4話
そんな事を考えていると、この髪型でいるこが急に恥ずかしくなった。瑠璃からの指示で坊主にしているとは口が裂けても言えない。確かに、得意先やちょっとした買い物等でよく女性からの視線を感じていたが、最近はめっきり減ったと感じる。それは、毬栗頭にしてからだと勝手に思っている。正確には毬栗よりも短い。坊主というには長いといった中途半端な丸刈りだ。拓哉はダッシュボードから黒のキャップを取り出して被る。熱中症対策として得意先の倉庫番からもらった割とオシャレな感じのベースキャップだ。深々と被ってルームミラーを見る。心なしか若く見えるのは、気のせいか、希望的観測からくるものか──。
会社に着き、タイムカードを押す。事務所には瑠璃はいない。グアンは鹿児島で、明日の昼過ぎまで帰って来ない。
「お疲れ様。今日も大変だったな」
「お疲れ様です。もう慣れましたよ」
社長の敏生が買ったばかりのデスクトップと睨めっこをしていた。
「しかし、分からない。瑠璃とか高速で使いこなすじゃん?」
「そうですね。若者ですから。我々の頃にはそんな普及してませんでしたし」
「そうだよな。ガラケーぐらいだろ? メールとか」
拓哉も全くパソコンは使えない。普及し始めた頃はまだ刑務所に入る前だったが、昔のカラーテレビのように一家に一台、或いは二台、家庭にある時代になった時は刑期のど真ん中であった。
「そうだ。これ渡しておくよ」
敏生は灰色のブルゾンのポケットから封筒を取り出した。
「何ですか?」
「少ないけど取っておけ。餅代だ」
「あっ、ありがとうございます」
「グアンにも渡したよ。あいつ、泣いてた」
「そりゃ泣きますよ。今泣きそうですもん」
「いや、そんな期待するなよ。マジで少ないから」
「明日からまた頑張ります」
「頼むな。地味に得意先も増やしていけよ。あの美人社長経由で」
「はい。やってみます」
「とりあえず、戸締りしておくから早く帰れよ」
拓哉はロッカーに入ってある洗濯しないといけないトレーナーを持ってアパートに向かう。彼女が来る前にある程度掃除をしないといけないし、鍋の準備もそこそこしておかないといけない。




