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協力は必要なことですわ


新しい学年になって五日経ちました。

ランディス殿下は例のお二人から上手く逃げられているようですが、落ち着いてフランシスと話す時間が無くフランシスの苛立ちが見て取れます。


しかし、私達もただ見守っていた訳ではありません。

フランシスは王妃様にご報告し、モルトン国に抗議の手紙を送っていただいたそうです。サウマ侯爵家からもレッドラン男爵家に警告と抗議の手紙を送ったとの事。


私はお父様にレッドラン男爵家について詳しく調べて貰い、その間にメメナリス様を秘密裏にお呼びしお話を聞きました。もちろん二人では無くハーバイン様が同席下さいましたわ。


シリルマリン殿下の置かれている状況は傍から見るととても奇妙ですもの。ハーバイン様は私よりも多くの情報を持っていらっしゃるようでメメナリス様が応えづらそうにしておりました。


それぞれの得た情報を整理します。


レッドラン男爵令嬢については昔から周囲に自分は見初められて王族の仲間入りをすると言い回っていたそうです。今回の件は独断で家族はサウマ侯爵家からの手紙で真っ青になっていたとか。

当の本人は全く気にかけておらず、気を許している令嬢に今後もランディス殿下に近づく気満々な事を告げているようですわ。


シリルマリン殿下については思っていた留学生活ではなかった事で相当苛立たれているそうで、ランディス殿下以外にも見目の目立つ方や高位貴族の子息を見つけては侍らせ、貢がせようとされているとメメナリス様は教えて下さいました。

また、祖国でも同じように見目の目立つ方々を数名侍らせておられたそうで、シリルマリン殿下が好まれる容姿を教えていただきました。


「この条件…ハーバイン様も当てはまりますわ。」


切れ長の瞳、長身、程よく鍛えられた身体、柔らかな物腰、身なりの良さ、まるでハーバイン様の事を言っているかのようです。

ランディス殿下が当てはまる項目は後の三つですわね。


メメナリス様も被害は最小限にしたいとの事でした。シリルマリン殿下のお傍に来ている方々のお名前を教えて下さる事をお約束して下さり、ハーバイン様がそれに対処して下さるそうです。


私はあまり手を広げずフランシスとランディス殿下のサポート、メメナリス様がいない場所でシリルマリン殿下が何かされた場合のストッパーをする事となりました。メメナリス様も最初から協力者が必要と考え、先の件で私をかって下さり協力者にと考えておられたそうです。


「ハルソン公爵令嬢、こちらをお渡しします。お役立て下さい。」


そう渡されたのは驚くべきものでした。


『リンデ王国滞在中に限り、この書状の正式な所有者にモルトン国第五王女シリルマリンを強制的に即謹慎させる事を許す。』


きちんと調印された正式なものです。

とても有難いですが恐ろしくもあります。流石に簡単に渡すだけとはいかず正式な所有者の印としてメメナリス様がお持ちの受取り書にサインをしました。


この事は私達三人の秘密。もちろんシリルマリン殿下もご存知ないそうです。





昼食の時間の少し前、厄介な方々が動く前にランディス殿下、フランシスと避難所に避難しました。

少しでも二人で寛いでいただこうと二人にはそのまま部屋で過ごしていただき、私は部屋を出てナターリアをさがします。しかし、ナターリアはバンレル様と昼食の約束があるそうで、結局一人で昼食をとる事にしました。


入学以来踏み込むのは初めての食堂に少しだけ胸を高鳴らせながら廊下を歩いていると、大きな声が聞こえそっと近づいて当事者を確認し、自然とため息が出ました。


「男爵令嬢ごときが何様のつもりよっ!」


「お、王女様酷いです。私は何もしていないのに急に叩くなんて…。」


「自覚が無いならば何度でも分からせてあげるわっ!!」


「私の可愛さに嫉妬しても私みたいに可愛いくはなれないのに何で分かってくれないんですか?」


「黙りなさい!一言もそんな事言ってないわ。私の下僕に色目を使うなと言ったのよ。」


「つかってませんよ~。私はランディス殿下一筋目ですもん。」


「なんですって?!ランディス殿下は私のものなのよ!」


関わらずに静かに立ち去りたいと思います。大丈夫です。女騎士様も近くに控えてますし、メメナリス様もいらっしゃいますもの。大事には至らないはずです。そっと……そぉっと……。


「あっ!ハルソン公爵令嬢様っ!ご、ご機嫌麗しゅう!!」


「……騎士様、ごきげんよう。賑やかそうですわね。お邪魔してはいけませんので私はこれで……。」


「ハルソン公爵令嬢、そのように急がれなくとも良いではありませんか。(もちろん逃げずに協力してくれますよね?)」


「メメナリス様…少し圧が…あ、いえ、そうですわね。まずはお二方のお声が枯れてしまわれる前に三人で止めましょう。そう三人力を合わせて。騎士様はシリルマリン殿下を、私はレッドラン男爵令嬢を少し引き離しましょう。メメナリス様はシリルマリン殿下を宥めてください。」


昼食はやはり避難所で取るべきでした。今後も食堂とは距離が出来てしまいそうですわ。




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