第61話 護衛騎士、触手が生え、姫さま、羽が生える
コロナに感染してしまい、さらには後遺症が出てしまいました。
初コロナだったんですが、思ったよりも酷くなかった(一時期アレルギーが酷くなり死にかけた時よりはマシだった)けれど、後遺症が嫌ですね……。
私は今後、切らさず予防接種を受けることにするのを固く決意しました。
みなさまもお気を付けください。
……と、姫さまが何やら俺の腕を引っ張り、手首に巻き付けた。
「姫さま?」
なんだこれ?
「騎士としてはかっこ良くないが、それよりお前が死なないことが大事だ! これは、勇者の武器の一つ、〝考える鞭〟だ! これがあれば、魔術弾とか弾くし、慣れてくれば攻撃もできるぞ!」
「えええ……」
巻き付けられたものを見たら……うわ! 気持ち悪!
「ひひひ姫さま? これ、大丈夫なんですか!?」
臓物みたいな見た目なんだけど!?
ぬめりがあるのかてらてら光ってるし!
「大丈夫、だと思うぞ? かつて勇者の供が使ってた武器の一つだ」
こんなん使ってた奴がいるのかよ! 嘘だろ!?
つかこれ、ホントに武器なの!? 寄生型魔物じゃないの!?
不安しかない武器をつけさせられて、じっと見たら……!?!
「姫さま!? コイツ、口があるんですけど!? しかも今、笑った!」
先端に裂け目があるなと思ったら、それがパックリ割れてギザギザした歯が見えたよ!
「だからどうした。武器に口があってもいいだろう。強いのは間違いないんだ」
確かにそうだよ! 俺が使うんじゃなければな!
「あぁ〜……。なんでこんな目に……」
お供を増やしてもらえれば、普通の剣士としていられたのに……。
俺が嘆いていたら、姫さまと触手が憤った。
「こんな目とはなんだ! 勇者の武器は強いんだぞ! そんなに強くない奴がたくさん集まるより、勇者の武器でお前がやっつけたほうが倒せるんだー!」
「シャーッ!」
うわ、鳴いた。絶対鳴いたよ今!
「姫さま? ホントにコレ武器なんですか!? 寄生型魔物ですよね!?」
「往生際が悪いぞ! 武器だ!!」
姫さまに叱られた。
さて。
いろいろ諦めた俺は開き直った。
「殺ってやるぞオラァ!」
「うむ! その意気だ!」
姫さまが嬉しそう。
俺は目が据わったまま、姫さまを振り返った。
ビビる姫さま。
「な、なんだ?」
「姫さまの守りに不安があります。私にはどうやら守備と中距離攻撃の手段が出来たようですが、姫さまはまだ弱いですよね? 前回は鼻血程度で済みましたが、今回もそれで済むとは思えません。姫さまも、勇者の防具で身を固めてください!!」
俺が勢い込んで言ったら、姫さまはさらに引いた。
「う、うむ……。……なんかあったかな……」
「なかったら、こちらの触手をお返しいたします」
「ちょっと待て。探している最中だ!」
姫さまが急にゴソゴソと探し出した。
「うーん、これかな……。衝撃緩和の羽だ。何かにぶつかる前に衝撃を緩和する。ぶつかる攻撃が出来なくなるが、その代わりあらゆる衝撃から守ってくれるな。あと、ちょっとだけ飛べる」
ちっちゃな虹色の羽を取り出した。
見た目は妖精の羽だな。
「……姫さまには蝙蝠型の羽のほうが似合いそうですけどね」
悪魔の羽だな。
「どうせ私からは見えないんだからなんでもいい! ホラ、つけろ!」
「はいはい」
年頃になったらおしゃれに目覚めてくれるのかなぁと願いつつ、姫さまの背中に小さな羽をつけた。
お、けっこうかわいいな。
つけたのがわかったのか、姫さまが羽をパタパタ動かし……浮いた!
「おぉ! 浮きましたね」
姫さまは得意そうにパタパタ羽を動かし……うん、移動はしているが、歩いたほうが早いな。
「アルジャン! 引っ張れ!」
「はいはい」
自力だと遅いので、人力に頼りだしたよ。
 




