少しくらいは許して欲しい
「明日、国に戻ります。」
「そうですか…お疲れ様でした。」
「ハルソン公爵令嬢。巻き込んでしまい申し訳ございませんでした。」
あの騒動から二週間経ちました。
騒動の後、シリルマリン様は国に帰ることを許されず、辺境にあるリンデ王国とモルトン国の共同管理地に送られました。驚いたのはシリルマリン様のお母君、そのご両親、そしてマルクレール様と側妃様も共に共同管理地に送られた事。
騒動から五日ほどで馬車が用意されたのですから驚きを隠せませんでした。
そして、本日。様々な後処理の為に残っていらっしゃったメメナリス様は帰国される事になりご挨拶に我が家に来て下さいました。
「申し訳ないと思うならば二度とこのような事が無いように願いたい。おかげでリリエールとの時間がどれ程無駄になったか…。」
「ハーバイン様、メメナリス様のせいではありませんのに…。」
「いいえ、一端は私にありますので。ところでクランティッド様、私は昨日貴方様とはお別れを済ませたと思っておりましたが?」
「可愛い婚約者と男性を二人きりになんてできないさ。」
「溺愛されてますね(しつこい男は嫌われますよ)。」
「しない理由がないでしょう?」
二人共ニコニコしてらっしゃるのですが、何処か圧力があります。やはり殿方同士通ずるものがあるのでしょうか…。
「…ハルソン公爵令嬢、私は…いや、もし、貴女が困ったら何時でも言って下さい。必ずお助けします。例えどのような事でも全力でお力になります。」
「まぁ!メメナリス様、ありがとうございます。とても心強いですわ。私も、メメナリス様がお困りの時は微力ながらお力になります。」
「それは、とても嬉しいです。私の事はどうぞバルドラとお呼び下さい。本当はもっと早くからそう呼んでいただきたかったのですが、変に目をつけられてもいけませんでしたから…。」
「バルドラ様、お気遣いありがとうございます。私の事もリリエールとお呼びくださいませ。」
「リリエール様…。」
「はい。」
「口に出来てとても光栄です。春の女神のような貴女様にとてもお似合いの愛らしいお名前ですね。」
「そうでしょう!私の婚約者は女神のような存在ですからねっ!」
「…貴方に言っていませんが?本当に心の狭い方だ。」
「…なんとでも。」
※
バルドラ様との別れの挨拶が終わり、ハーバイン様と二人になると何だか少し気が抜けてしまいました。
「リリエール、今回は全然傍に居てあげられなくて…むぐっ。」
両手でハーバイン様のお口を塞ぐと、ハーバイン様は目を真ん丸にして普段見る事の無い可愛らしい表情を見せて下さいます。
「謝罪はいりません。私もハーバイン様を頼らずにと思っていましたもの。…だってハーバイン様は初見でシリルマリン様に見初められていたのです。ランディス殿下のように付きまとわれたら…嫌です。」
まさに被害にあったフランシスには申し訳ない気持ちはありますが、私もハーバイン様に近づかれたら気が気ではありませんもの。
「…リリエール。それはずるい。」
「ん?!ふぁ…。」
ハーバイン様の顔が近いと思った瞬間にはもう唇が重なっていて…柔らかさと息苦しさと心臓の音と……吐息と…もう…。
「んっ…。」
「リリエール…可愛い。もう少し…。」
何分、何十分そうしていたかは分からなくて…力も入らなくて…気がつけば唇が離れ、ハーバイン様に肩を抱かれボーッとささていました。
「今のリリエールにはやりすぎたね。もっとリリエールを知りたいから…なれてていこうね。」
「あ、あの…。」
「…もう一回、したいな…。」
耳元で囁かれた後、また唇に柔らかさを感じて…またフワフワしてきて…何だか…。
「はぁ…ヤバ…可愛い。リリエール…。」
(コンコンコン)
「ハッ。」
「…お嬢様、旦那様がクランディッド様をお呼びです。」
「…お、おとう……さま…?」
「くっ…。」
「クランディッド様にお越しいただけない場合は抱えてでもと言われておりますが。」
「…今いきます。リリエールは少し楽にしているよいいよ。」
ソファの背に私の身体を預けハーバイン様は部屋を出られました。少しずつ…頭の中がハッキリしてきます。先程までの事が頭の中でぐるぐるとして恥ずかしくて熱くてもう…私は…私は…どんな顔でハーバイン様を見れば……。
けれど、その後ハーバイン様は戻って来られず。緊急の用でそのまま帰られたそうです。安心したような…寂しいような…次にお会いする時までに頑張って普通に出来るようにしなくてはいけません。




