サウマ侯爵家の使用人事情①
私はサウマ侯爵の使用人に纏めるセバと申します。侯爵に勤め始めてから四十年、先代様の頃よりお世話になり今だ必要として下さる皆様の為に誠心誠意勤お仕えしております。
本日、お嬢様より使用人にすると三名紹介されました。親子のようでお嬢様からはお客様の目にとまらぬ配置にせよと言われ、この爺は察しました。
お嬢様はよく人を拾って来られます。それもご自身に無礼を働いた者ばかり。この者達もその類なのでしょう。
二度とそのような事の無きよう、今度もしっかり教育せねばなりません。
三名を使用人全員に紹介する為に仕事を始める前の朝礼で前に立たせます。
ハウスメイドと従僕として働かせる事にはしましたが、その前に大切な事があります。
「お嬢様から紹介された貴方々にまずして頂くのは懺悔です。どういった経緯で使用人となったのでしょう。」
本人の口からきちんと言わせるのは大切な事です。その言葉で侯爵家への敵意等も読み取ることができますので。
しかし、この三人には後悔と感謝の心は有れど敵意は無いようです。特別指導が必要無いようで良かった。
「では禊を致しましょう。」
屋敷を汚してはいけないので裏口の前に移動し皆で三人に水をかけていきます。侯爵にお仕えしている使用人は五十名を超えますが全員で励ましの言葉をかけながら行うのがルールです。
「さぁ、本日より貴方々は私達の仲間です。誠心誠意、侯爵にお仕えするように。」
お嬢様のお心に応えられるようしっかり教育して参りましょう。
※
新しい使用人に迎えてからひと月が経ちました。
母親と父親、二人は問題無く与えられた仕事をこなしていますが…娘は少し不器用なようです。
掃除、給仕、裁縫、何をさせても何かが起きるとはもはや才能でしょうか。大きな被害が出ていないのは従僕のアドルが注意して見ておりサポートしているからに過ぎません。
アドルが見ている理由は淡い春という名の私情のようですので頂けませんが、自分の仕事はこなしていますし正直助かっているので見逃す事とします。
「新しい使用人達はどう?」
「よくやっております。」
「そう…お客様の前には出さぬようにと言ってありましたが今度ランディス殿下が来られた際に給仕をさせて欲しいのだけれど、できる?あ、それとアドルという従僕も共に。」
「…かしこまりました。ご訪問はいつの予定でしょうか。」
「明後日の昼ね。」
さて、あの娘が失敗しないような給仕とは何でしょうか。本日一日聞き込みと観察をして考えましょう。
意図を考える事よりも優先しなければいけない事です。下手をすれば誰かかの首が無くなるのですから…。




