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平和を乱す方々


本日から二年生。そして留学して来られたシリルマリン殿下の初登校日でもあります。


「何事も無ければ良いですが…。」


馬車の中で少し不安な気持ちになりながら学園に着くと門が騒がしく馬車から顔を出しました。すると、揉めていた人物を見て慌てて馬車を降ります。


「ごきげんよう。皆様このような場所でどうされたのですか?」


「だれ、貴女。ん?貴女の馬車……いいわね。」


「はい?どういう事でございましょうか。」


「ご令嬢、私は王女殿下と共に(お目付け役として)参りましたバルドラ・メメナリスと申します。王女殿下がご迷惑をおかけし申し訳ございません。」


「元はと言えば貴方がこんなみすぼらしい馬車しか用意出来なかった事が原因よっ!だからあの馬車を私が使ってあげるって話をしたのに。でも貴女はもう良いわ。」


「…つまり貴女様はご自身の馬車のグレードに不満が有り他の家の馬車を乗っ取ろうとされたと……。」


「その通りにございます。」


「貴国ではその様な事が常識で?」


「その様な事実はございません。王女殿下はモルトン国国王より留学中は中級貴族の暮らしをさせよと言われております。王女殿下はそれがご不満でこのような痴態を晒してしまいましたが、この国の皆様にご迷惑はおかけ出来ませんのでどうぞ耳を傾けられませんよう……。」


「では、今回も取り合わなくて良いという事でしょうか。」


「はい。」


「何ですって!この私を蔑ろにするなんて許されるはずがないわっ!きゃっ。」


私を叩こうと振り上げられたシリルマリン殿下の腕は近くに控えていらした女騎士様に捕まれました。力が強かったのかシリルマリン殿下は少し痛そうな表情をされています。


「無礼者っ!何をするのっ!!貴女は私の護衛でしょ!!!」


「無礼者?それは此方のセリフです。私は貴女様が他の方を害さないように陛下より遣わされた身です。勘違いしないで下さい。そして、我が国の至宝、ハルソン公爵令嬢様を害そうとされた。身分の無い方でしたら切り刻んでいます。」


「騎士様、お護りいただきありがとうございます。」


「ふぁ、ふぁいっ!こ、これが私の職務ですのでっ!!」


見た目はとても可愛らしいのにとても頼もしい方ですわ。


「王女殿下、まだ学園に入りもしておりません。このように問題ばかり起こされては直ぐに留学は終わってしまいますよ。」


「ぐっ。わ、分かったわよっ!」


シリルマリン殿下は腕を振り払うと校舎へと歩いて行かれました。バルドラ様は私達に一礼するとすぐ後を追い、残された私達も校舎に向かいます。

今起きた事は早めに周知させなくては被害者が出てしまいそうですわ。学長のところに寄ってご相談してから教室に行きましょう。





「お話は分かりました。教室陣に早速通達し、各クラスにも通達しておいてもらいましょう。登校初日の朝一番にそれでは今後も色々…。」


「マルクレール様が在籍されてない事を救いと思う他ありませんわ。幸い共にいらしたメメナリス様が止めて下さるようですのできっと大丈夫です。」


学長とお話をして初日なのでSクラスへ行くとフランシスが浮かない顔をして座っていました。隣りに座るナターリアに事情を聞くとフランシスもシリルマリン殿下と一悶着あったそうです。……まだ朝ですのに。


「フランシスは今日、ランディス殿下と一緒に登校したんです。校舎の廊下でランディス殿下と談笑していたところ、フランシスが留学生の王女殿下に後ろからぶつかられて、自分の前を妨げるなんて不敬だって騒ぎ始めて…ランディス殿下が治めたそうなんですが……。」


「ランディス殿下のお顔を凝視し、一目惚れしたから自分のものになれと。言い寄りましたの。もちろんランディス殿下は婚約者がいるからとお断りしておりました。ですが、無理やり腕を組み始め遠慮することは無いと頬に口付けなさろうとしたので…私、扇を差し込み阻止したのです。

その後、シリルマリン殿下と共に留学して来られたメメナリス様が諭して下さったのですが、諦めた様子も無く…。」


開いた口が塞がりません。

他国に来て婚約者の居る方、しかも王族にその様な申し出をするなんて……。


「更にその後、レッドラン男爵家のご令嬢がランディス殿下にぶつかってきてベタベタと触りながら……。」


「…フランシス、ランディス殿下はSクラスでしたね。明日からはお独りでの行動を控えて頂きましょう。避難所にもご案内して…シリルマリン殿下はCクラスですので授業の予定を調べれば出来るだけ会わないようにする事はできるでしょう。レッドラン男爵令嬢については情報が少なすぎます。まずは情報集めですわ。」


他国の王族だろうと勝手はさせません。自国の男爵令嬢など以ての外です。


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