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13話

 

『ごめんね。ちゃんと食べた?』



 瑠璃のメッセージを見て我に返る。返ったところで、瑠璃を裏切った事実は変わらない。浮気の線引きも人によって様々だろう。“浮ついた気持ち”と書いて“浮気”と読む。街ですれ違った綺麗な女性を抱きたいと思う事は、気持ちが浮ついているから文字の意味通りなら、浮気をした事になる。例えば、少しいいなと思っている異性と夕飯を食べに行くのも浮気だろう。拓哉がユリにした事はこれら全てを吹っ飛ばし、新たなフェーズに入ってしまっている。問答無用の“裏切り”である。



「彼女?」


「……うん」


「何て?」



 そう問いかけてくるユリにどう答えていいか分からない。短いメッセージだが、瑠璃の優しさを十分感じとれるものだ。強烈な罪悪感が拓哉を包む。そして、このままユリを抱いてしまうと全てが終わってしまうという危機感。相変わらず保身のみで、瑠璃やユリの事を結果的に馬鹿にしている。だがその事に瞬時に気付けただけでも成長したと言えるが、瑠璃とユリは拓哉の母親ではない。『良くできました』とノートに桜の花びらスタンプを押してくれる訳もない。拓哉は、ほんの数分前に起こした過ちについてどう取り繕っていいか分からなかった。



「困った顔してる」


 ユリは拓哉の頬を抓る。言葉にならない。誰のおかげで今があるのか──。誰のおかげで人並みの生活を送れているのか───。頭では分かっていた。分かり過ぎるほどだった。だが、その全て無効化されるほど、女性として、人としてユリは魅力に溢れている。そして、それは何の言い訳にもならない。



「実は……」



 全てを打ち明けたかった。何もかもを話して楽になりたかった。甘い考えかもしれないが、『それでもいいわ』と言ってくれそうな気がして──。



「実は何? 言いにくい事?」


 拓哉は頷く。言いにくいというレベルではない。



「分かるよ。私もどうしても言えない事があるもの」


「…こっちは言えないけど、教えて欲しいです」


 ユリはまた拓哉の頬を抓る。


「ずるいよね。でも、何か受け入れてくれそうな気がする」


「母親が違うって言ってた事?」


「あれは私の妄想。お金払って最近調べたら、ほぼ100パーセント親子関係だったから」


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