7話
「可愛いお鍋ですね。フタに梅の花の模様がいいです」
「そうですか? 意識したことがないです」
「2人で丁度いい感じの小型サイズですね。どこのお店で購入されたんですか?」
拓哉は鍋の中にあらかじめ薄い昆布を入れて水を張っていた。丁度いい塩梅に昆布が膨れ上がっていて、金色の出汁に変わっていた。
「豆腐って先に入れるんですかね?」
「無視ですか? 桐敷さん話し聞いてない」
「何の話しですか?」
拓哉は黄緑色のまな板に豆腐をのせたまま、どうしていいか分からなかった。一人で鍋をしていたなら、そのまま全て豆腐を鍋の中に放り込んでいただろう。
「このお鍋どこで買ったんですか?」
ありふれた量産品の土鍋だ。リサイクルショップ350円で買ったと言ったほうがいいのか分からない。
「豆腐、全部入れていいですか?」
「いや、駄目でしょ。普通に」
拓哉は、白いワンプレートに豆腐を移し替える。豆腐を入れるめぼしい器がない。ユリはそういった事にとてもこだわっていそうだ。
「すいません。これしかなくて」
「いいですよ。本当はよくないけど。ていうか、このお鍋はどこで買ったんですか?」
「リサイクルショップで350円」
「安いっ! 私も欲しい! 今度連れて行ってください」
ユリが目を輝かせて言う。リサイクルショップに行った事がないような感じだ。
「まさかと思うんですが、リサイクルショップご存知でない?」
「リサイタルショップ?」
「いや、いいです。今度行きましょう」
ユリはテキパキと蟹を鍋に入れて、鍋蓋を置く。この間、アリバイを証明してくれた時とは全く違うと言っていいぐらい雰囲気が違う。いつ見てもとても綺麗だが、今日は格段に美人だ。拓哉はホストだった頃の習性で、思わず口にしてしまう。
「二階堂さん、今日もとてもお綺麗ですね」
「彼女いる人に言われても微妙ですね。ほんと微妙」
ユリの言う通りではあるが、顔を見ているとまんざらでもなさそうだ。拓哉はユリに渡す前に缶ビールを開けた。
「どうぞ」
「ありがとうございます。乾杯しましょう」




