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9話

 

 彼女は意外にも顔を赤らめて照れていた。そういった類の言葉は何度も掛けられてきたはずだ。だが、彼女は俯いて髪の毛を何度もかき上げる仕草見せていた。



「いや、すいません。いきなり変な事言ってしまって」


「めっ、面と向かって言われたの初めてでドキドキしています」


「まさか、それは有り得ないですよ」


「そんな事ないです。誰かに直接言われた事はないです。桐敷さんが初めてですよっ!」



 彼女の表情や語尾の強さに信憑性を感じた。確かに、このレベルの女性に声を掛けたり、口説ける男は余程の馬鹿か、それ相応のスペックの持ち主以外考えられない。後者はとてもプライドが高く、勝算が見込めない戦いはしないものだ。そもそも、そこまで努力する必要もない。つまり、飢えていないからだ。そう考えると、彼女は所謂、綺麗過ぎて敬遠されてしまい、出会いが極端に少ない人種だと言える。



「綺麗過ぎてチャレンジ出来ないんですよ。鼻で笑われそうだし」


「私、そんな風に見えます? 少しショックです」


「いやいや、二階堂さんの事をあまり知らないので、第一印象的にはという意味で」


「だからモテないのかな。本当にモテません。友達もいないし」



 友達すらいないという彼女に少し親近感が湧いた。拓哉自身も友達と呼べる人は幼少の頃からいない。


「小さい時から一人でした。気づいたら施設にいました」


「本当ですか。預けられたという事ですか?」


「いや、捨てられたかと。それ以来、母親とは会ってませんし」


「桐敷さん、ご苦労されているんですね」


「色々ありましたよ。本当に色々と」


「ご兄弟は?」


「知らないですね。いないと思いますよ。父親も見た事ないですし」


「……可哀想です」


「いやいや、すいません。暗い話しで。二階堂さんのような方とは住む世界が違いすぎますね」


「……私は、誰からも愛されない邪魔者ですよ。両親も妹ばかり可愛がってました」


 明るい彼女の表情が一瞬にして曇る。彼女が抱えている闇の深さがどれほどのものかは理解出来ないが、明らかに輝きが失せていったように見える。


「何でも話してください。話しぐらいしか聞けないけど」


「……」



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