サウマ侯爵の使用人事情②
俺の名前はアドル。サウマ侯爵で従僕をやってる。
ここには二種類の使用人がいる。
通常ルートで募集をかけて雇われた奴とお嬢様に拾われた奴。俺は拾われた方。七歳からだから今年で九年目になる。
孤児で、街でスリをして生活をしていた俺はお忍びで来てたお嬢様のブローチを狙って捕まって、色々覚悟したのに何故か使用人として雇われた。
最初は意味が分からなくて、禊の時は罰を与える為だったんだと思ったけど直ぐにそうじゃなかったって気づいたんだ。だって誰も俺を叩いたり嫌な目で見たりしないから。
今では拾ってくれたお嬢様の為に頑張ってる。だけど…今、少し気になる事…気に奴ができた。
新しくお嬢様が拾ってきた親子。立ち振る舞いからきっと貴族だった人達。その娘が何だか気になってつい目で追ってるんだ…。
だってドジすぎて見てられないんだぜ?皿もコップも落としそうになるわ水の入ったバケツはつまづいてひっくり返しそうになるし俺が見てなかったら大惨事だろ。
「もっと自分の力量を見極めて持てよ。」
「わ、分かっているわ。慣れないだけでしょ!」
ちょっとツンツンしてるけど見た目が可愛いからか全然怖くない。
禊の時に言ってたんだけど、こいつはお嬢様の婚約者に言い寄ったらしい。俺が言えた事じゃないけどよく生きてたよな。しかも使用人として働くって、相変わらずお嬢様は優しいというかなんと言うか…。
「そんなに自分に自信があったのかよ。ブース!」
自分でも無いと思うけど、禊の時に何でかそう口にしながら水をかけた。他の奴らはもっとマシな事言ってた気がする。そんな事言ったからか最初から凄く睨まれたし口調も俺には少しキツイきがする。なのに気になる。嫌いとは思わない。
※
「明後日のランディス殿下のご訪問で給仕を二人にやってもらいます。これはお嬢様がお決めになった事です。」
「「え?」」
理解が追いつかない。俺は殿下と面識も無いしお嬢様から名前を呼ばれた事すらない。主な仕事は郵便の仕分けとかお嬢様に関わる事が無いものばかりだし、なんで急に…考えられるのはこいつか……。
「わ、私には無理ですっ!」
「これは決定事項です。覆る事はありません。」
「でも……。」
「私も控えて二人をサポートします。ですが、今のままでは二人してランディス殿下に失礼を働く可能がありますから今から三人で特訓します。」
「「今から?!」」
「お嬢様に恥をかかせる事があってはなりません。アドル、残りの仕事から明後日までは別の者に仕事を頼みなさい。」
「わ、分かりました。」
「ではアドルは引き継ぎが終わり次第ここに戻ってきなさい。それまでは二人で特訓です。」
「は、はい……。」
セバさんが間違いを起こすとは思えないけど、部屋に二人にはしたくない…。
言葉にはしなかったけどセバさんの視線がサッサと行ってこいと言っている。仕方なく部屋を出た後は早歩きで仲間のところに向かって最速で二人の元に戻ったけど、瞬時にドアを閉めて部屋から離れたくなった。
「アドル、早かったですね。しかし入室の仕方が優雅ではありません。もう一度入る所からです。」
「…はい。」
「はいでは無く、かしこまりました。」
「…かしこまりました。」
「発する言葉も制限しなくてはいけないようです。」
これ、いつ解放されるんだろ……。




