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その行動は許されないのです


(コンコンコン)


「どうぞ。」


学園長室に入ると窓の外を眺めておられた学園長が振り向かれました。現場に向かう前に一度寄っていますのでそのお顔に驚きはありません。


「どうにか終息したようですな。先ずは皆さんかけて。」


学園長に促され二脚の三人がけソファに分かれて座ります。学園長はご自分のチェアに腰を掛けられ、皆様私が女性な事を気にされて私は一人で一つのソファを占領しています。

メメナリス様は座られず他の方に席をお譲りになられたので私の隣りをすすめましたが座る事は出来ませんとお断りされてしまいました。


「私の不手際により、多大なるご迷惑をおかけ致しまして申し訳ございませんでした。」


「頭を上げて、話をお聞かせ下さるかな。」


メメナリス様、教師のお二人、私の順にお話し、この大騒動がどう起こったのか全貌が見えてきました。


発端はシリルマリン殿下がメメナリス様の隙をついてお一人で馬車に乗り馬車を出発させた事。


本来ならば学園の門で騎士様が合流するので学園内でもシリルマリン殿下がお一人という事は無いはずが、学園に着いた馬車にシリルマリン殿下の姿が無く、騎士様は街に探しに行ってしまった。


そしてその間にシリルマリン殿下が学園に歩いて来られた。これは学園長室に一緒に来ていただいた女教師のメリマン先生が校舎の中から目撃しておりました。


その後は少し間が空き、メリマン先生と学園長室に一緒に来ていただいた男性教師のグルーペ先生を含めた教師の数名と警備の方々が駆けつけた時には数名の生徒がシリルマリン殿下の周りで倒れており校医が介抱しながら怪我人を運んでいるところで、手に鞭を持った興奮状態のシリルマリン殿下から何とか鞭を取り上げた所に私達が来たようです。


これ以上詳しくは被害にあった生徒やご本人からお話を聞く必要がありますが直ぐには無理ですわね。


「シリルマリン殿下は常に鞭を?」


「一応王族なので護身用で潜ませていたものかと。あの様な方ですから刃物は持たせられず苦肉の策と父から聞いてます。」


「なるほど…。」


「事情聴取は学園(こちら)で宜しいかな?」


「もちろんです。ただ私も立ち会って宜しいでしょうか。」


「それは構いません。」


「私も立ち会わせていただけますか?少々質問もしたい事もあります。」


「分かりました。」






「こんな事して、ただて済むなんて思わないでっ!」


「王女殿下、余計な事は口にしないで下さい。」


メリマン先生とグルーペ先生には通常の業務に戻っていただき、メメナリス様に騎士様と御者を連れて来ていただいた後で私とシリルマリン殿下を学園長室にお連れました。ナターリアを含めた見張りをお願いしていた方にはフランシスを手伝って貰うようにお願いしましたが、終わり次第順次元の生活に戻って貰うようにも伝えてあります。


「私が至らなかったばかりに申し訳ありませんっ!」


「騎士殿、頭を上げて下され。御者の方も。」


騎士様と御者は来ていただいてはおりますが聞ける事は多くはありません。

ただ、シリルマリン殿下がハンカチをわざと飛ばしたのは恐らく、拾わせた隙に馬車から降りる為と推測されます。


シリルマリン殿下は素直にお話いただける程甘くはなく睨みつけてくるばかり。困りましたわ…。


「…乙女の秘密の花園…。」


「…ハッ。」


「私の心は水のようにキラキラ…。」


「「「「ん?」」」」


「~ッ!!お、お前っ!!」


「どうかされましたか?…あっ、ふと頭をよぎった(王女殿下の恥ずかしい創作物に書かれた)言葉が口から漏れてしまったようです。申し訳ございません。」


メメナリス様は無表情でシリルマリン殿下の刺すような視線を受け止めています。数秒二人が見つめあった後、シリルマリン殿下は悔しそうな顔で顔を背けました。


「王女殿下、質問するので(秘密をバラされたくなければ)答えていただけますか?」


「くっ…何よ…。」


「先ずは何故このような事を?」


「そんなの鬱陶しかったからに決まっているでしょう。常に付きまとうお前も、そこの騎士も、私が好意を示してあげているのに無視する無礼者も、羽虫のようにわく女も全部気に入らないっ!もうこんなところいいわっ!!国に帰るから早くコレを解きなさいっ!!!」


「では、この国に来てからのモルトン国の名を貶める行動の数々をお認めになりますか?具体的にはパーティーで騒ぎを起こした件、他の方の馬車を取り上げようとした件、婚約者の居る方々への過剰なスキンシップや失言、そしてこの度の騒動の主犯ですが。」


「国の名を貶める?至らないお前達が悪いのよっ!」


「認めるんですね?」


「……認めればいいんでしょ。だから早くしなさい。」


「……勝った。皆様、この言葉の承認になっていただけますか?」


とても良い笑顔をされたメメナリス様にその場の全員が頷きます。この言葉の重さをシリルマリン殿下は分かっておられないのでしょうか…。


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