第102話 姫さま、護衛騎士を見つけ、護衛騎士、ようやく合流する
絵本に案内してもらって、アルジャンのところへ急ぐ。
「早く、早く」
「姫さま、焦るな。アルジャンはそう簡単にやられねーよ」
だって、会いたいんだもん!
小走りで急ぐと、絵本はとあるドアを示した。
『あの奥だ』
「アルジャン!」
飛び込もうとしたら、アニキに襟首を掴まれた。
「ちょい待ち、姫さま。斥候だとしても、安易に飛び込むな。――俺が行く」
さらにそれをリノールが止めた。
「待ってください! 様子を見るなら、僕がレイスを飛ばしますよ!」
リノールがそう言って、レイスを召喚した。
「みんな! 様子を見てきて!」
レイスは壁を抜けてった。
……と思ったら、すぐに戻ってきた。
なんか、慌ててる様子。
「えーっと……。え!? アルジャンさんが危ないみたいです!」
あたしは驚いて、必死に飛び込もうとしたけど、アニキが離さない。
「離せ!」
暴れるけど、アニキにはぜんぜん効かない。
「だーかーら、俺が行くから、待てって。――イディオ、リノール、魔術をすぐ放てるように準備してくれ」
「押忍!」
「はい!」
「アニキさん、結界の魔術をかけておきます!」
プリエが詠唱して、アニキに結界をかける。
「あんがとよ。じゃ、俺が切り開くから後からついてこい」
そう言うなり、アニキがドアを蹴飛ばして飛び込んだ。
「うわぁあああああ!」
アルジャンが叫びながらこっちに走ってきていた。
追っかけてるのは……なんか、すっごくデッカい異形だった。
*
こちら、現場のアルジャンです。
結界を破壊し、錬金術師らしき男をぶった切ろうとした寸前――
異形を造る装置が内側から破壊されたので飛び退いた。
錬金術師らしい男は、破壊された衝撃で反対側に吹っ飛んでしまい、距離が開いてしまった。
チッ……最悪なパターンになったな。
さっき押し込められていた人物が、異形になってしまった。
しかも……様子がおかしい。
いや、様子がおかしくなりつつある。
ボコボコと筋肉が盛り上がり、体が大きくなっていくのだ。
「うわー……。参ったな」
いや、斬り捨てるしか方法がないんだけどね。
コイツには悪いが、どうせもとには戻れないだろう。
いっそ斬り捨ててやったほうが、コイツのためにもなるはずだ。
そう考えながら近づき、剣を振りかぶろうとしたが……。
「うげ! 早すぎるだろ!」
途中から加速したようにデカくなっていった。
呑み込まれそうになったので、慌てて後退する。
「……ヤベぇな」
前に見た、アルミュールウルスよりもデカい。
天井に頭がつきそうじゃん。
ここの天井、そうとう高いのにさ。
ドラゴンに匹敵しそうなくらいになってきたぞー。
「逃げ場のない、狭い部屋の中……ちょっと不利じゃね?」
狭い場所は、相手も不利だろうが俺もそうとう不利だ。
攻撃を避けるスペースがないのだから。
「……一時撤退!」
廊下の曲がり角に潜んで殺るしかない!
「■■■■■■!!」
異形が壁を揺らすほどの大声で叫ぶ。
「うわぁあああああ!」
慌てて走り出したら、進行方向にアニキがいた!
「アニキ!?」
「おう、アルジャン生きてたか。……つーか、デカいな」
「この場所は不利だ!」
「言うて廊下だって不利だろうがよ。……足止めする」
アニキが異形に向かって走り出し、以前持ってたのよりも凶悪そうな大剣を振って、異形の足を斬りつけた。
足が吹っ飛び、異形が転んだ。
俺は逃げるのをやめ、感心してアニキを見る。
「さすがだな! ……って、オイ、マジかよ!?」
再生しやがった!
「めんどくせぇな……」
アニキがつぶやく。
「再生が止まるまで切り刻むしかない……って、姫さま!? なんで来たんですか!?」
ふと見たら、姫さまがいるし!
「もちろん、アルジャンを助けにきたのだ!」
エヘン、といった感じでいばる姫さま。
「いやいや、戻ってくださいよ! 危ないでしょうが! 姫さまは勇者――」
『いや、今代の勇者はお前だ、アルジャン』
絵本がなんか抜かした。
「はァ!? 俺、アンタの血なんか受け継いでないぞ!?」
「血は関係ないだろう。私は勇者と成ったが、それは結果からだ。今、結果を出しているのはお前だ、アルジャン」
やめて!
なんの結果も出してませんし!
「……とにかく! 全員でコイツを倒して、とっとと奥に行かないとマズい! この異形を造った錬金術師をどうにかしねーと、また被害が出る! コイツが暴れて、ソイツが奥に吹っ飛ばされちまったんだよ!」
アニキの目がギラリと光った。
「……つまり、ソイツがロランスとサロメを異形に変えたのか?」
あ。
アニキ、死体を見たのか。
「…………そうだ。そして、異形になった二人を殺したのは俺だ」
アニキに告げると、アニキが無理やりな感じで笑顔を浮かべる。
「しょうがねぇさ。理性を忘れ、体も作り替えられて、こんな状態になったら俺だって殺してほしいわ」
そう言って、襲いかかる異形を大剣でいなす。
「そう言ってもらえるとありがたいよ……。俺、『どうにか生かしといてほしかった』って言われても無理だったから。殺すか殺されるかだったし」
だって、強すぎるんだもん。
「そりゃ、俺のパーティメンバーだからな。……ハッ! やる気が出てきたぜ! とっととコイツを倒して、奥にいる野郎を引きずり出してやるわ! アルジャン、お前には悪いが俺がソイツをもらうぜ」
「いや、全然悪くないし、そもそも俺、いらないから。勝手に持ってってくれよ」
俺としちゃ、怨みはギルマス連中のほうが深い。
異形が、おかしなくらいにデカくなった拳をアニキに叩きつけようとするが、アニキは大剣を盾にして防ぐ。
しかも、結界が張られているのか? 煌めいているんですけど!
「プリエ! お前はもっと下がれ!」
「下がりたいけど、これ以上は無理ー!」
「じゃあ、僕のスケルトンで囲みます! レイスは動きを阻害してきて!」
「俺らは上から攻撃しよっか。クモコ、上に上げてくれる?」
「承知しました」
「私も上から攻撃するぞ! ハナコ、私を連れていくのだ!」
「うわー、嫌な予感しかしませんけど。……ハァ。承知しましたー」
バジルと姫さまは上から隠れて攻撃するようだ。
俺とアニキは囮だな。
派手に動き、こちらに意識を向けさせる。
「よっしゃあ! かかってこいやゴラァ!」
気合いを入れる。
……けど、あんまり派手に攻撃しないでね! 俺、アニキと違って盾がないから!
【お知らせ】
なんと!
このたび、コミックフラッパー様で拙作『やんちゃ姫さまの大冒険』がコミカライズされることになりました!
作画は高原めぐり先生!
何冊もコミカライズを手がけているベテランの先生です!
アルジャンが苦労性イケメンに、姫さまはラブリーに描かれていて、原作よりもコミカルさがパワーアップしておりますー!
本日からカドコミとニコニコ漫画で公開中ですので、ぜひともよろしくお願いいたします……!
URLなどは近況報告に載せておきますね~。




