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行いは己に返るとの事


(コンコンコン)


「ハーバイン兄様!」


「ランディス、来てくれてありがとう。」


「兄様の呼び出しに応じない訳がありません。ご婚約おめでとうございます。」


「ランディスもおめでとう。」


「正式発表はこの件が終わった後ですけどね。」


城の一室に秘密裏に落ち合ったハーバインと第二王子ランディスは挨拶程度にに歓談後するとそれぞれ手に持った書簡を手渡した。

互いにそれを受け取り内容を確認すると良く似た爽やかな笑みを浮かべ、またそれを元に戻す。


「流石、有能だね。この国の未来も明るそうで何よりだ。」


「兄様に褒められて光栄です。でもこの書簡を持って来れる兄様の方が凄いですよ。一体どんなコネがあるんですか?兄様が味方で良かったです。」


「それはお互い様だろう。さて、先に仕掛けて来ようかな。」


「行ってらっしゃい。僕も後で…。」


ハーバインは部屋を出ると宰相の執務室に向かった。







「くそっ!イライラする。」


マルクレールは自室でストレスのはけ口に枕を殴りつける。

ここ最近、何処に行くにも口煩い付き添いがいる状態な上、マナーや座学、剣術を長時間厳しく教えられストレスばかりが溜まっていた。母との憩いの時間も無く、今まではけ口にしていたリリエールは他の候補者と共に婚約者候補から外れ接触を禁止されている。

今のところ良いストレス発散の方法は見つかっていない。


「くそっ!なんでっ!こんな目に遭わなくてはいけないっ!」


殴られ続ける枕はついに破れ、辺りには白い羽毛が舞う。


(コンコンコン)


タイミング悪くノックされた扉からは侍女と思われる女性の声で挨拶が聞こえ、マルクレールは目を釣りあげて乱暴に扉を開けた。


「ヒッ…で、殿下。宰相閣下がお呼びでございます。」


舌打ちをして侍女を睨みつけるマルクレールに侍女は怯え、小刻みに震えている。その様子がマルクレールの琴線に触れたのが侍女の運の尽きだった。

ニタリと笑ったマルクレールが侍女には悪魔のようで青ざめながら俯く。


「お前、この後に仕事は?」


「あ、ち…調理場へ…」


「大した用じゃないな。部屋が汚れたんだ。掃除させてやるから中に入れ。」


「あ、あの…」


「ほら、早く入れよ。早くしないと宰相を待たせるだろ。」


「か、係の者を呼んで参ります…」


「お前がやれ。」


手首を掴まれた侍女はその力の強さに眉間に皺を寄せ恐怖も相まって瞳に涙が溜まる。その侍女の様子にマルクレールは先程まで感じていた怒りの代わりに加虐心で胸をいっぱいにさせた。


マルクレールが強く腕を引き、侍女は力に抗えず片足が一歩部屋に入ったその時、侍女の手首を掴むマルクレールの腕は強い力でひねり揚げられた。


「ぐわっ。」


「お待たせしました殿下。自室でお待ちいただきありがとうございます。」


「お、お前っ!」


怒りの形相でハーバインを睨みつけるマルクレールにハーバインは爽やかな笑顔を向ける。絶望の中で颯爽と現れた救いの騎士に侍女の顔には血の気が戻る。


解放された手首は少し赤みを帯びていたが怪我は無い。ようでハーバインは内心ホッとする。勢い良くハーバインから腕を引き抜き抜いたマルクレールはその手を握り扉に叩きつけた。

その音にビクリと肩を震わせた侍女にそっとこの場を離れるように言う。


「さぁ、殿下参りましょうか。」


舌打ちをしながらもマルクレールはハーバインと共に宰相の元へと向かった。


宰相の部屋に入ると、そこには第二王子のランディスも居りマルクレールは訝しみながらもソファにドカりと座った。


「何の用だ。」


「殿下、まだマナーの勉強が足らないようですな。残念な事です…。」


「そんな事を言う為に呼び出したのかっ!」


「それくらいの話だったらどんなに良かったか…。」


宰相はローテーブルの新聞を置きながら溜息をついた。

その新聞に目をやったマルクレールはガバリと新聞を両手で握りかじりついた。


「な、何だコレはっ!!」


「ご覧の通り、マルクレール殿下。貴方様のゴシップ記事です。

一面は殿下のギャンブルについての記事、二面に女性への悪態の数々、三面に行き過ぎた側妃様への愛、四面に今までの失態の数々。これが、本日国民にばらまかれました。」


「この記事を書いたヤツを直ぐに処刑しろーっ!」


「それは無理です。市民の間で真実ばかり掲載すると評判ですが、誰が配っているのかも拠点も分かりません。つまり、不敬罪も適用できません。我々に出来るのは調査しその結果を公表するのみ。殿下、この記事に書かれた事はどの程度本当の事でしょうか。」


流石のマルクレールにもこの記事の内容を認めるのは不味いと分かる。だが全てデタラメなどと言って信じて貰えるとは思えない。もう一度記事に目を通しながらダメージの少ない回答を考える。


「兄上、一面、二面、四面に関しては証拠や証言が出てますから兄上が否定できる可能性があるのは三面の行き過ぎた側妃様への愛のみですよ。」


「なんだと?!」


「実はこの記事、少し前に送り主不明で届いてたんです。証拠や証言付きだから裏をとるだけでとても簡単でした。

借金なんてつくって身バレしないはずないでしょ?他も人がたくさん居る場所でやらかしてたり、もう少し考えて欲しいですよ。どう公表するかは先程方針も決まりましたし、あと決まって無いのは兄上がどういう態度をみせるかだけです。」


完全に詰んでいる事がハッキリしマルクレールは手にしていた記事を破り叫んだ。これがまだ始まりの合図な事はまだ知らない。

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