6話
瑠璃に電話をする──メッセージでは気が収まらないのだろう。予想通りの展開で驚きはしない。
「瑠璃、お疲れ様」
「最後、ほんと疲れた」
「何にそんな疲れんだよ」
「あの女よ。わざわざ来る?」
瑠璃が嫉妬深いのは承知の上だ。そういうところも愛していた。ホスト時代、ただの顧客にすぎないのに変なやきもちを焼かれて、行動を制限してほしいと言われた事があった。心の奥底からうざったい気持ちだった事を思い出す。今じゃ、20も歳下の彼女に行動の制限どころか、髪型はほとんど坊主にしろと言われ、リサイクルショップで100円でも買わないような時代遅れの地味な色の地味な服しか与えてもらえない。あの頃とは正反対ではあるが、とても心地が良かった。
「あれじゃない? 荷物とか本当にめちゃくちゃに扱われてたんじゃない?」
「それは知らない。でも、何でわざわざうちなの? 他所でいいじゃない」
「だから、パンク修理をしたから誠実と思ったんでしょ」
「じゃあ、パンク修理する拓哉が悪いわね。このモヤモヤは拓哉のせいだね」
瑠璃は時々筋の通らない話しをする。
「じゃあさ、あのまま見捨てて素通りするような男がいいの?」
「……最悪それでもいい。私にだけ優しければ」
「そんな都合良くは無理だよ。仕事が増えて会社的には良かったじゃない」
スマホの向こうで、何かを炒めている音が聞こえる。おそらく、夕飯の準備をしながら電話をしているのだろう。
「瑠璃、何作ってんの?」
「野菜炒めと唐揚げ」
「瑠璃の唐揚げ最高だもんね。食べたいな」
「作り過ぎたから持って行こうか?」
「いや、いいよ。今日は昨日買ったコロッケがあるから」
瑠璃の唐揚げを食べたかったが断る。余計な用事を増やしたくないからだ。フルタイムで働いて、家事も全てこなしている。いくら若いとはいえ、大変な日々を過ごしている瑠璃に唐揚げを持って来いとは言えない。
「遠慮しないで」
「いや、瑠璃に余計な体力を使わせたくないだけだよ」
「全然平気。拓哉はいつも美味しいって食べてくれるから」
「ほんとに美味しいから」
「遠慮しないでね。それより、他の女の事を考えるのが一番疲れる」
瑠璃は心底疲れ果てた声で言う──この間のセフレの件も、何の解決もしていない中での今回の問題、悪気などは一切ないが、結果的に瑠璃を疲れさせている事には違いない。
「大丈夫。瑠璃が好きだから」




