12話
「すいません、二階堂さんはおいくつでいらっしゃいますか?」
「女性に年齢を聞くなんて。って嘘です。今年31になります」
とても30代には見えない。多く見積もっても26、7といったところか──。
「全く見えませんよ。二階堂さん。逆に尊敬します」
「桐敷さんはおいくつですか?」
色々と調査済みだと思っていた。だが、調査されているならあの事件に行き着いているはずだ。全部分かっていて、それでも仕事を依頼したとは考えにくい。
「35歳です。アラフォーですね。今風に言うなら」
ユリは笑っていた。笑わそうとは思っていない。
「桐敷さん、面白い。アラフォーには見えないですよ。同い年か少し下に見えます」
ユリと話していると、何てことない会話なのに何処か懐かしく、宙に浮いているような不思議な感覚だ。ずっとこのまま何て事ない会話をしていたいと思ってしまった。いつも頭の片隅にいた瑠璃をそっちのけで──。
「妹は私の事を凄く好きで……」
突然ユリの表情が曇る。幸せな時間を過ごす権利はお前にはないだろうと言われたかのように。急に闇が襲う気持ちはよく分かっていた。
「妹さん……今はどちらに?」
「……死にましたよ」
拓哉は絶句する。聞いてはいけない事だった。だが、会話の流れ上、不自然ではない。ただ、聞いてはいけなかったと同時に、事件の夜の事がまた頭を擡げる。
「ごめんなさい。まさか、亡くなっていたとは知らずに」
「いえいえ、そんな謝らないで下さい。家族で最後に話しをしたのは私なんです」
「そうなんですか……。何か言われたんですか」
『私は凄く好きな人と一緒に死ぬのよ。お姉ちゃん、羨ましいでしょ?』
そう言われたと語るユリの瞳から涙がこぼれ落ちた。理解は出来なかった。一緒に生きていく──つまり、結婚や同棲なら話しとしては成り立つ。だが、聞いた内容だと、無理心中を図るとしかとらえられない。
「では、自殺という事?」
「相手の方は生きてると聞きました。それからが本当の地獄でした」
妹の死で、ユリは妹の代わりになる事を強要された。何一つ勝てなかった妹になれと言われた。ユリとしての人格、存在意義は一切無視され、一日でも早く完璧であった妹になれと──。




