しいことを私に伝えてくれた。
兄弟達が、私と兄弟じゃないと知った時、カステッドが喜んだこと、ドンテックは「姉上は姉上だ」と納得していたこと、シュレリーナは泣いて、手がつけられなかったことを聞かされた。
シュレリーナが知った時は、私が校外学習で一週間家を開けているときだったので、私が帰ってきた時には、元に戻っていたけど、ヒヤヒヤしたのだと教えてくれた。
「一番大事なことは、わたくしも、お父様も、カステッドもドンテックもシュレリーナも家族として愛していることよ」と私を抱きしめて伝えてくれた。
「ただ、カステッドは、アルカを違う意味で愛しているようなの。カステッドを弟としてしか見れないのなら、アルカの望む相手と結婚すればいいわ。でも、アルカの気持ちが落ち着いたら、少しだけカステッドのことを考えてあげて」
「わかった・・・考えてみる・・・」
「さぁ、お腹が空いていると考えが暗くなってしまうわ!!」
私の前に並んでいるのは、私の好物ばかりだった。
私はお母様のその気持が嬉しくて、また涙がボロボロと出てきて、しゃくり上げながら好物を口の中に次々と放り込んでいった。
一週間ほど経ってお父様が「少しは落ち着いたか?」と聞いてきた。
私は、正直なところ落ち着いては居なかったが「少しは・・・」と答えた。
「話しておかなければならない事がある」
私は父の正面に座り、腹をくくった。
「なんですか?」
「お前の父親であるジュンダン・フォーガスタは公爵家の人間だ」
「公爵?!」
「そうだ、今は、王家が預かってくれているが、アルカが成人したら、フォーガスタの家を継ぐのか、廃爵するのか決めなければならない」
「廃爵・・・」
「そうだ」
「伯爵家で育った私が、公爵家など無理ではないですか?」
「うちの子供達には全員公爵家でやっていけるだけの教育を与えてある。アルカの気持ちの切り替えの問題だけだ」
「私は出来るのならフォーガスタ家を継いであげて欲しいと思っている。後ろ盾は私達は勿論、王家も後ろ盾になってくれる」
「王家が?」
「血の繋がりはあるんだよ。公爵家だからな。ただ、直系ではないだけなんだ。レウリータの遺言書がなければ、アルカは王家で育てられただろう」
「それは・・・」
「王家で育てられるということは、味方が誰もなく、居るのは乳母と家庭教師とメイドだけという生活だっただろう。レウリータがそれを嫌がって、私達に預けたんだ」
「フォーガスタの血筋を教えてもらえますか?」
「二代前の陛下の姉の子供(嫡男)の子供(嫡男)がジュンダンだ。レウリータはガウスハーツ侯爵家の次女で、ガウスハーツは知っての通り、養子が継いでいるため、血が遠い。だが、血縁者ではある。一切関わろうとしなかったがな」
ガウスハーツ家は女系で、婿養子を何代か入れていたが、先代には子ができず、遠縁から養子を迎えて、その子が跡を継いでいた。
子といっても私より二十歳は年上になる。その養子が生んだ子が私より二つ下の学年に居るが、身内として扱われたことも、話しかけられたこともなかった。
「アルカにフォーガスタ家を継いで、婿養子を取ってほしいと思っている」
「私に公爵家の仕事ができるとは思いません・・・」
「それなりの婿を取ればい」
「そんな都合のいい人が居るのですか?」
「カステッドは、アルカが弟以上に見られるなら、いい相手だと思う。カステッドが駄目なら、ダンロップ侯爵家の四男か、ジュラルヴィー公爵家の次男の名が上がっている。王家としてはジュラルヴィーの次男がオススメだそうだ」
「万が一私がカステッドを選んだら、この家はどうするんですか?カステッドは嫡男でしょう?」
「ドンテックを育ててきているから気にしなくていい。それと、ドンテックがこの家を継げなかった時は婿に欲しいとエルマリト伯爵家の長女との縁談も持ち上がっているから、ドンテックのことも気にしなくていい」
「私の決断ひとつなのですね?」
「そうだ。決断は、早ければ早いほど、いい。今まで黙っていて何を言っているんだと思うだろうが、時間的余裕はあまりないと思ってくれ」
私はコクリと息を何度も呑んで、頷いた。
カステッドがお父様の執務室の前で腕を組んで私を待ち受けていた。
真正面から私を見据える。
「話がしたい」
私は頷いて、カステッドに付いて行った。
四阿に連れて行かれて、メイド達がお茶を入れてくれたら、スッと居なくなった。
「少しは落ち着いたか?」
「正直、よく解らない」
「そうか・・・。いきなり色々言われても混乱するよな。俺はもっと早く伝えろと言ったんだが、両親一日でも長くアルカの親で居たかったらしくて、先延ばしにしてきたんだ。だが、王家が口出ししてきて、もう余裕がなくなってしまったんだ」
「そう、だったのね・・・」
「俺と、一緒にベッドに入れるか考えてくれ」
直接的な言葉に私は赤くなるより、青くなった。
「カステッドとベッドに入る?弟だよ?!」
「無理か?」
解らない・・・。
だって弟だったんだもの・・・。
手首を掴まれ、引き寄せられ、唇と唇が触れる寸前でカステッドが止まって「キス出来るか?」と聞いてきた。
唇に息が触れて、震えが走った。
「カステッド・・・」
私が言葉を紡いだために、かすかに上唇が触れた。
私は飛び上がり、カステッドから距離を置こうとしたけれど、逃げた距離だけ、距離を詰められた。
「唇が触れてどう思った?今のは決してキスじゃない。唇が当たっただけだ。嫌だったか?」
兄弟でじゃれ合っていたときとは違う、男の顔をしてカステッドは私を追い詰める。
「本気で逃げろ!でないとキスするぞ」
そう言ったのに私は逃げられなくて、カステッドはそれ以上は近づいては来ない。
少し身を引くと、カステッドは私の手を離し、人一人分の距離を開けた。
カステッドは何気ない風を装って、お茶に口をつける。
「まず、考えろ。アルカの父親の公爵家を継ぐのか廃爵にするのか。それ以外のことは、それが決まってからのことになる」
「解った」
カステッドはお茶を飲み干し、立ち上がって私の背後に立ち、私の頭に口づけた。
「カステッドっ!!」
「俺を意識しろ。俺は男だ。弟じゃない。隙を見せるな。隙を見せたら、とって食うぞ!!」
カステッドの表情にはどこにも私を逃さないと考えているのが解る。
でも、そんな事急に言われても困る。と言いたかったが、カステッドはもう、離れて行ってしまっていた。
父に呼び出され、執務室へ訪れると、二通の釣り書が私の前に置かれた。
ダンロップ侯爵家の四男、ファルカのものと、ジュラルヴィー公爵家の次男、リアンカのものだった。
二人の顔と名前は知っていた。
何度か話しかけられたこともある。
話しかけられた時は上位の方に声を掛けられて、舞い上がっていたが、今考えたら、婚約者として見定められていたのかもしれない。
向こうにとっては公爵の配偶者になるのだ。
私に能力がなければ、取って代わることも可能なのだ。私は随分と美味しい相手だろう。
釣り書が目の前に置かれ「お見合いをすることが決まった」とお父様が重々しく言った。
「拒否権はないのですか?」
「公爵家を廃爵にするなら断れる」
父と母の墓参りをして、長い時間自問自答して、廃爵は避けたいと思った。
父達が残してくれたものを継いであげたいと思った。
「お会いしても嫌だったら断れますか?」
「当然だ。アルカが望まない相手など、私が受け入れられないっ!!」
お父様の怒った顔を見て、嬉しくなった。
「解りました。お会いします」
「公爵家を継ぐと決めたんだな?」
「私に出来るか不安ですが、父と母が残してくれたものを受け取りたいと思います」
「解った。では、その方向で話を進める。陛下も喜ばれるだろう」
「陛下が出てくる辺りで、自分とは関係ない話に思えてしまいます」
お父様は笑って「そうだな」と私の頭の上に手を置いて、ポンポンと撫でた。
翌日、カステッドが「見合いをすると聞いた」とまた四阿に誘われた。
「うん。父と母が残してくれた公爵家を継ぐことは決心した」
「そうか」
カステッドは眩しいものを見るように目を細めて私を見た。
その表情は、弟ではなく、男のものだった。
「俺と、ドンテックは同じか?」
「えっ?」
「俺もドンテックもアルカにとって同じ兄弟か?」
私は反射的に「違う」と答えていた。
「どう違うのか考えろ」
カステッドもドンテックも同じ弟だった。
けど今は同じ弟だとは思えない。
ドンテックがまだ幼いから?!
今度はカステッドに後頭部を片手で引き寄せられ、唇が触れる少し手前でまた止まり「ドキドキするか?」と聞かれた。
私の心臓は早鐘を打っていた。
頷くと「もっと俺を意識しろ。俺は男だ」と言って、かすかに唇を触れさせた。
唇を合わせたのではない。触れただけだ。
「これはまだキスじゃない。当たっただけだ。キスしてみるか?」と聞かれ、どうすればいいのか解らなかった。
「見合いで相手の男に今と同じことをされたらと想像してこい。それが受け入れられるのか?受け入れられないのか?感じてこい。でも、絶対に触れさせるな。手も触れ合わせるな。俺は許さないからな。解ったか?」
頷くとまた唇が当たった。
「悪い・・・我慢できない」
唇が重なった。
ゆっくりと離れる。
「これはキスだ」
私はまた頷いた。
私はカステッドを置き去りにして、ふらつきながら、部屋へと戻った。
キスをしてしまった・・・。
カステッドと。弟なのに・・・。
唇を押さえて、唇が重なった瞬間を忘れようとしたけど、重なった唇の柔らかさは消えて無くならなかった。
リアンカ・ジュラルヴィーとのお見合いで、手を差し出された時、カステッドの言葉がよみがえった。
けれど、エスコートの手を取らないわけにはいかなくて、その手を取った。
ただのエスコートなのに、それだけでカステッドに疚しい気持ちが湧き出てきた。
許さないと言われたからだろうか?
目の前のジュラルヴィー様とキスをする・・・?
それは嫌だっ!出来ないっ!!
それからは何を聞かれても、何を話していても疚しい気持ちに心が占領されてしまって、まともに受け答えできなかった。
どんな会話をしたのかも覚えていなかった。
予定より早い時間に別れることになり、ジュラルヴィー様が苦い顔をして「心ここにあらずだね。もう、会っては貰えそうにないね。アルカ嬢の心を占領しているのは誰なんだろうね?」と聞かれ、頭にカステッドの顔が思い浮かんだけれど、ジュラルヴィー様には答えられなかった。
屋敷に帰ると、門の前でカステッドが待っていて、馬車から降りる時、手を差し出してきた。
一瞬躊躇して、その手を取り、馬車から降りると「手を触れさせただろう?」
強い視線と口調で聞かれた。
私は後ろめたくて、部屋に逃げ帰りたかったが、四阿へ連れて行かれて、お茶の用意がされた。
メイド達がいなくなると、カステッドが重々しく口を開く。
「俺は許さないと言ったよな?」
私はビクッとして、首を縦に何度か振る。
「それなのに触らせたのか?!」
「エスコートだったし・・・」
「どっちの手だ?」
左手を差し出すと、指先にチュッとリップ音がするキスを落された。
瞬間に赤面した。
手をひこうとしたけれど、掴まれた手はカステッドに掴まえられたままで、また二人の距離が詰まって、唇が重なった。
角度を変え、何度も何度も。
唇をカステッドに舐められ、私は唇を押さえる。
その押さえた手を掴まれ、また唇が合わさり、角度を変え、舌が唇の中に入ってきた。
「カステッド・・・」
「嫌なら逃げろ」
私は嫌じゃなかったので、逃げなかった。
息が切れるほど長いキスをして、小さなリップ音がして唇が離れていった。
カステッドの唇から目が話せない。
艶めかしく濡れていて、カステッドに色気を感じた。
「まだ見合いをする気か?」
私は首を横に振った。
「俺は弟か?」
小首をかしげて、首を横に振った。
「俺とベッドに入れるか?」
真っ赤になって、私は小さく頷いた。
指を絡ませて手を繋いで、お父様の執務室へとカステッドに連れて行かれる。
お父様とお母様が何事か話していて、ノックすると、声が止み、入室を許可された。
「アルカの許可は得た。俺がアルカと結婚する」
お父様とお母様は私達の顔を何度も見比べ、繋いだ手を見て、お父様が立ち上がって私達の下にやって来て、繋いだ手を引き離した。
「なら、これからは適切な距離を持て。アルカに近づくことは許さん!!」
「そんなことはどうでもいいよ。もう一つのお見合いを断ってくれ。直ぐに婚約の届け出をしてくれ」
「それは、解った。だが、アルカとの適切な距離は保て!それが守れないなら、学園の寮に入れるぞっ!!」
「結婚式は俺の卒業と同時に執り行うように手配してくれ」
「カステッド!!私の話を聞きなさいっ!!」
「言いたいことは理解しているから、話を進めろっ!」
「カステッド、お父様にその口の聞き方はなりませんよ」
お母様がカステッドをたしなめるが、カステッドは気にもしていない。
「アルカ、本当にカステッドでいいのか?今日のお見合いは気乗りしなかったようだが、もう一人とも会ってみてから判断してもいいんじゃないか?」
「お父様、もう一人の方とお見合いをしても、結果は一緒だと思います。相手の方に失礼なだけなので、もうお見合いはしたくないと思います」
「そうか・・・本当にカステッドでいいのかい?」
「はい。カステッドを選びました」
お父様はガックリと肩を落として、お母様は「アルカを手放さなくていいのね!!」と喜んでいた。
ドンテックとシュレリーナもやって来て「お兄様!よくやりましたっ!!」と褒め称えていた。
お父様は王家からちょっとした嫌味を言われたようだが、私が公爵家を存続させることを選んだことで、カステッドを選んだことは許されたようだった。
カステッドより一年早く学園を卒業し、公爵としての教育を受けつつ、今まで公爵家が持っていたものを管理してくれていた方から返していただいた。
カステッドは今まで以上に勉強に身を入れるようになり、私は公爵をカステッドに任せてしまおうと画策している。
カステッドがあと三ヶ月で学園を卒業するという頃、公爵家が今の時代に見合った屋敷へと改装が終わった。
公爵家には父と母が仲良く並んだ絵が何点も保管されていて、初めて父と母、祖父と祖母の顔を知った。
母の日記も見つかって、そこには私を一人残して逝ってしまうことを謝る文面が散見された。
図書室にはフォーガスタ家の歴史が書かれている書物があった。
勉強の合間に少しずつ読み進めている。
祖父母の恋愛話なんかも書かれていて、この本の最新のページにはカステッドとの恥ずかしいあんな事も書かなくてはいけないのかと、一人頭を抱えた。
カステッドはお父様の言う事を聞く気はないのか、二人になる度に、私に恋の駆け引きを仕掛けてくる。
初心者の私は振り回されて翻弄されるがままだ。
私のウエディングドレスはお母様と、カステッドとシューレリーナの三人で話し合って決めた。
私は倹約思考が強すぎて、公爵家の花嫁として全然駄目と言われてしまった。
三人が私のために用意してくれたウエディングドレスを着て、父の腕に手を添えて、赤い絨毯の上を一緒に歩く。
私の親族席には、初めて会った王家の方々や、ガウスハーツ家が座っている。
これからはお付き合いしましょうとのことらしい。
今まで何もしなかったくせに何を。と内心思うものの、公爵家としては、必要な親族になるので、笑顔で受け入れている。
お父様と一歩一歩歩いて、一歩進むごとに、お父様は涙に暮れる。
前方に立つカステッドは呆れた顔をしながら、私を見て、頬を緩める。
弟としか思えなかったはずのカステッドはいつの間にか私よりも背が高くなり、幅も厚みもいつの間にかついていた。
大人の男になっている。
あの胸に抱きしめられることを想像して、何度赤面しただろうか。
そんなことを想像する日が来るなんて考えたこともなかった。
でも今は、そんな想像をしてしまう。
カステッドの温もりを恋しく思ってしまう。
私を生んでくれた父と母に感謝を。
私を育ててくれたお父様とお母様に心からの感謝を。
私を愛してくれたカステッドの手を取り、祭壇の前に二人、並び立つ。
二人で永遠の愛を誓った。




