第97話 姫さま、護衛騎士を探し回る
アダンに、目くらましの札と守りの札を、予備も含めて渡しておく。
「お任せください! なので、無事に戻ってきてくださいね!」
「うむ! アルジャンを救出し、ついでに魔王も倒してやる!」
アルジャンは生きてる。
だって、すごく強いもん。
ここに落ちただけなんだから、絶対にどっかにいるはずだし、なんなら魔王を倒しに向かってるんじゃないかって思う!
「ゆくぞ皆の者! しゅっぱーつ!」
あたしは張り切って進んだ。
しばらく歩くと、十字路がある。お部屋もたくさんあった。
アニキが顎を撫でる。
「……斥候がいねぇのがつらいな。下手したら迷って元の場所に帰れなくなるぞ」
そしたらバジルが言った。
「あ、大丈夫。クモコは地図を作成できるから」
あたしもアニキに教えてあげた。
「それに、私はすごい奴だから、迷ったりしないぞ? アルジャンよりも早く敵を見つけられるしな!」
アルジャンが前に、「姫さまは、姫さまでなかったらとても素晴らしい斥候になれたのかもしれないんですけどね」って言ってた!
「ほう。そりゃスゲェ。アルジャンはAランクのソロだから、斥候まがいも出来たはずだ。それの上をいくってことか」
あたしは胸を張って手で叩いた。
「安心するのだ! ……じゃあ、かたっぱしから部屋の中を見て、アルジャンが捕まってないか確認するぞ!」
そう言うと、部屋に入った。
部屋は壊れてた。
「……ここにはいないようだ」
あたしがつぶやくと、アニキたちも入ってきた。
「うわ、瓦礫じゃない」
「何か、爆発魔術で壊されたような……」
イディオが言ったので、あたしは気づいた。
「あ、そっか。浄化の玉を投げ入れたら、こんなんになるのかも」
「「「は?」」」
イディオとバジルとプリエがキョトンとしてる。
「浄化の玉、って、あの、魔王種に投げ込んでた、アレ?」
バジルが尋ねてきたのでうなずいた。
「そっか、爆発してたのかー。知らなかった」
「……爆発してぶっ壊すのを、浄化っていうのか?」
「……まぁ、それで出入り口が消滅しているんだし、きっと浄化なんでしょうね」
イディオとプリエがブツブツ言ってる。
「ま、いいんじゃねーか。全部破壊すんなら手っ取り早い浄化だ。じゃ、行こうぜ。ここにはいねぇ」
アニキがうながして、またゾロゾロと他の部屋を見た。
あちこち覗いてわかったのは、けっこう破壊されてるってこと。
おにいたち、がんばってるみたい。
あと、真っ暗な部屋があった。
プリエが明るくする魔術で部屋を照らすと、一部分が大きく切断されている。
「……もしかして、アルジャンがやったか?」
アニキのつぶやきに、あたしはビクッとしてしまった。
「太刀筋が、アルジャンに似ている。……いよいよ、生きてる可能性が高いな。ま、アルジャンの実力なら生きてる可能性のほうが高いよな」
あたしは飛び上がりたいほどうれしくなった。
アルジャンが、生きてる!
そんでもって、ここをぶっ壊そうとしてるんだ!
「次にいくぞ! アルジャンに会えるかも!」
アニキの腕を引っぱると、アニキが、「ちょっと待て」とあたしを止めた。
アニキは、片隅にある白い布を見た。
アニキは手ぶりであたしたちに『ここにいるように』と留めて、白い布に近づいた。
そして、布をソーッとめくる。
そのまま固まった。
どうしたのかと思って覗いたら……。
「あ、それ! アルジャンと一緒に落ちた、魔王の眷属だぞ!」
「「「「えっ!?」」」」
みんなが驚いた。
「アルジャンはいないから、やっぱり倒したんだ。さすがだな、アルジャンは!」
あたしがそう話したら、アニキがつぶやいた。
「……眷属じゃねぇ……」
あたしは首をかしげた。
「眷属だぞ? アルジャンと私を攻撃してきた。でもって、アルジャンを連れ去ろうとして、アルジャンがそれをどうにか止めて、今度は私を連れ去ろうとして、アルジャンが止めて、揉み合って一緒に落ちたんだ」
そう言ったら、アニキは壁を叩いたのでビックリした。
「……コイツは、俺の、パーティの、仲間だ!」
アニキがそんなことを言った。
それで思い出した。
「……そういえばアルジャンが、ロランスとサロメとか話しかけてたような?」
眷属に名前を付けたんだって思ってたけど、違ったのか。
「……で、なんて答えてた?」
アニキが聞いてきたので首を横に振る。
「魔王の眷属は、変な鳴き声しか出さない。会話出来ないぞ」
「そんなワケねぇ! コイツは俺の仲間だ!」
アニキがさらに言おうとしたら、バジルが遮った。
「いや、ソレ本当だから。俺も戦ったことあるけど、もう、表現しがたい声で鳴くだけだよ。……そもそも、長生きできる体の造りをしてないよ。内臓がほとんど抜き取られてる」
アニキがコッチを見た。
リノールもおずおずとアニキに話した。
「ぼ、僕も戦ったことがあります。……人とは思えない声でした。それと……人の血の色をしていません。なんかすごい色の体液が、ドロって」
バジルもあたしも、リノールの言葉にうなずいた。




