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9話

 

 上田カイリとの関係についてユリは詳しく聞いてこない。わざわざアリバイを証明する為に来てくれて、刑事にも説明してくれた。しつこく聴取する刑事にも一喝を入れてくれた。話さない方が違和感があるし、人としていかがなものかと考える。


「実は、あまり人には言えない関係でして」


「亡くなった方と?」


 ユリはそう言うと、ビールを一気に飲み干した。



「それは具体的にどういう関係?」


「……所謂セフレというやつでして」



 ユリは少し驚いた様子だったが、二本目のビールを開けてゴクリと喉を鳴らしながら飲んでいた。



「それで、警察が来るという流れですか……」


「そうです」


「彼女は知っているんですか?」


「はい。全て話して関係を終わりにしました。瑠璃とはそれから付き合うようになりまして」



 ユリは二本目のビールも飲み干す。



「良かったです。自分の人を見る目を疑うところでした」


「すいません」


「謝る事はないです。悪い事ではないじゃないですか。彼女と付き合う前の話しでしょ?」


「はい。でも、耳障りの良い話しではないから」


「それは否定はしませんが。しかし、桐敷さんはモテますね。彼女も心配だろうと思いますよ」


 ユリは三本目のビールに手を伸ばしていた。昔、ホストであった事もついでに話しておきたくなった。例の事件については口が裂けても言えないが、出来るだけ色んな事を知って欲しかった。



「実は、若い頃ホストをしていました。今の社長とはその頃から可愛がって頂いてまして」



 ユリはビールを吐き出す。慌てて、ハンドタオルをユリに渡した。



「ホッ、ホスト? ホストって、あの女の敵の?」


「いや、二階堂さん、そう言われる方もいらっしゃるけど、そうでもないですよ」


「そう言えば、どことなくホストっぽい色気が漂っています。気をつけないと」


 ユリは目を細めて睨んでいる。そんなに警戒されるような事なのか──だが、その事で若い命を奪った事実は消えない。ホストでなければ、そもそも彼女と知り合ってもいなかった。結果、彼女は死なずに済んだ。全てはホストであった事が招いた事だ。刑務所に入る事もなければ、話しを聞いて欲しい相手に肝心な事を告白できないのも全て──。




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