第107話 プリエ・ルミエールの旅~その後の話と嫌な話
みなさまごきげんよう。
私、プリエ・ルミエール伯爵です。
男爵家令嬢から、一時平民、次期男爵家当主、そしてとうとう伯爵家当主になりました。
報告の後、いったん王宮に留まることになった私たち。
王様たちが緊急会議の後、「今代の勇者一行が、とうとう魔王の討伐に成功した」という発表を、全世界に発布したのよ。
各国から代表がうちの国に来て、私たちは王城の段に並べられ、謝辞を述べられ、それをにこやかに受ける……みたいなことをやらされたり、パレードさせられたり、とにかくすごく大変だったわ……。
姫さまとイディオは慣れている感じなんだけど……。あ、アニキも「窮屈だ」って言いながらも慣れている様子だったかな。
アダンは逃げ出しそうだったのを捕まえたわよ! 一蓮托生! 嫌がっていたけど最後まで馭者を全うしたんだから、一緒にいるべきよ!
おとぼけ騎士のアルジャンは、引きつった笑顔ながらもがんばっていたわね。しかたないわよね、彼、勇者サマですし!
バジルって錬金術師も嫌がってたけど、途中から女の子ににこやかに手を振り出したわ。
そんな中、私とリノールって子だけが隅っこで縮こまっていた。
ここで驚きの事実が発覚したのよ!
来賓にエルフの王族が来たんだけど……アダンを見て驚愕し、
「アダン! お前……!」
逃げようとしたアダンを捕獲したわ。
――アイツ、王族だったのよ。第三王子だってさ!
本人、王族なんて柄じゃないし動物の飼育をしたいって駄々をこね、廃嫡してくれと置き手紙をして出奔したらしい。
うちの国の近くの村に正体を隠して住んでいたけど魔物に滅ぼされたっていうので、そこの話は事実らしいんだけど……。
結果的には魔王討伐の旅に随従し一役買ったことになったので、むしろエルフ国の王族としての面目躍如だったという。
そして、望んでいる褒賞は『ずっと動物の世話をしていたい』だ。
……非常に不本意な結果だけど、エルフ国としては許すしかないらしい。
アダン、泣いて喜んでいた。キモかった。
そして、エルフの王族のアダンが馭者をして、パレードしたワケよ……。
あ、話し合いの結果、王家の馭者をやることになったみたい。
何やらパシアン姫と話し合って決めたらしいわよ?
その後、みんなと別れてから私だけは王宮でしばらく過ごすことになった。
伯爵領を整えてくれているため、待機中なのよ。
なんでも伯爵邸を私がそのまま使えるようにしてくれていて、あと、侍女やら使用人やらも用意してくれるんですって! 全部、王家のお金で!
正確には、元伯爵の慰謝料らしいけどねー。
……それで思い出した!
クソ野郎もといジャステ元伯爵のバカボンボンが、言いがかり&求婚してきた件について。
「悪女は私と結婚したいがために伯爵家を乗っ取った」
「その卑劣な所業は許しがたいが、深く反省し父を釈放し母を呼び戻せば、結婚してやらなくもない」
「ただし、家の中で大人しくすること、自分に絶対服従し、イエスのみ言うこと」
「絶対に他の男に色目を使うな」
等々が綴られている手紙を送ってきて、さらには王宮へ乗り込んできたらしいのだ!
そもそも、奴はもう貴族ではない。
奴の祖母の実家にお情けで拾われて、貴族の下地があるので計算はできるだろうと関係する商会の事務要員として働いていたのに、魔王討伐で私がジャステ元伯爵の土地を賜りプリエ・ルミエール伯爵になったという噂を聞いて、そんな寝言を大声でほざいて遠路はるばるやってきたっていうのよ。バカじゃないの?
もちろん、頼りになる第二王子に手紙を見せて処分をお願いしたわ。
言っておくけど私、あの戦いではけっこう役だったんだからね!
この旅で急成長を遂げた結界魔術と治癒魔術を、全員にずーっと使い続けていたんだから!
姫さまが身代わり人形ってのを用意していたけど、全損してるからね! 残りは私がやったんだから、私が!
*
第二王子は私の意図を汲んで、クソ野郎をキッチリ処分してくれた。
まず、平民が貴族に無礼を働いたということで牢屋へ放り込み、その後第二王子自らが牢屋へ足を運んで、クソ野郎に説教をかましたのよ。
「貴様は平民だ。たとえ過去どうであれ、今の地位で判断される。それが理解できるか? できないのなら即処刑する。……一般的な平民の処刑法は、磔のち、槍で腹を突き刺すだったかな。貴族の処刑のように、毒杯や首を斬る、などということはないぞ」
第二王子の開口一番のこの言葉で、クソ野郎は一瞬にしておとなしくなった。
小さくなったクソ野郎を見下ろしながら第二王子が再び口を開いた。
「……さて。理解したようなので続ける。貴様は今代の勇者の供であり魔王討伐に一役も二役も買ったプリエ・ルミエール伯爵に無礼を働いた。貴族の時代も役立たず、平民になってからもたいした役に立っていない貴様が、なんの権利があって英雄の一人であるプリエ・ルミエール伯爵にあのような無礼な手紙を出したのだ?」
クソ野郎はそれには答えず、逆に第二王子に尋ねた。
「……彼女はなぜ、貴方に手紙を見せたのですか? ……そして、私の手紙になんと言っていましたか?」
「『非常に腹立たしい上に気持ち悪いので処分してほしいのだが、どうすればいいか』と尋ねられた。私がやってやろうかと言ったら、『ぜひともお願いします』と頼まれた」
クソ野郎は絶句し、口を開けて呆ける。
第二王子は、いっそ憐れむような顔と声音でクソ野郎を諭す。
「貴様はどうやら彼女に懸想しているようだが、ならば罵詈雑言を浴びせかけるのではなく献身的に尽くし、魔王討伐に赴いた彼女を支えるべきだったな。……もし、貴様が魔王討伐で貢献していたのなら、彼女には別の褒賞が与えられたであろうし、貴様がジャステ伯爵当主となり、領の復興を王家が支援したであろうに」
それを聞いたクソ野郎は衝撃を受け、目を見開いて第二王子を見た。
「……あ……」
第二王子はフッと冷笑する。
「もう遅い。貴様は恋い慕う相手に罵詈雑言を浴びせるろくでもない男で、身分差もわきまえずに功績のある勇者の供を不快にさせる手紙を送りつけた平民だ。……確か貴様の父親は、平民が無礼を働いたら拷問の上処刑していたが、同じ刑罰を望むか?」
クソ野郎が怯え、平伏した。
「……申し訳ありません……! 心から反省しました! もう二度と失礼な真似はいたしません!」
第二王子がため息をついた。
「……ようやくその言葉が出たか。貴様の父親は最期まで理解できなかったようだがな。……処罰は追って渡す。私自らがここに来て平民である貴様と直接会話したのは、世界中の悲願である魔王討伐を達成した勇者の供に無礼を働いた貴様にわからせるためだ。貴様は理由もなく彼女を下に見ているが、勇者の供の子孫である彼女は、男爵令嬢ではあったが伯爵よりも上だ。さらには今代勇者の供でもある。彼女が望むのなら王族との婚姻も可能なのだぞ。――わかるか? 貴様が下に見て無礼な口をきいていい相手ではないのだ!」
第二王子が怒鳴り、クソ野郎は子どものように口を開けて号泣した。
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本日、やんちゃ姫さまの大冒険のコミカライズ4話前半が、ニコニコ漫画とカドコミwebに掲載されております!




