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【書籍発売中】やんちゃ姫さまの大冒険 うちの第三王女、冒険者になるってよ(web版)  作者: サエトミユウ
8章 姫さま、魔王に突撃したってよ

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第96話 姫さま、子分に勇者の武器を渡す

 馬車で突っ込んだ先は、王宮でもこんなにピカピカしてないんじゃないかな? ってくらい、ピカピカの床と壁の場所だった。

『光よ、この世を照らし、私に道しるべを与えよ』

 子分(プリエ)が魔術を唱えると、暗かった部屋が明るくなる。


 馬車から降りて、辺りを見回した。

「おう、アダンとか言ったな。ここで待機しててくれないか? あと、馬車の向きを変えて、いつでも帰れるようにしといてくれ」

「はいっ!」

 アニキがアダンに指示を飛ばすと、元気よく返事をした。


「結界の魔術をかけるから、安心して。誰かがやってきて攻撃されても、しばらくは保つと思う」

「プリエ様、ありがとうございます。僕も魔術は多少腕に覚えがありますので、迎撃出来ます。お馬さんにも立派な馬車にも、傷はつけさせません!」


 一緒に御者台に乗ってずっと馬の話ばっかりしてたコイツ(アダン)は、すごく馬が好きらしい。

「馬は、いっぱい攻撃を受けたら死んじゃうけど、多少なら身代わり人形があるから平気だぞ!」

 あたしはそう言うと、子分たちにマジックバッグを渡した。

「お前らの分だ! さっき慌てて作ったから、ちょっとしかないけど、人形の数くらいなら攻撃を受けても平気だからな! アニキのはがんばってたくさん作ったから、励めよ!」

 アニキがプッと笑う。


 イディオはハラハラした目でアニキを見た。

「……アニキ。こんなんでも、王族です、姫さまです」

「いや悪い。では、ありがたく拝受いたします」

 アニキが受け取った。


「んーと、アルジャンが、アニキはなんでも使えるって言ったけど、なんか武器いるか?」

 アニキが考え込んだ。

「……大剣以外は取り戻したからな……。大剣はあるのか?」

 あたしは首をかしげる。

「……あったっけな……」


 アイテムボックスをゴソゴソ探ったら、出てきた!

「うん! あったぞ! 〝破壊の大剣〟だ! めっちゃ重いから気をつけ……あわわ」

 取り出そうとしたら重くて持てなかった。

 そしたらアニキが素早くつかんで引き出す。

「おー! すげーのが出てきたな! こりゃ、前に持ってたのよか数段上だぞ! アレだってそうとう高かったんだけどな」

 持てるみたいだから、オッケーだ。

 あたしは腰に手を当ててウンウンとうなずく。


「パシアン、……いえ、パシアン姫。もしよければ、私……いや、俺にも魔術師用の杖をいただけませんか? 持ってはいるのですが、本来剣士として戦うつもりで、予備の杖しか持ってないのです。……あと、プリエにもお願いします。プリエは……恐らく、勇者の供の子孫かと思われるのですが……」


 イディオが恐る恐る、って感じで尋ねてきた。


「ん? わかった! ……そっか、お前は魔術師だったのか。剣を鍛えてもしょーがなかったんだな」

 剣士だと思って、棒で叩いちゃった。


「えーと、ちょっと待て……あ、あった。まずはプリエだ。勇者の供が使ってた〝快癒の杖〟だぞ」

 なんか、光魔術の効果を倍増させるとか、絵本が言ってたような言ってなかったような。


「え!? ホントにあるの!? ……え、ええと、謹んで拝受いたします……」

 プリエがプルプルと小刻みに震えながら杖を受け取った。


「あとは……イディオか。うーん、普通のしかないぞ」

「いや、普通のでいいですから。今ある予備の杖だと心許ないというか、実戦向きではないというか」


 うーん。でも、せっかくだから……あ。

「いいのがあった! これだ!」

 イディオの頭に被せた。


「ちょ! なんだコレは!?」

「それはすごいぞ! 無詠唱で魔術が飛ばせるんだぞ!」


「……うわ、キモ」

 イディオが引きつったプリエの顔を見て、慌てて被せた勇者の武器を取ろうとした。


「ちょ! 脱げない!?」

「なんで取ろうとするんだ!? ……アルジャンに被せたかったんだけど、アルジャンは魔術が使えないから諦めたんだ。イディオが魔術師だとは知らなくて、剣術を鍛えようとして悪かったな。お詫びにそれを貸し与えてやる。勇者の武器の一つ、〝叫ぶ兜〟だ」


 あたしは謝った。ちゃんと謝れてえらいですね、ってアルジャンならほめてくれる。


「〝叫ぶ兜〟!? つまり、口が付いてるってことか!?」

「……口だけじゃないわね。目があっちこっちについてて……うわ、キモ! ギョロギョロ動くのよ……。しかも口がデカい。そうとうキモいわ。私に近づかないでね」

 プリエが武器の解説をした。


「パシアン!? もしかして婚約破棄した腹いせか!?」

 なぜかイディオが泣きそうなんだけど。

「? なんだそれは。お詫びって言っただろ。使いたい魔術を思い浮かべれば、その武器が判断して魔術を吐いてくれるのだ! 便利だろ!」


 エヘン。あたしが威張ると、イディオは膝から崩れた。


 アニキがイディオに諭すように話す。

「……まぁ、いいじゃねぇか。お前が望んだんだ。実際、これでかなり強力になっただろ? Bランクの魔術師くらいにはなったんじゃねぇか? 威力は無くても無詠唱ならAに近いぞ」

「頭から魔術を放つ魔術師なんていませんよね!?」

「「気にするな!」」

 あたしとアニキは声をそろえて言い、同時に親指を突き出した。


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2024年9月5日 ドラゴンノベルスより発売
やんちゃ姫さまの大冒険 うちの第三王女、冒険者になるってよ


著者: サエトミユウ / イラスト:きんし

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