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一番強いのは


甥と甥の義父(予定)に挟まれたリンデ王国王は目の前の問題から逃げるようにそっと目を閉じた。

扇を閉じる音のみで五月蝿い大臣らを黙らせる王妃をこの場に呼んでいなかった事が王の失策だったのは間違いがない。


「公爵。いえ、お義父さん。これはリリエール嬢を護る為に必要な事なのです。」


「まだ早いっ!リリエールを護るならば領地に下がらせれば良いだけだ。娘を貴殿の家に預ける必要は無い。」


「あの二人は我が家には絶対に来ません!それに学園はどうするのですか。長期戦になればそれだけリリエール嬢の私と友人と過ごす時間が失われるのですよ!!」


「このような些事を時間をかけねば解決出来ないなどとは、貴殿にはまだ結婚は早いようだ。」


「速攻で方を付けます。しかし安全を考えるならやはりリリエール嬢には我が家に来てもらうべきです。」


「くどいっ!」


この二人を呼んだのは頭を悩ませている側妃と第一王子の関係者で一枚噛ませる為だった。しかし、挨拶をするなり甥が直ぐに公爵の娘を預からせてくれと口にし、そのままこの現状、王は楽にと言った後は一言も発していない。


そろそろ窘めなければならないが、今言い合っている事も後に決めなくてはならない。


(コンコンコン)


扉がノックされ入室許可を求めてきたのは王が呼ばなかった事を後悔していた人物だった。目を開きその姿をみれば王妃は妖艶に微笑んだ。


「お話中に失礼致します。直ぐに終わりますからそのままで。」


「何用だ。」


「陛下、問題行動の目立つ側妃とマルクレールの件、私に任せてくれないかしら。愚かにも私欲で動く甥と慎重派な公爵に任せるつもりならば、私の話も聞いてくださいませんこと?」


王妃の刺すような視線にビクリと肩を跳ねさせた二人は顔色が悪い。

しかしやっと有意義な話が出来そうで内心安堵した王は王妃を着席させた。


話を終え解散した時、笑みを浮かべていたのは王妃。暗い顔をした甥に哀れむような視線を一瞬送り、王は部屋を後にした。





「伯母上に負けた……。」


家に戻り自室の机に突っ伏しハーバインはいじけた。リリエールを家で保護し甘く楽しい一時を夢見ていたが王妃にかっ攫われ一瞬でその夢は潰えたのだ。


(コンコンコン)


「……はい。」


「失礼致します。」


銀色の頭と髭を綺麗に整えた執事は部屋に入ると机にベッタリと身を寄せる部屋の主の様子に一瞬躊躇いながらも声をかけた。


「坊っちゃま、お客様の為のお部屋は整えておりますが、いつお越しでしょうか。」


「……来ない。」


「……。」


「…叔母上が出てきた。」


「……それはそれは。坊っちゃまなど一捻りでございますね。」


「ああああああ~もうっ!あんなん反則だっ!!せっかくリリエールとイチャつけると思ったのに、叔母上はなんで空気を読んでくれないんだっ!」


「ハルソン公爵令嬢、リリエール様にはとても目をかけておられるそうでございます。」


「知ってた…。だけど、だけど……。」


「また別の機会にお招きすれば良いではありませんか。」


盛大に拗ねる部屋の主に内心ため息をつきつつも執事は顔には出さない。

どうせ近々別の方法で、ようやく手にした婚約者との逢瀬の時間をつくりご機嫌になる事はわかっているのでこの場で過剰に慰める必要もない。


確認は出来たので執事は挨拶し退室すると、必要な使用人達に予定の変更を告げていく。その際、急な来客があっても対応出来るようにもするのを忘れない?


「あのお方にも困った者です。」


きっと伝えてはいないだけで拗ねる坊っちゃまの為に時間は用意されていると確信している執事は今度は屋敷の主が居る執務室へ向かった。

二日後、執事の読みは当たりバタバタを準備をする事はなく客人を迎えた執事はいつも通りの完璧な顔で頭を下げた。


「ようこそおいで下さいました。」


「…先触れがきちんと仕事をしたみたいね。」


「恐れ入ります。出迎えが私のような者で申し訳ございません。主は一刻程で戻ります故、それまで中でお寛ぎ下さい。」


「……妖執事が健在のようで嬉しいわ。」


「そのようなお言葉を頂けるとは大変、光栄に存じます。」


「そろそろ次代にお任せしては?」


「いえいえ、まだ第一線で支えさせて頂きたいと思っております。しかし、次代の成長の妨げにならぬようきちんと引き際を考えたいとも思っておりますので、難しいものにございます。目の上のたんこぶ等と言われては悲しゅうございます。」


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