3話
この間、ユリが自宅に来た事は瑠璃に話した。その夜について瑠璃に聞かれたからというのもあるが、警察も絡んでいるし、嘘をついた事が何処かでバレるかもしれないと思ったからだ。警察が絡んでいなければ、嘘をついていたかもしれない。聞かれなければ、自ら言う事も当然なかっただろう。
『鍋にしようと思ってる』
ガソリンスタンドで給油中に返信した。ガソリンメーターにはまだ半分以上入っていたが、明日も遠出だし満タンにしておきたかった。
『ごめんね、一人で鍋とか寂しいよね。今日はお父さんの友達も来るから夕飯の準備大変で』
瑠璃はいつも気にかけてくれている。よく気がきくし、彼女に一切の不満などない。一緒にいると、16歳である事など全く意識しないが、紛れもなく16歳である。犯罪歴のあるアラフォーの男を真剣に思ってくれている。だが、どうしてもユリのことがチラついて離れないのだ。悪い事だと分かっている。分かっているのにそれを実行する事は、悪気がないより残酷な事ではないか──どれだけ自問自答しようが、ユリに会いたい気持ちを抑える事が出来ない。
『ありがとう。家事頑張ってな』
拓哉はトラックに乗り込み、会社に向かう。車内の時計を見る。そうゆっくりもしていられない時間になっていた。こんな時、煙草に火を付けて気持ちを落ち着かせたいが、刑務所に入っていた期間吸っていない。元々ヘビースモーカーではないし、ホスト時代からスーツや髪の毛に煙草の臭いが着くのが嫌で営業中は吸っていなかった。何故かその事が女性から受けが良かった。煙草を吸う仕草等も研修で教わったぐらい必須だと思っていたが、大半の女性から煙草を吸わない事を褒められた。清潔感こそがホストにとって最も重要な項目である。だが、今はしがないトラックの運転手。何もかもが変わってしまったが、これはこれで自分に向いていると思っていた。拓哉は、ルームミラーで己の姿を見る。見事なまでの毬栗頭、薄く伸びた顎鬚、全く整えていない眉毛、目の下も少しくすんできていて年齢を感じさせている。拓哉は毬栗頭を右手で撫でる。そう言えば、ユリと初めて静岡であった時はまだ普通の髪型だったが、この間家に来た時は既にこの髪型だった。それに関して一切何も言われなかった。目線で気づいたりするが、ユリが毬栗頭を見たと感じた事は一度もなかった。




