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8話

 

「いえいえ、お支払いします。こちらまで来て頂いて、アリバイまで証明していただいたのですから」


「アリバイは桐敷さんのタコグラフ? が、決め手じゃないですか?」



 二階堂ユリが会社に来た事は証明されるが、同じ時刻に一緒にいた事を証明するには確かに弱い。タコグラフの事も、直ぐに気づいていれば、手を煩わせる事もなかったはずだ。



「すいません。ドライブレコーダーというワードを出されるまで、気づかなかったんです」


「トラックにも付いているんですよね? 義務化されてるんですか?」


「いや、よく分からなくて。ドライブレコーダーなるものも最近知ったぐらいですから」


「そうなんですね。宅配サービスとかもあまり使用されないみたいだし」



 刑務所に入る前からあったもの──例えばピザの宅配などは昔からあったし、よく注文していた。ドライブレコーダーは、出所後に知った。世の中の移り変わりにまだ完全に順応しているとは言えない。



「桐敷さん、一昔前からタイムスリップして来たみたいですね」



 そう言って彼女は笑う。笑顔で目尻が下がる表情がとても魅力的で、ずっと見つめていたいほどだ。確かに、タイムスリップして来たと言っても過言ではない。実際、12年も俗世間から逸脱した場所に身を置いていたのだから──。



「そうそう、話し変わりますけど、事務所にあった刀? あれ、凄いですね」


「社長の家宝ですかね。思い出深い逸品です」


「そうなんですね。本物ですか?」


「当時のエースはそう言ってましたね」


「エース?」


 思わず業界用語が飛び出してしまう。彼女は不思議そうにこちらを見つめている。


「正直に言いますと、社長と一緒にホストクラブで働いていたんですよ」


「そっ、そうなんですか! 桐敷さんは何となく分かりますが……」


「社長にスカウトされて。昔の話しですが」


「桐敷さん、No.1でした?」


「まさか……。そうなりたいと努力はしていました」


「もっと聞かせてください。当時の事」


 そう言われて、生唾を飲み込む。話せる事がほとんどないし、何かの拍子に例の事件がバレるかもしれない。無理矢理にでも会話を変えないといけない。


「二階堂さん、とてもお綺麗ですよね。普通じゃないですよ。オーラが」

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