第84話 護衛騎士、一縷の望みが絶たれる
※本日、「やんちゃ姫さまの大冒険 うちの第三王女、冒険者になるってよ」が発売されました!!!!
大幅加筆を行いました。また、webとはちょっと展開が変わっている箇所もあります。
書店特典SSはメロンブックス様とゲーマーズ様になります!
ぜひとも、ぜひともご購入の検討をお願いいたします……! 2巻出したい~!!
勇者の供であったが、道具を返還したもう一人の錬金術師。
その者に会おうとしたのだが……残念ながら、その者は生涯独身で、弟子も取らなかったため後継が絶たれている、というのが調査で判明した。
姫さまは初代勇者の話をよく知っていて、
「たぶん子孫はいないと思うけど、念のためだ。彼は、初代勇者に『自分は結婚しないしこの技術を誰かに教えるつもりもない。この技術は、魔王を封印した今では無意味どころか害になるからだ。きっと、貴族どもが私利私欲のための戦争に使うに決まっている。だから伝えることはしないし、どんな目に遭わされようと作ることも教えることもない』って言い切って別れたそうなんだ」
って語った。
……そんな危険な魔道具をこしらえてたの?
俺は頭をかく。
「……んー……。正直、魔道具ですらない剣だって、使いようによっては危険極まりないんですけどね」
俺がそう言うと、姫さまが小首をかしげて俺を見た。
「この魔法銃を作ったのがソイツだそうだ。他にも、いくつかの勇者の道具を勇者とともに作ったみたいだぞ」
「ははぁ」
魔法銃は、まぁ、非力な姫さまにも使える便利な魔道具ですけどね。
「羽もですか?」
「これは勇者だ」
ファンシーなのは勇者なのかな?
俺は鼻に皺を寄せながら尋ねた。
「…………ちなみに、ヒュドラは?」
「バジルの先祖と勇者の合作だ!」
「シャーッ!」
バジルの先祖め~!
作るなら、姫さまの持つ武器みたいなの作れよ!
あと、姫さまの武器を作った錬金術師よ。そこまで危険極まりないシロモノってワケでもないぞ。思い込みだ。Aランク冒険者なら、あの程度の攻撃ははじき返せるし、魔術師ならもっと凶悪な魔術が使えるから。
ただ、まぁ、方便かもしれないな。もう、武器を作りたくなかったんだろう。
あるいは貴族に恨みがあって、作らされないように予防線を張ったのかもしれない。
どちらにしろ、もうその技術は失われ、勇者の供の子孫はいない。
「と、いうことだ! アルジャン、戦力増強で、バジルの先祖が作った他の武器、いるか?」
「いりません!」
即答で拒否った。
*
ギルドに寄り、最近の動向を尋ねた。
……離宮を出てからもう半年近く経つ。
各地で魔王の眷属が出没し、冒険者に死傷者や行方不明者が出始めていた。
騎士団も魔術を使える者や斥候を募集して、第二王子、第三王子がそれぞれ先頭に立って討伐に当たっているそうだ。
他の王族も、「魔王種が見つかった」という連絡が入りしだい、そこへ向かって浄化しているという。
――いやこれ、姫さまの魔王封印が、どう考えても事態の収束に一番手っ取り早いだろう?
なのに、俺と姫さまは魔王の眷属の情報が入るとそこへ向かって倒してくれと頼まれる。
状況が状況だからしかたないって思うんだが……。
「今度は東の山中で出たらしい。……アルジャン、聞いてるか?」
ギルドマスターに問われて、俺は大きなため息をついた。
「聞いてない。……それよりも、こちらに向かってるはずの連中はどこまで来ているんだ?」
後手後手というよりも、事態の収束を考えてないやり方に、俺はだんだんと苛立ちを感じてきてしまった。
ギルドに寄るのは、即戦力となるアニキ、バジル、リノール、回復魔術に期待しているプリエ嬢、おまけのイディオ様に自分たちの居場所を知らせるためだ。
着々とこちらに近づいているようなので、俺としても騎士団からの増援を期待できない以上、アニキたちとの合流を早めにしたい。
ところがギルドに寄ると、「魔王の眷属を倒してほしい」と依頼を頼まれ、あちこち移動することになるのでなかなか合流出来ないでいるのだ。
「あー……。そこそこ来てんじゃねーか? それより、東の山中だ。頼むぜ、勇者の供」
軽く流され肩を叩かれるので、思わず睨む。
そうするとギルドマスターは、ばつが悪そうな顔でそそくさと行ってしまった。




