一枚も二枚も上手の方
「ごきげんよう。ハーバイン様、お呼び立てしてしまい申し訳ございません。」
「リリエール嬢、貴女はいつでも美しいね。私を頼っていただき嬉しく思います。正式な辞令をもぎ取ってきたから殿下に文句は言わせないよ。」
ハーバイン様を学園にお迎えできたのは学園長とお話をした一週間後。
始業の時間前にお越しになると連絡をいただき、登校してから正門でお待ちしておりましたが朝からとても爽やかな風を感じました。
しかし、殿下の元で何があるか…。
「ハーバイン・クランディッド、本日より学園内にてマルクレール殿下のお側に付かせていただきます。」
「いらんっ!即刻帰れっ!!」
「申し訳ございません。これは正式な任務ゆえ殿下に拒否権はございません。」
「私に逆らう気か?!」
「いえ、殿下が陛下に逆らっておいでです。私の任務は最終的に陛下が可決されたもの、殿下がそれを反故にしようとするならば陛下に逆らった事となりましょう。」
「~~~っ。ぶ、部外者はここに居られないはずだっ!」
「恐れながら学園長の了承もあります。」
「くっ……か、勝手にしろっ!」
殿下がこのように引かれる姿を見られるなど思いもよりませんでしたわ。
やはりハーバイン様をお呼びした事は間違いなかったようです。
「貴様も早く立ち去れっ!」
「…失礼致します。」
ハーバイン様と一瞬目が合いウィンクされてしまいました。少し心臓に悪いので控えていただきたいものです。
※
「お疲れ様でございました。」
終業後、借りている個室にハーバイン様を招き四人で顔合わせを兼ねてお茶会をします。
「ハーバイン様、右がサウマ侯爵家のフランシス、左がスノウェル侯爵家のナターリアですわ。」
「お初にお目にかかります。以後お見知り置き下さい。」
「ナターリアと申します。宜しくお願い致します。」
「ハーバイン・クランディッドと申します。状況はリリエール嬢より聞いております。本日よりマルクレール殿下の側に控えておりますので、どうぞ安心して学園生活をお過ごし下さい。」
「ハーバイン様は以前、殿下に剣術の指南をしてらした事がお有なの。」
「側妃様が必要無いと言い、陛下がそれを受け入れたから短期ではあったけれどね。
まぁ、何を勘違いしたのかその時に側妃様は気に入らない教師を一斉解雇してしまったから今殿下はCクラスになんているんだよ。君達はSクラスに所属しているとリリエール嬢から聞いたよ。優秀な後輩と交流できて嬉しいよ。
」
「そ、そんな…クランディッド様は三年間Sクラス首席で卒業されたと伺っております。こ、こちらこそ光栄すぎて…。」
お茶会の話題は必然的にマルクレール殿下や学園での事が中心になり、とても有意義な時間を過ごせました。
翌日、任務を終えたハーバイン様と馬車の前でお会いした際、側妃様がハーバイン様の任を解くように陛下に懇願されたと聞きました。陛下からお言葉すら無く、側妃様が大変荒れていらっしゃるそうです。
「側妃様や殿下からお誘いがあったら同席するから知らせるんだよ。」
「そこまでお手を煩わせる訳には……。」
「陛下からも許可をいただいてから大丈夫。逆に知らせてくれなければ陛下の温情を無下にする事に…。」
「………………賜りました。」
ハーバイン様には勝てる気が致しません。
私もハーバイン様のように大きな懐と行動力があれば色々と違った結果を得られたのかもしれませんが…いえ、今からでも遅い事はありませんわ。
「ハーバイン様、私もっと精進致しますわ。」
「リリエール嬢はすでにとても頑張っているよ。だからもっと私を頼って欲しいところかな。」
「……私を甘やかさないで下さいませ。」
「甘やかすというのはだね、こういう事をいうのだよ。」
「え?」
お口の中が……甘い…。
「女性に人気の砂糖菓子で金平糖というものです。気に入りましたか?」
こ、金平糖の甘さか引き寄せられた驚きか唇に触れた指の感覚か分かりませんが声が…声がでません。
「ふふっ。私も素晴らしい褒美をいただいたようだ。そのお顔を他の男に見せたくはないので馬車に乗りましょう。」
流れてるようにエスコートされ、気がつけば馬車は既に発車しておりました。顔の熱が馬車から降りる前に引いて安心しました。
言い訳ができませんもの……。