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確認の大切さを身をもって知りました

「リリエール様、本日はご予定がお有になりますか?」


「フランシス…いいえ。何もありませんわ。」


「でしたら、いつも朝食をとっていましたカフェが新作のケーキを売り始めましたの。宜しければ本日いかがでしょうか。」


「ええ、ぜひに。」


フランシスに誘われ授業後にカフェに行く事にしました。最近気分が落ち込んでいましたのでフランシスには救われましたわ。

ナターリアは本日は早めに家に帰らなければならないそうで後日にとも思いましたがフランシスに押され二人で行く事となりました。


「こちらが…新作のケーキですの。」


「見た目も美しく、とても美味しそうですね。」


目の前に置かれたオレンジで彩られたのはツヤ感のあるケーキ。爽やかな香りと相まってとても美味しそうです。

フォークを取りケーキに沈めれば、抵抗もなくとても柔らかな事が分かります。


「…美味しい。」


「ふふっ、本日ご一緒出来て良かったです。久しぶりにリリエール様の笑顔を見る事ができましたもの。」


「フランシス……心配をかけてしまいましたね。」


「私では、お気持ちを軽くする事は叶いませんか?」


優しいフランシスの言葉が嬉しくはありましたが、この気持ちを外に出してしまう事が恐い…。


「ありがとう…。少し今後について悩んでいただけですの。」


「そうでしたか。」


「フランシスは縁談をお受けしたのでしたね。順調ですか?」


「はい。お相手の方には良くしていただいております。婚約となりましても結婚は三四年後となりそうですが、その間に学ぶ事は多くありそうですので。」


「そう…。順調そうで何よりですわ。」


(コンコンコン)


「ご歓談中失礼致します。お連れ様がお見えになりました。」


「お連れ様…?」


「リリエール様、申し訳ございません。実は諸用で早々に帰らなくてならなくなりまして、ごゆっくりしていただけるようもう一方お呼びしたのです。」


「失礼します。」


この…声は……。


「遅くなりまし…た……。」


「クランディッド様、お待ちしておりました。それでは、私は失礼致します。お二人はごゆっくりどうぞ。」


「あ、あのフランシス…。」


呼び止めてもフランシスは振り返らずに部屋を出てしまいました。

ハーバイン様は立ったままで私にお声をかけて下さいません。


「…お、お座りになられますか?…フランシスも帰ってしまいましたし私も…。」


「いえ、座らせてもらいます。」


ハーバイン様が椅子に腰をかけると新しいティーセットが用意されました。

支度を終えると給仕の方は部屋を出られ私とハーバイン様が残されました。


「…お久しぶりです。お変ありませんか?」


「私は何も…。リリエール嬢は……。」


「私も、何も……。」


会話がぎこちないので緊張が増して来てしまいます。今までの私はどの様に接し何を話してきたのでしょう。


「以前…叶わぬ想いを抱いているとお話した事を覚えてますか?」


「え……は、はい。」


「実は、想いを寄せているご令嬢が相手と縁がなかったとなり…この想いを隠す必要が無くなったから縁談を申し込んだんだ。」


「え……ん…だん……。」


何故、まだ私は心の整理が出来ていないのに。このような話を聞く余裕など無いのに…。まだ、まだ私の恋を無くしたくは無いのに…。


「ハーバイン様…申し訳ございません…体調が優れず…失礼させていただきますっ!」


「待ってくれっ!」


「手を…手を話して下さい。」


「離せば君は席を立ってしまう。私は……本当は分かっているんだ。直ぐに受けてくれなかったのだから望みは無いと、保留にされているのでは無く断る理由を、探されているのだと。

だけど…だからそこ、君に直接…断って欲しい……。」


「断…る…?なにを……。」


「何って…私からの縁談を断るつもりなんじゃ…。」


「えん……だん?」


混乱しすぎて頭がまわりません。私、落ち着いて。し、深呼吸しましょう深呼吸…あ、あれ……意識が…。


「リリエール嬢っ!リリエール嬢っ?!」






「ん……ここは…。」


「…気がついたかい?」


「ハーバ…ハーバイン様っ!」


「急に起き上がらないでくれ。ここは私の家の馬車の中だ。君の馬車は家に帰したよ。

カフェの閉店時間になっても気を失ったままだったから私の馬車で休んでもらっていたんだ。医者にはみせて気を失っているだけとも言われたからね。」


「申し訳ございません!お、お騒がせ致しました…。」


「無事ならいいんだ。…少し話せるかな。確認がしたいんだ。」


ゆっくり、一つ一つハーバイン様の質問に答えていくと私は勘違いだらけだと言うことが分かり、ハーバイン様は私の様子を見てクスりと笑いました。


「まさか気持ちが伝わっていなかったどころか縁談を申し込んだ事すら知らなかったとはね…。」


「も、申し訳ございません……。」


「叶わぬ想いを寄せているという話は君の顔を見ながらしたし、日頃の態度にも出ていたと思っていたのだけれど…。」


「あ、あの…………弁明の余地もございません…。」


「縁談だって、婚約者候補から外れたら即出して貰えるようにしたのに…。」


もう、情けなくて涙が溢れてしまいそうですわ。私が勝手に勘違いをしてハーバイン様を傷つけて、私自身も傷ついて何をしているのでしょう。情けなくてハーバイン様のお顔を見ることが出来ません。


「リリエール嬢はとても鈍感なようだからもう少し直接的な態度を取らなくてはいけないのかな…。」



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