第105話 護衛騎士、後始末をする
男に案内させ、自慢させては破壊、案内させ自慢させては破壊、を繰り返した。
男はむせび泣き頭を掻きむしるが、それでもおしゃべりドリンクの効果で機密をしゃべりまくる。
男が集めた昔の資料なんかは、ハナコが火炎放射で焚書した。
「ハナコ、お前、意外とやるじゃんか!」
「何もしていないのに、そちらの剣のせいで半壊になりましたけどね」
……って、嫌みを言われた。
最後に、大元の装置を破壊する。
俺とアニキの剣でバッキバキに壊した後、姫さまが腕につけたアームキャノンと呼ばれる筒状の魔力砲を何発も撃つ。
トドメとばかりに、姫さまから譲ってもらった浄化の玉を何個か投げつけた。
装置は完全に瓦礫となり、男は呆然と座り込んでいる。
レイスが、別の場所にあるという『魔王』と俺たちが呼んでいた〝固定された向こうへ通じる穴〟が消えたかどうかを確かめに飛んでいき、ほどなくして戻ってきた。
「うん、『魔王』は綺麗さっぱり消滅した、とのことです!」
リノールの報告に、わぁっとプリエ様がバンザイし、姫さまに『魔力充塡の腕輪』をつけてもらい意識を取り戻したイディオ様もホッとした顔になる。
「よし、帰るか」
アニキが言ったので、最後の最後、俺や姫さまたちが通ってきた穴へ向かった。
男に案内してもらう途中で、バジルがクモコとともに囚われの連中を待機している馬車へ運んで救出するというので分かれたのだが、バジルは女性を嬉々として抱き上げ、クモコは損傷がひどかったが運べる程度には動けるとのことで、残りを運んでいたのだ。
最後に残った穴の手前で、バジルが伸びている。
「なんとか終わったッス〜」
くたびれた感じだが目だけがイキイキと輝いているバジルに苦笑しつつ、
「ご苦労さま。疲れただろうから、馬車の中で休んでてくれ。あとはもう帰るだけだ」
と返した。
馭者が待機していたのに驚いた。
しかもこの馭者、穴に飛び込んで姫さまたちを運んできたという。
おまけに囚われの連中を運び出すため、すでに何往復かしているんだってよ……。
スゲーな、むしろ馭者のほうが勇者だろ。
俺が飛び込んだの、間違いなく事故だぞ。
「お前らも全員乗ってろ。最後の仕事をしたら、すぐ帰るからよ」
アニキが促す。
俺は、アニキが最後に何をするのか察したが、何も言わずに皆を促した。
「姫さま、浄化の玉ってまだありますよね?」
「うん、まだ三つあるぞ!」
それは良かった。
ま、なくてもおにいたちが持ってるらしいから連絡して持ってきてもらえば済む話だけどね。
俺は姫さまの持っている浄化の玉を確認し、馬車に乗るよう姫さまをうながしたが……姫さまはアニキと男を見ていて動かなかった。
姫さまも思うところがあるのかもしれない。
アニキは、男に向かって静かに語る。
「――初代勇者の頃から、魔王討伐は俺らの世界の悲願だったんだろうけどな……。正直、俺は興味がなかった。俺の両腕は、俺の手の届く範囲を守れりゃ良かったんだよ。……だが、ここにきて、お前のおかげで、俺も魔王討伐に参加出来て、達成出来そうで、ホンットーに良かったって心から思えたよ」
男はアニキの言葉が理解出来ないようで、キョトンとした顔になった。
「……魔王? なんのことだ?」
アニキは、いっそ慈愛の表情で男に笑いかけた。
「お前の事さ。人の形をしながら人とは思えない残虐な行為を平気で行う、人の道から外れた人でなしをそう言うんだ。……さらばだ、魔王」
言い終わると、アニキは思いきり大剣を水平に振った。
男の顔が一瞬ではじけ飛んだ。
「……アニキ、ほらよ」
アニキに濡れ布巾を投げた。
「……ありがとよ」
アニキは涙ごと被った血を拭った。
姫さまは動じず、男の死体をアイテムボックスに放り込んだよ。
……ホント、さすがだよなぁ。
「じゃ、帰るか」
「そうですね」
姫さま、俺、最後にアニキが乗り込むと、
「じゃあ、発車しまーす」
馭者がのんびりした声でかけ声をかけ、馬を走らせて穴へ入っていった。
*
馬車が元の場所に出ると、全員がいったん降りた。
見慣れてないけど見慣れた景色を拝めて、感無量だよ俺は。
拝啓、妹よ。兄ちゃんは絶対に死んだと思ったんだけど、なんかまだ生きてます。
大きく深呼吸をすると、俺は姫さまに一礼した。
「では、姫さま。お願いいたします」
「うむ!」
姫さまは、浄化の玉を取り出し、最後の穴に放り込む。
魔王種と呼ばれたどこかの世界とつながる穴は、一瞬震えた後、消え去る。
「悲願達成だぞ、初代勇者」
俺は絵本に話しかけたが、答えは返ってこなかった。
終わりが近づいてまいりました。
完結まであと少しです!
本日、姫さまの大冒険の第3話前半が公開されております!
ニコニコ漫画ORカドコミweb版です!
よろしくお願いします~。




